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この混沌とした世界で友達が欲しい!  作者: ダストブロワー(缶)
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今後、後書き部分にゲームの設定的なもの少量追加するかもしれません。

誤字脱字等ございましたら教えていただけると嬉しいです。


2016/12/17 スキル→アビリティに変更

 戦闘が終わればドロップ確認。これぞゲームのお約束。

 残念ながらステータス強化に繋がるフェイリアゴブリンの肉はドロップしなかったので、恐らく通常ドロップであろうゴブリンの骨だけ回収しておく。


〈目標を達成しました。チュートリアルストーリーを進行します〉


 システムアナウンスさんのお知らせが表示されると同時に、出口から筋骨たくましい肉体をした赤黒い肌のNPC達が突入してくる。


「む?君はここの生き残りか?

 我々はヨーツンヘイムの衛兵だ。近隣のゴブリン族の集落から行方不明者が多数いるとの連絡を受け捜査をしている。我々の言葉が理解できるか?」


 突入してきたオーガ族の衛兵――当然のように女性型NPCだ――という名前のキャラがこちらに向けて語りかけてきたので、理解していると子ライオンでうなずき、メェと軽く一声鳴いておいた。


「そうか、では2,3個質問をしたい。終われば我らの都であるヨーツンヘイムへ我々が責任をもって君を招待しよう。

 一つ目はここでなにがあったか教えてほしい。

 二つ目は君がいつからここにいるのかを教えてほしい。

 もちろん、どちらもわかる範囲で構わない。どうだろう、受けてくれるか?」


 ピコンを電子音がなり、クエストの発生を告げる。クエスト名は〈衛兵の捜査に協力しよう〉となっており、質問に答えるだけでいいようだ。嘘をつく理由もないので、正直にマッドアルケミストがいたこと、フェイリアゴブリンのこと、目が覚めたのはさっきのこと等を説明した。

 音声的には唸り声と鳴き声なのだが、なぜか衛兵オーガに言いたいことが通じちゃうのが実に不思議である。


「そうか。ではやはりそのマッドアルケミストが誘拐の犯人なのだろう。協力に感謝する。

 それでは、君が希望するなら私が責任をもって街まで案内しよう」


〈チュートリアルストーリーを進行しますか?〉とのメッセージも出たので〈はい〉をポチっとな。


「うむ。では私が案内を務めよう。――皆、すまないが捜査の続きを頼む」


 他の衛兵が敬礼をするのを横目に外に出る。

 周囲はかなり深い森で、家の正面にある道も獣道程度と言っても過言ではない。よくもまぁこの森で見た目完全に廃屋なココを見つけられたな。




 道すがら衛兵さんが話すところによれば、僕が所属国選択で選んだヨーツンヘイムという国は、それなりに大きい蛮族国家で、巨人のヘカトンケイレスが王として統治しているとのこと。

 周辺国家の状況を聞くと西に大きな人族国家があるが、大河によって隔てられているため侵攻することもされることもなく、現在は主に南の人族国家との小競り合い程度しか国としての戦いは起こっていないようだ。また、北は深い森林地帯のため開拓が進んでおらず、他国と領土を接していない。そして西方は定期的な交易を行うくらいには仲の良い蛮族国家が位置している。


 総じて、差し迫った危険はなく安定した国である、というのが衛兵さんの見解だった。


 また、強くなりたいのなら都市の近隣は魔物も弱く戦闘訓練にはおすすめだとか、お金を稼ぎたいならレギオンの依頼を積極的に受ければ報奨金が出ること、それ以上は商人を目指せばいいこと。

 他には職人を目指すなら都市の北側に職人が多いからそちらを目指せばいいことや、魔族と魔物の違いや見分け方、スキルの育て方など多岐にわたった。


 この衛兵さんはゲームの基本的知識を教えてくれる解説キャラの立ち位置とみて間違いないんじゃないかな。凄いいろいろと教えてくれるし。




 しばらく話しながら歩くと再び〈チュートリアルストーリーを進行しますか?〉とのシステムメッセージが表示された。聞きたいこともあらかた終わっていたので〈はい〉を選択。


