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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
大侵攻編

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128/410

言わないで……欲しいんだ

 グラウス共和国、とある村の空き家にて。

 俺と雫は、結ばれた。


 朝日と暖かな空気に促され、俺はゆっくりと目を覚ました。ふわふわとマシュマロが詰まっているような頭を働かせ、上半身を起こす。


 ベッド隣のドレッサー前に、乱れた髪を整える雫がいた。どうやら俺よりも早く起きていたらしく、下着どころか上着まで完全に身に着けている。

 リボンで髪を留めている最中だ。


「おはよ、雫。早いな」

「おはよう」

「……お前とこんなことになるとは、思ってなかった」

「っっっっ!」


 雫が近くにあったクッションを投げつけてきた。

 ぽふん、と柔らかい感触とともに俺の顔面にヒットする。この硬さで痛いとか怪我とかそんなことは全くないが、不意を突かれたためかなりびっくりした。


「知らない!」

「知らないって、昨日あんなに俺に抱き着いて……」

「そっ、そんなの知らない! お、お前は変な夢を見てたんだ! 忘れろ!」


 ……? 恥ずかしがってるのか? ……あんなに愛し合ったのに。

 仕方ない奴だな。


「わかったわかった。俺は変な夢を見てた。何も知らない、何も覚えてない。これでいいか?」

「あ……」


 不意に、雫が俺の肩を小突いた。


「そ、その、私たちは結ばれた。それは……その、夢じゃない」


 指をもじもじとさせながら、そんなことを言う雫。


 こいつ……かわいい奴だな。

 りんごとか一紗とか、雫のことお気に入りの人形か何かみたいに愛でてたし。俺も一緒になって雫の服を着せたり髪を結んであげたり……。なんて、ちょっと変態っぽいなそれ。


 昨日のことは話題にして欲しくないらしい。あまり具体的な発言は控えるようにしよう。


「……、と、ところで、お前に言っておきたい……、あ、いや、お願いしたいことがある」

「お願いって、なんだ雫? そんなこと言うなんて珍しいな」


 いつも命令口調なのに。


「言わないで……欲しいんだ」

「言わないでって、俺たちの関係をか? 他人に?」


 こくり、とうなづく雫。

 つまり誰にも漏らさずこの関係を続けたいと? それは……。


「前に、誤解だったけど浮気を疑われて少し騒がれたことがある。悪いけど俺は、皆に黙って……」

「そ、そんな、お前と秘密の不倫をしたいとか、そういう意味じゃない。ただ、その、他の奴らみたいにお前の屋敷に行って、挨拶とかして、一緒に暮らすのは……その……」

「…………」


 まあ、分からなくもない。

 優を好きだった一紗が俺のことを好きになった。そのあとで雫が俺と結ばれる。NTRではないけど、どう顔を合わせていいか戸惑う場面だ。『一緒の人を好きになってよかったね』とはならないだろうなきっと。


 それにこいつ、俺やりんごたち以外と話してるとこ見たことないし。きっとこのまま屋敷に連れてっても、上手く適応できない気がする。

 乃蒼はともかく、つぐみや璃々とちゃんと話ができるのだろうか?

 自分の部屋に引きこもって出てこない、なんてことになったら申し訳ない。


「わかった、一紗には言わないでおく。ただ乃蒼には話をさせてくれ。これは俺なりの……ハーレムに対する誠意なんだ」

「……それは許す」

 

 許すって、なんか上から目線だな。いやまあ、いいんだけどね。


「まあ俺さ、こうなることは予想してなかったけど、割と満足してるよ。雫さ、見た目かわいいし、悪い奴じゃないって知ってるからな。これから、よろしくな」

「おおおおお、お前が私の魅力に悩殺されるのは仕方ないことだ! か、かわいいとか当たり前なことを言うな!」

 

 ちょ、ちょっと雫さん。そんな見るからに嬉しそうにされると、俺の方も照れてしまうんだが……。

 雫は顔を真っ赤にしながら、窓の外に目線を逸らした。


「……そ、それよりお前。いつまで裸でいるつもりだ。さっさと着替えろ。あまり見苦しい姿を私に晒すな」

「昨日あんなに……」

「…………」


 雫が無言のまま、太もものホルスターから護身用のナイフを抜き取った。その目つき、気迫、そして殺気は明らかに俺を殺しに来ている。

 俺はそれ以上何も言わず、服を着ることにした。


「……結局、魔族たちは来なかったな。奴らは何しに地上に来たんだ? 人間を殺すため? 強い奴と戦うため? 地上に自分たちの土地が欲しくなったとか? これだけの大移動だ。何か命令されてるのは間違いないと思うんだけど、聞けば答えてくれるような関係でもないし。雫はどう思う?」

「それを私に聞かれても困る。とりあえず今は、一紗たちと合流することが最優先だ」


 だろうな。

 俺たちは着替え終わり、準備万端だ。本音を言うと水浴びをしたいところだが、この雰囲気でわがままは言いにくい。どうせこれから森の中走ってたら汚れるだろうし、多少の身だしなみは無視してでも進むべきか。


 椅子にたてかけてあった聖剣を握り、一歩を踏み出そうとしたちょうどその時。


 ……家畜の鳴き声が、聞こえた。


 俺たちがここにやってくるときも、家畜たちの鳴き声に出迎えられた、村人以外の異邦人には激しく反応するらしい。

 家の中にいる俺たちは除外して、新たな来訪者がやってきた……ということだ。


「……行くぞ」

 

 こくり、とうなづく雫。

 

 俺たちは窓の近くに駆け寄り、すぐさま外の様子を確認した。


「人間?」


 そこには、簡素な軍人風の鎧を身に着けた男が立っていた。俺たちと顔見知りでないのは確かだが、鎧を身に着けてるし何より一人だ。

 鎧を身に着けているからおそらくは人間。仮に奴が魔族だったとしても、一体なら対応もしやすい。


「匠様! 雫様!」


 男が名前を呼んだので、俺たちは窓から外に出た。

 あまり叫ばれて魔族が集まってきたら厄介だ。そして彼が俺たちの味方であるというのは、もう間違いないだろう。

 

 家の前に立っていた男は、俺たちの姿を確認するとすぐに駆け寄ってきた。


「グラウス共和国の軍人か?」

「はっ、第三軍所属の兵士であります。この村の出身であるため、捜索に駆り出されました」


 きりっ、と敬礼する軍人。近衛隊とは違い、かなり訓練されている空気を感じる。

 

「すでに村人、勇者様方は別の村に移動しています。比較的安全なルートを案内しますので、どうかこちらに……」

「わかった」


 一紗たちはやっぱり無事だったか。

 良かった。

 俺がいないせいで全滅、なんてことにはならなかったようだ。


 この軍人にも、苦労をかけたな。森は広いと言っても、魔族たちと遭遇すれば一環の終わりだ。命を賭して、俺たちを探し当ててくれたと言ってもいい。


 軍人の先導に従い、俺たちは再び森の中へ駆けて行った。


【作者:ブクマ乞いの舞】

      三  <〇>   ヘ〇ヘ <オネガイシャアアアス!

      三   |     |∧

_| ̄|〇  三  //    /




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