祭りへ
気絶した亞里亞を囲む二人の男性。
教皇と枢機卿だ。
「アリア、起きなさいアリア」
「気絶してしまいましたね」
亞里亞は意識を失っており、教皇の下品な刺激に反応することはなかった。
「いかがいたしますか教皇聖下?」
「まあ、よいでしょう。今日はもともとそのつもりはなかったのです。すべては……グラン・カーニバルにて」
「……聖下の御心のままに」
「皆、聞きなさい」
教皇が言った。その声は信者の前で演説をするときのように張り上げらており、この地にいる多くの女性の耳へと届いている。
「彼女はグラン・カーニバルの主役。丁重に扱いなさい」
女性たちは顔をしかめた。
彼女たちはグラン・カーニバルのことを知っている。うち何人かは今の亞里亞と同じように主役の一人を務めたこともある。何も知らぬ少女に課せられるあの苦悩は、たとえ他人事であっても不快以外のなにものでもない。
ただ、どれだけ不快に感じても……それを表に出すことはできない。
彼女たちはある種の奴隷だ。家族のため、自分のため、あるいは大切な人のために教皇へ差し出された人身御供。
感情を表に出してはならない。不愛想であってもならない。ただただ教皇の劣情を煽ることだけがすべて。そうしなければここから抜け出すことはできないのだから。
「また新しい女の人……。やだやだ教皇様! あたしだけを見て」
「教皇様は私のです!」
「教皇様ぁ~、好き……世界一愛してるぅ~」
演技も甚だしい発言。一部の女性は己の感情を隠しきることができず、苦悶の表情を浮かべている。
だがそれを教皇も気がついている。むしろその様子を見て、それを強いることができるだけの自らの権力に喜ぶ。
聖女亞里亞の悪夢は終わらない。
すべては、国を挙げての大祭典であるグラン・カーニバルに収束する。
2019/9/6 運営の警告により半分以上を削除。
レオス司祭→枢機卿へ。