 すると、森が開け壁に囲まれた都市が姿を現す。壁伝いに少し歩くと巨大な門があり、そしてその門の傍に設営された小屋に案内される


「さて、我らの衛兵詰所へようこそ。ヨーツンヘイムは君を歓迎する。

 ここから先は君自身の力で自由にこの国で暮らしていくと良い。

 とはいえ、あのような場所にいたのでは先立つものもあるまい。これを持っていきたまえ」


 そういうと革袋をこちらに渡してくる。2000ゴルド・低級ポーション×5・低級マナポーション×3を入手したとシステムが伝えてくるが、チュートリアルとはいえ無料でもらってしまっていいのだろうか不安になる。

 これ知らないうちに債務が増えたりしませんか?大丈夫なお金ですかね。


「なに、気にすることはない。これから我らの同胞となる君への餞別だよ。

 どうしても気になるというのなら君が強くなって、いつか我らを助けてくれればいい。これはそのための先行投資というやつだ」


 この話の様子を鑑みるに、そういうイベントなのだろう、たぶん。

 きっと他のチュートリアルでは最初から持ってる所持品をここで配布しておくとかそういう感じの。となれば遠慮しても仕方がない……はず。


 気兼ねしなくていいのなら貰えるものは貰っておこう、お金がなくて困ることは多いが、あって困ることはそうはないのだし。


「くるるるぅ(ありがとうございます)」


「何をするにしてもある程度の強さは必要だ。必要なものをそろえたら街の周りの魔物を相手にしてみるといい。不安があれば仲間を募ってみるのだ。友との共闘は実に心が躍るものだぞ。

 詰所を出て大通りをまっすぐに行けばレギオン本部のある都市の中央区に行ける。仲間を探すならそこに行ってみるのも一つの手だな。

 短い間だったが、お前と話せて楽しかった。それでは息災でな。」


〈チュートリアルストーリーを終了しました。

『Chaos World』での生活をお楽しみください〉


 さて、やっとこさチュートリアルも終わったし、中央区のレギオンとやらに向かうとしよう。




 大通りというだけあって、出店や店舗が左右に並び、大勢の人々が行き交い、その中をたまに大きなトカゲが引く馬車(トカゲ車?)がガタゴト音を立てながら進んでいく。


 露店からは人を呼ぶ声がし、屋台からは香ばしい食べ物の匂いが漂ってくる。NPCやプレイヤーの喧騒が響くその様子は、まさに活気ある街並みという言葉がしっくりとくる。


 面白いのは蛮族国家というだけあって、人間を一人も見かけないことだ。ゴブリンやオーガ、インプなどは肌の色や身長、角など以外は見た目にもシルエットは人間と変わらないが、それ以外にも半人半馬のケンタウロスや直立して歩く犬のようなコボルド、はてには骨だけなのにで動くスケルトンまで。

かくいう自分も動物系のキメラと、十分この混沌感を強める一因である。


 こんな人種という言葉がかわいく思えるほどに混沌として活気のある風景は文字通りの意味で実に〈ChaosWorld(混沌世界)〉らしいと思う。


 街並みを見つつ移動するかたわら、動物系のプレイヤーを数えつつ――もちろんレア種ではない普通の動物型のみだった――レギオンまで歩く。


 僕のほうにも結構な視線が向けられるが、それは『男だから』という視線ではなく、『珍しいから』という好奇なものが大半だ。家族と街に出て少し買い物をするだけでも結構な視線に晒される視線マイスターの僕が言うのだから間違いはない。


 世の男性が、この周囲から常に視線を受け続けるというストレスに耐えきれない気持ちもよくわかる。僕とて前世での価値観がなければ心折られてしまうところだったのだ。例えるなら学校の授業で発表するときと同程度の視線を常に受け続ける感じが最も近い。意識的に無視せねばあっという間に心がくたびれてしまう。


 男だからという意味での注目は正直、食傷気味もいいところだが、この珍しいからという視線の感覚はなんだか少し優越感を僕に感じさせてくれる。意味もなくレア種だぞーと言いたくなるな!




