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地下の会合《1》

 投稿遅れてすんません、ホントすんません。お待ちになってくれていた方々、本当にありがとうございます。マジすんません。


 一度書籍化が決まっていたのに、それが飛んでちょっと萎えてね……出来れば再び、週一で投稿していきたいと思いますので、どうか、これからもよろしくお願いします(震え声)。



 過剰なまでに豪華に設えられた、地下にある広い一室。


 部屋の中央には円卓が置かれ――そこに座る、五人の者達。


 壁の一面に設置された巨大な窓の外には、見下ろすような高さに円形の闘技場のようなものが広がっており、大勢の観客と、闘技場の中心で戦う者達の姿が見える。


 彼らは、外からは中の様子が見えない特殊なガラスの内側からその闘技場の様子を眺めていた。


『すごい、すごいぞこの男!!ここまで一撃も食らわず、そして相手は全て一撃で沈めているぅぅぅ!!』


 部屋の内部にまで響き渡る、観客と司会の熱狂の声。


 窓の外を見ながら、椅子に座った燕尾服の男が、背後に控えている従者に向かって口を開く。


「……あの男は誰だと?」


「ハ、登録名はジョン・ドゥ。恐らく、ここのところ急激に勢力を伸ばしている例の組織のトップに、最近就任した男です」


「ほう……それで、ここに来ると?」


「えぇ、ですが、『組織には入らない、しかし話次第によっては、味方になってやってもいい』などと不遜なことを言っておりましたが……本当にお呼びしても?」


「あぁ、そうしろ」


 一礼し、その従者が去って行ったタイミングで、燕尾服の男は円卓に座る周囲の者達に向かって口を開いた。


「さて、お前達。会議を始めよう」


「一つ、よろしいでしょうか?」


「何だ、オルガ」


 燕尾服の男の隣に座っていた、ドレスを着込んだ五人の内唯一の女性――オルガが、蠱惑的な笑みを浮かべながら問い掛ける。


「エフェル様、ナローガがいないようですが、よろしいので? ここに姿を見せないということは、やはり……」


「ナローガは死んだ。拷問されてな。ここには二度と現れん」


 何でもないかのように言った燕尾服の男――エフェルの言葉に、ざわつく円卓に座る者達。

 

「屋敷が吹き飛んだとは聞いていたが……やはり死んだのか」


「ナローガちゃん、最近ちょっと調子に乗っていたものねぇ。どこかの誰かに制裁を加えられたのかしら? ねぇ、エフェルちゃん?」


 頬に深い傷がある男の言葉に続き、女言葉で話す屈強なガタイの男がニヤリと笑みを浮かべ、エフェルに向かってそう言葉を放つ。


「ジローダ、先に言っておくが、私の指示ではない。あの男は勝手にやらかし、尻に火がついて肥やしになった。……そうならなかったら、処理(・・)をしていた可能性はあるが」


「あら、怖いわねぇ。フフフ、貴方の手を煩わせないように気を付けなくちゃね」


 何が面白いのか、笑い声を溢すガタイの良い男――ジローダ。


 と、次に、鋭い眼光を放つ一人だけ歳の行った老人が、渋面を浮かべながら口を開く。


「後釜は? セイリシアの裏社会は、数多の闘争の末、我々六人が同盟を結んだことで、絶妙なバランスの上に成り立っていたものだ。一人欠けただけで、戦争が起こるぞ。とぼけているそこの小娘が、ナローガの元縄張りを食い荒らしているようにな」


「あら、ゲルム。何を言っているのかわかりませんが、痴呆が進みましたか? おじいちゃん何だから、この機会に貴方も引退したらどう?」


「ハッ、言いよるわ、娼婦上がりが。貴様こそとっとと安宿に引っ込んで、客でも取っておればよいのではないか?」


 二人の間に不穏な空気が漂うが、そこにエフェルが口を挟む。


「黙れ。くだらん言い争いは帰ってからやることだ。殺し合いでも何でもな。――ナローガ商会は、完全に潰れた。あそこから後釜を出すことはもうない。故に、他から選出する必要がある」


「じゃあ、港の方を仕切っているレイブンなんかどうかしら? そこそこ名も通っていると思うけれど」


「ほざけ、カマ男。思い切りお前の息が掛かった男ではないか」


「あら、バレちゃった? もう、冗談よ、冗談。そんな怖い顔しないでちょうだい、スカーちゃんは相変わらずお固いんだから」


 頬に深い傷のある男――スカーの言葉に、オホホ、と笑う屈強なガタイの男ジローダ。


「フン、どうだかな。……だが、実際どうする? 新たに選出すると言っても、それこそそう簡単ではないぞ。このまま五人でやっていくのでは駄目なのか?」


「駄目だ。これは面子の問題だ。一人殺られたところで、すぐに次が補充(・・)され何も変わりなく運営が為されていくという姿勢を見せる必要がある」




「――じゃあ、責任取ってその後釜。俺が座らせてもらおうかな」



 

