表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
刀神編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

200/410

三か国会談へ


 アスキス神聖国大使との会談は、不快感を残すだけで終わった。

 だが話ができないからといってあの国を無視することはできない。あの地を攻める刀神ゼオンは俺の仲間たちを痛めつけ、そして多くの人間を殺しているのだから。


 俺はアスキス神聖国へと向かうことにした。

 もちろんグラン・カーニバルとかいう例の祭典を見物するためではない。奴に攫われてしまった乃蒼を助け出すためだ。


 勇者の屋敷、自室にて。

 俺は旅立ちの準備をしていた。

 体は本調子ではないが、盗賊程度なら十分に返り討ちにできるレベルだ。もうこれ以上、待っている必要なんてない。


 路銀の確認をしていると、部屋に誰かが入ってきた。

 つぐみだ。


「……悪いニュースだ」

  

 悪いニュース? 乃蒼が攫われたこの状況で、これ以上何を聞いても驚きそうにないんだが……。


「咲が刀神ゼオンに攫われた」

「……っ!」

「護衛の兵士は全滅。国王であるアウグスティン八世は見逃されたが、妃である咲は捕らわれてしまったらしい」

「ま、待ってくれ! あいつらは乃蒼を連れて行ったあと、神聖国に戻ったんじゃないのか?」

「それは私たちの勝手な想像だったということだ……」


 つぐみは頭を抱えた。

 これは確かに悩みが増える問題だ。俺たちの国だけではない、世界規模の話になってくる。


「咲は剣にされていないらしい。そのまま攫われたようだ」

「…………」


 そのまま、攫われた?

 乃蒼は剣にされてしまった。それは奴が聖剣・魔剣を集めていたからだ。

 そもそも俺は、乃蒼が攫われたのはそれが原因だと思っていた。レアな剣だから、珍しいからと、収集家のような気質が働いた結果だと。

 だけど咲は剣にされなかった、そしてそれにも関わらず攫われた。後で剣にするつもりだった? それとも、はじめからそれが目的ではなかった?


 咲は国王の妃。乃蒼は俺の婚約者で、つぐみともそれなりに話をする。まさか奴は要人を捕えて、俺たちに身代金でも要求するつもりなのか?

 

「……この事態を受けて、私たちは三か国会談を開くことになった」

「三か国会談?」

「咲が攫われたことはマルクト王国側にとっても由々しき事態。共同で出兵をし、神聖国で彼女たちを助けようということだ」

「……本当に神聖国にいるんだろうな?」

「今度は間違いない。目撃情報も多かったからな」

「…………」


 最初の襲撃からそれなりに時間もたっている。多くの情報が伝達された今となっては、目撃情報を集めることはたやすいか。


「会議はグラウス共和国北西部。すなわち参加国の国境にほど近い都市で開かれる予定だ」

「神聖国は誰が来るんだ? またこの前の大使みたいなやつが来たら、話どころじゃないぞ?」

「外務大臣に相当する司祭が来る予定だ。私も何度か話をしたことがあるが、あの大使と違って話の通じる男だと理解している。国の利益を代弁する、政治家のような男という印象だ」

「…………」


 ちゃんとした政治家が来るってことか。この前のような無礼な振る舞いがないというなら、話し合いの利益はあると思う。


「匠が神聖国に行きたがっていることは知っている。しかし単身で乃蒼を探すよりも、兵士たちを引き連れていた方が効率的だ。私たちと一緒に来てくれないか?」


 情けない話だが、俺たちはゼオンに負けてしまった。

 一人では勝てなかった。乃蒼だってどこにいるか分からない。この状況で、俺だけ神聖国に突っ込んで何の価値がある? 何の意味がある?


「……行こう」


 多くの兵士が犠牲になるだろう。

 でも……それでも俺は……乃蒼を……。


「俺一人では太刀打ちできなかった。マリエルの時と同じだ。また、みんなの力を借りたい」

「匠……」


 つぐみが笑った。

 俺は追い詰められている。自暴自棄になりかけていた俺を、彼女は心配していたのかもしれない。

 その気持ちを……少しだけ心地よく思った。


「……匠君」

 

 と、明るい空気になっていたちょうどその時、部屋にエリナが入ってきた。

 エリナはゼオン襲撃当時屋敷にはいなかったから、五体満足で無事だった。しかしそのことは若干彼女の心を傷つけたらしく、今までと違ってかなり大人しくなっていた。


「この……聖剣」


 と、エリナは俺に聖剣を差し出した。


「聖剣がどうしたんだ?」

「……呼んでる」

「は?」

「……連れていけって、言ってる気がする」


 ……まさか、エリナにも聖剣の声を聞く〈同調者〉の資質が?

 と、思った俺だったがすぐに考えを改める。なんてことはない、聖剣ゲテヒティヒカイトは目に見えて震えていた。まるで何かを訴えかけるように。


「少し貸してくれ、鈴菜のところにいけば何かわかるかもしれない」

 

 俺はそう言ってエリナから剣を預かり、部屋の外に出た。


 そして俺は、一本の剣を手に取る。

 聖剣ゲミュート。

 この剣は対象の感情をコントロールすることができる。俺に備わっている剣と会話する力――〈同調者〉は感情の昂ぶりがないと発生しないからな。


 この剣、聖剣ゲレヒティヒカイトそのものである白い老人――アントニヌスを呼び起こす。

 かつてエリナの危機に現れた白い老人が、俺の目の前に現れた。


「……神聖国に行きたい、ってことでいいんだよな?」

「あの国は私の祖国なのでね……。少し思うところがある」

「そうか、なら俺からつぐみに話をしておこう」

「助かる」


 どのみち、戦力がいるのは確かだ。エリナが来てくれることは心強い。


 それにしても祖国? アントニヌス?

 うーん、どこかで聞いたことがあるようなないような。俺の気のせいだろうか?



 こうして、俺、つぐみ、エリナは三か国会談へと向かうことになった。

 目指すはアスキス神聖国。会談はそのための布石。

 良い結果に終わるといいのだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