 歩いていれば前に進むし、進んでいればいずれは目的地にたどり着く。というわけでレギオン前の広場に到着したのだが一つ問題が発生した。そう、姉さんがどこにいるかわからないのだ。


 そも、どんなキャラを作ったのかがわからないので見た目で探せない。

 加えて、待ち合わせ場所としてどこかを指定しているのでもないのでここにいるかどうか……。

 さらにここにいたとしても現在ここはプレイヤーが多いため見つけられるかはかなり怪しい。




 あ、詰んだわコレ。




 いや、フレンドコードの交換をしているのだからコールすればいい。

 いいのだが、だがしかし、考えても見てほしい。没入感たっぷりのこのゲームのストーリー中にチャットで『今どこ?』と流れる様子を。気分が盛り下がること間違いなしである。


 それでも呼べば姉さんは優しいから応えてくれるだろう。

 だが、この程度のことへの気づかいも出来ない男と友達になってくれる人間がはたしているのだろうか?――答えは否 !


 考えろ、考えるんだユタカ。『姉さんと連絡を取る』『迷惑はかけない』その両方をクリアするベストな方法があるはずだ!




≪ミー:もしもし、ユー君?急にごめんね。チュートリアル終わってると思うけど今大丈夫かな?≫




――なるほど。ただ一言、『ごめんね』と添えればよかったのか。これがぼっち(現役女子高生)との決定的な差か……。




 そんなことより返信せねば。既読無視は場合によってはムラハチ案件だと前世のワイドショーで言っていたのは忘れてはいない。


≪ユー:うん。大丈夫。チュートリアルも今終わったとこだよ≫


≪ミー:それじゃあ私もチュートリアル終わってるし集合しよっか。 

    名前、ユーにしたんだ。わかりやすくていい名前じゃない。あ、私のことは姉さんでもミーさんでも好きに呼んでくれていいからね≫


 姉さんの名前はミノリから取ってミーか。姉弟でユー(you)ミー(me)とは、なかなか洒落が効いている。


≪ユー:わかった。それじゃいつも通り姉さんって呼ぶよ。

    それと、今レギオンの前の広場にいるんだけど、姉さんどこにいるの?≫


 大切な場所確認である。先ほどはこれのせいで動くわけにもいかず困ったのだ。しかと聞かねば。


≪ミー:私もレギオン前にいるからこっちからユー君を探すね。なにか目印になりそうなものある?≫


 目印……目印かー。人込みの中にあっては僕の体高は正直低いといって差し支えない。なにせライオンの背から生えているヤギ頭の頭頂部で体高130cm程度しかないのだ。


 なにか目印になるものを探して周りをぐるりと見渡して僕は気づいた。あ、目印あるじゃん、と。




 ほどなくして無事姉さんと合流することができた。

 ちなみに目印に使ったのは尻尾の子ヘビだ。これを最大まで上に伸ばしてやると3mくらいの高さになるので、それを目印に探してもらったというわけだ。


 姉さんはレッサーオーガ、オーガ系統の初期キャラだった。肌の色が赤く身長が2m以上と大柄で、攻防共に拡張性に優れた種族らしい。顔つきはリアルとさして変わらなかったので、知ったうえで見ればすぐに気づくことができた。

 僕がレア種のキメラになっていたことには驚いた様子だったが『そういうのもいいね』と笑ってくれるあたり、姉さんは大物だと思う。


 それと、直接話をしてみて、やはり喋った内容がチャット欄をみないとわからないというのは面倒が多そうだったため音声設定を変更しておいた。これでスムーズに話ができるし、コミュニケーションをとるうえでの障害になりそうな要素を減らせたといえよう。これは友達計画に大きな一歩である!