 ――その声は、唐突に聞こえて来た。


 部屋の、出入口。


 いつの間にかそこに立っている、正装に身を包んだ、仮面の男。


 壁際に控えていた従者兼護衛である者達が瞬時に武器を引き抜き、最も出入口の扉に近かった二人が突如現れた闖入者に向かって各々の剣を振り抜くが――。


「ガッ――」


「ぎッ――」


 ――その刃が仮面の男の身体に届く前に、仮面の男の放った打撃が正確に護衛達の急所を捉え、一瞬にして意識を飛ばす。


 残りの護衛達も、すぐさま仮面の男に向かって行こうとするが、しかしその前にエフェルが片手を上げて彼らの動きを停止させる。


 そのまま仮面の男は、自身に向けられる大量の殺気を全く気にした様子もなく部屋の中を進み、円卓の一つだけ空いていた椅子を引き、そこに腰を下ろした。


「あら、知らない子ね。こんなところまで入り込んで来るなんて、中々勇気があるじゃない」


「誰だ、貴様は?」


ジローダとスカーの言葉に、仮面はわざとらしく一礼して答える。


「どうも、皆さん。俺は……あー、じゃあそのまま『仮面』とでも呼んでくれ。どうぞよろしく」


「……では、仮面。責任と言ったな。何に対する責任だ?」


 鋭く見据えて来るエフェルに対し、しかし仮面の男は飄々とした様子のまま、言葉を返す。


「ここに座るはずだったらしい、あの豚を焼き豚にしてしまったのは俺なのでね。それで困っているのなら、是非力にならせてもらおうかと」


「カカカ! 未だ犯人はわかっておらんかったのに、わざわざ自分から現れるとは、余程自信があるのか馬鹿なのか。どんな経緯があったかは知らぬが、貴様はこの街における重役を殺したのだ。制裁を加えられるとは思わなんだ?」


 愉快そうな面持ちでそう問い掛ける、老人ゲルム。


「俺が調べた限りだと、あの男は大分やんちゃをしていたんだろ? どっちにしろ、俺がやらずともそちらさんが処理したんじゃないか?」


 仮面の男の言葉に、ジローダが面白そうな表情を浮かべてエフェルの方を見やる。


「だから、見逃してくれると嬉しいんだがな。ダメなら仕方ない。その時は戦争しよう(・・・・・)。――ただまあ、色々とごたついているそっちが今、そんな面倒なことをしている余裕があるのか?」


「抜かせ、貴様がナローガを殺したからこその混乱だろう」


「いや、まあ、それもあるんだろうが、元々今の王都の情勢じゃあ、余分なことはしたくないだろう? わざわざ敵対者を増やす必要もないはずだ」


「……フン、随分と勝手な物言いをする。唐突に現れ、我々の仲間の一人を殺したから、代わりに自分を仲間に入れろと言う。そんな男を、何故信用せねばならない? 顔も明かせないような、臆病者をな」


 エフェルの言葉に、仮面の男はしばし押し黙ってから、やがて再び口を開き。


「……ふむ、いいだろう」


 その仮面を、外した。


 現れた相貌に、五人の間に少なからず驚きが走る。


「ッ! 貴様、ドラゴンスレイヤーの……!」


「なーるほど、ドラゴン討伐の功労者が何故名を隠すのか、不思議には思っていたけれど。貴方裏の人間だったのね」


 スカーとジローダの言葉に続き、今度は仮面の男――ユウが少しだけ感心した様子で口を開く。


「へぇ? 俺のことがわかるのか。流石王都の裏社会を牛耳る方々だ」

 

「名前と顔だけだ。その素性は一切わからず、依然として貴様がアンノウンであることに変わりはない。顔を晒したことは評価しよう。だが、それで貴様を仲間に引き入れる理由にはならん」


「まあ待て、俺の話はまだ途中だ。この席をもらえるならば、俺は、軍事力を提供しよう」


「……ほう?」


「軍事力っつっても、誰かをぶっ殺して来いとかの依頼は受けないぞ? やるのは、護衛とかそういうヤツのみだ。ただ、それだけでも俺達には商品価値(・・・・)があると、俺は思っているんだが。どうだ?」


「……ドラゴンスレイヤーのパーティによる護衛か」


 ユウの言葉に、少しだけ表情を動かすエフェル。


「ふーん、いいんじゃない? 実力もあるみたいだし。細かい素性も、あたし達だって互いに知らない訳だし。しかもどこの勢力にも属していないのでしょう?」

 

「まあ、この国に来てから、まだ一か月と経っていないのでね」


 肩を竦めて答えるユウ。


「あらそうなの。なら、エフェルちゃんの言っていた条件とも合うんじゃない? あたし達誰かの手の者じゃなく、完全な別勢力」


 押し黙り、何事か考えた様子を見せるエフェル。


 数秒の後に、彼は口元に冷酷な笑みを小さく浮かべると、ユウに向かって口を開いた。


「……軍事力、と言ったな。確かにドラゴンスレイヤーの軍事力があれば、便利なのは間違いないだろう。だが、我々にも軍事力はある。加えて今日、新たな実力者を見つけてな。――入れ」


 その呼び掛けに、エフェルの従者と共に部屋に入って来たのは――執事服を(・・・・)着た老人(・・・・)


「ドラゴンスレイヤーとしての実力、本当かどうか、見せてもらおう。先程までその窓の外で戦っていたそこの男も、相当な実力の持ち主だ。呼び名が正しいのであれば、余裕で勝つことも出来るだろう?」


「なるほど、わかった。――ということらしい。ジゲル(・・・)、俺と戦うか?」


 老執事――ジゲルは、小さく首を左右に振る。


「いえ、滅相もございません。貴方様を攻撃するぐらいであれば、私は自害いたします故。それに、仮に戦ったところで、私は数十秒も経たずと負けてしまいますでしょう。ですので、棄権させていただきます」


「お、そうか。じゃあジゲルの棄権で俺の不戦勝だな。――そういう訳だ。これで俺の方が強い訳だし、この席はいただけるかな?」


 ユウは、まるでいたずらが成功した子供のように、ニヤリと笑みを浮かべた。


 キャラのまとめ、次くらいに書いておくか……。

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