「そういえば姉さん、……ユズねぇはどこに?」


 こちらは合流できたが、ユズねぇことシトラスとは未だ合流できていない。そろそろ経験値稼ぎにも行きたくなってきたし、予定が合わないならそれはそれで仕方ないよね。


「さっき伝えたらレギオンの受付にいるって。

 ユー君がキメラだから受付までいけば向こうから見つけるのは簡単らしいから、受付でレギオンの登録しに行きましょうか」


「ん、了解。それじゃ早く行こ。パーティでの戦闘とかお金稼ぎとかもやってみたいんだ」


 やはりこの手のゲームは戦ってなんぼだと思う。生産を悪く言うつもりはないけれど、僕の性格では生産一本はハードルが高すぎる。


「はいはい。それじゃ行こっか」


 並んで受付まで歩く。人は多いがはぐれるほどではないのであっさりと受付に到着した。

 ギルドの登録はなんというか、こう、ザルだった。名前と種族、あとは指紋認証みたいなものにタッチするだけ。魔法的ななんかそんなんでどうにかなってると受付のゴブリンが言っていた。


 拍子抜けするほどあっさり登録が終わったので、依頼の張り出してあるボードのほうを見に行くことにする。


――野良ゴブリン討伐、資材確保、ウルフの群れを追い払うなどなど。どれが効率がいいとかはわからないけど、見ているだけでも意外と楽しい。


「おーっすユー君!調子はどう?

 いやぁごめんね遅れちゃって。待ってるのつまんなかったでしょ」


 底抜けに明るい声に振り返るとコボルドのシトラス(ユズねぇ)が手をあげており、その奥から姉さんが此方に向かってくるのが見えた。


「ううん、そんなに待ってないから平気だよ。ユズね――えっと、ごめん。なんて呼べばいい?」


「そう言ってもらえると嬉しいね。

名前かー、それじゃシトさんでよろしく!こっちの友達はそう呼んでくれてるからさ」


「わかった。それじゃシトさん、よろしくお願いします」


「うむ、こちらこそ!ユー君がこのゲーム始めてくれて嬉しいよ。一緒(・・)に頑張ろうね!」


 イントネーションに違和感を覚えたが、それについて考えるより先に姉さんから声がかかる。


「よし、私、ユー君、シトさん全員揃ったしそろそろ狩りに行こっか」


「そうだね。随分待たせちゃったし、ここからはこのシトさんが先導してスムーズにレベルアップを目指そうじゃないか!

 とりあえずパーティ作るから申請送るよー。あ、ついでにユー君にはフレンドの申請もね」


 ユズねぇから申請が来たので両方承認し、3人パーティを作成する。


「パーティとか始めてだから何か失敗したらごめんね」


 失敗はする前に予防線を張るもの。そうすればもしやらかしたときの印象が少しはマシになる、はず。


「ユー君も私もチュートリアル以外の戦闘は初めてじゃない。失敗したって普通だよ」


「そうそう、それに今は失敗してもレベル14の私がカバーしたげるから、どどーんと頼るがよいぞー」


 姉さんが微笑みながら励まし、ユズねぇがドヤ顔で胸を張る。やはり僕の家族は良い人ばかりだ。


「まぁ?レベル1のミーは頼りないし?ユー君は私が守るから安心していいよ」


「んなっ!?種族的には私のほうが守りに向いてるんだし、一緒にプレイする時間がとりにくいシトさんこそ遊撃に回ればいいと思うけどなー。

 それとも経験者さんは初心者にべったりじゃなきゃ戦えないんでしょうかねー?」


「ミーちゃんに戦闘の機会を上げようという優しさが伝わらないとは、やはりオーガを選ぶような人は頭の中まで筋肉に汚染されているのかなぁ?」


 気づいた時にはなぜか姉さんとユズねぇが不敵な笑いを浮かべつつお互いを睨んでいたけれど、ワイワイいつつなんだかんだ討伐系クエストをいくつか受注も出来たので、僕らは門の外へ向かうことにした。




戦闘まで行けなかった。どうしても無駄に長くなってしまいがちなのは欠点だなぁ。精進せねば。

スマートに文章をまとめられる作者様は尊敬します。教えを乞いたいくらいです。

次話予定は未定です。早ければ明日。遅ければ来週末でしょうか。

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