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この混沌とした世界で友達が欲しい!  作者: ダストブロワー(缶)
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前書きと後書き機能について学習しました。次話投稿の予定などを載せるかもしれません。


2016/12/17 スキル→アビリティに変更

〈キャラクターを作成しています。〉


〈希少種族抽選を実施しています。〉


〈希少種族抽選に当選しました!おめでとうございます!〉


〈キャラクターを作成しています〉


〈チュートリアルストーリーを開始します〉




 幸先がいいことにどうやら抽選に当たったようだ。棒アイス30連敗を喫した僕の運勢だが、ここぞという時の勝負強さはなかなかのものかもしれない。レア種となれば話題性もあるだろう。友達作りのメインウェポンに据えるのもアリではなかろうか。


 ついでにチュートリアルストーリーがあるらしい。調べた限りだと、それぞれの野望を夢見て辺境の集落から王の治める国へ出ていくという過程が普通のチュートリアルストーリーらしい。


 なんだけど、どうみてもここ、研究所っぽく、しかも悪役が居座ってそうな古びてて怪しい感じがプンプンする。


 およそ5m四方の部屋の中に、黒ずんだ意図不明な器具や、砕けた容器、怪しい液体が詰まった培養槽、さらにはそこかしこに何かが飛び散ったようなシミが見える。定番をしっかり押さえてくるのには好感が持てるが、じゃあ体験したいかというとそれはちょっと、ということを学んだ。外野で見る分にはいいんだけど。


 そして、目の前のこれ、どう見ても檻です本当にありがとうございました。克服したつもりとはいえ、監禁は正直トラウマなので出来れば早いところ出てしまいたいところ。


 なんてことを考えていると奥のドアが開き、最初は白かったであろう灰色にくすんだコートをきた背の曲がった婆さん登場。ねればねるほど旨くてテーレッテレーなあの魔女に白衣を着せてホラーテイストにした感じといえば伝わるだろうか。


 そしてさらに婆さんの後ろから継ぎ接ぎだらけのゴブリン君が登場。

 顔も体も継ぎ接ぎだらけで気づくのが少し遅れたが、首輪が付いていることから想像するに、婆さんの実験台だったのだろう。白く濁った生気のない目をしている。


「お、おおおぉぉぉ。どうじゃ?ふむ、拒絶反応は出ておらんな、頭は全部生きておるな?魔力も生体反応もある。これぞ、これぞ!

 ひゃ、ひゃひゃっ、ひゃはははははははははははははっ!!」


 悲報、婆さんマジキチのお知らせ。もうなんか命が危険で危ない。ええい、どうしてこうなるまで放っておいたんだッ!




 ってうん?なんで僕の視界が前だけじゃなくて後ろも見えるんだ?レア種になった関係でオオカミじゃなくなったのだろうか。ふと視線を落とすと目に映るのはもっふもふの黄色に近い茶色。黄金色という表現がしっくりくる。


 前足の形はたぶんネコ科、なのに後ろ足は黒毛に蹄。首を回して確認すると子ヤギと子蛇のつぶらな瞳とばっちり目が合うと同時に、子ライオンのもっふもふなお顔も同時に見ているとても不思議な感覚が。

 テレビを3つ並べて、それぞれに別の方向を映した映像を流しているのを見ている気分になるな。これで酔わないのはたぶんなんかそういうゴイスーな技術があるんだろう。


 それにしても、レア種ってキメラになるのか。キメラに不満はないけど、こう、子ライオン+子ヤギ+子ヘビとかもう普通に可愛いだけでこれ戦力にはならない気がするんだけど。

 この可愛い系キメラをこの婆さんが作ったのなら、婆さん頭のちょっと残念な方なんじゃ……。


「やはり王獅子も供物山羊も、成体を使うからダメなのじゃな。そして繋ぎの素材には数多いヘビ種の中でも抜群の回復性を持つヒュドラこそが最適解。

 掛け合わせで幾十と失敗したが、なぁに分かってしまえば容易いものじゃ。クヒっ、ひゃひゃひゃっ」


 婆さんギルティ。話を聞く限りだとこの婆さん、子ライオンとか大量に使いつぶしたととれるんですが、それはもう考えるまでもなくギルティじゃないか。

 チュートリアルストーリーってことだけど、この婆さん倒せるなら倒したいな。猫パンチ|(ただし大型犬サイズ)が猛威を振るう予感!


「ええい、邪魔じゃ!この失敗作がッ!」


 現実逃避的につらつら考え事をしていると、婆さんが後ろについてきていたゴブリン君を突き飛ばした。どうやら研究結果をまとめるために部屋から出ようとしたら後ろにいたゴブリン君が邪魔だった模様。

 ゴブリン君は受け身も取らずに突き飛ばされ、なんかの培養槽に頭から激突して中の薄緑の液体をぶちまける。


「ええい、失敗作の分際で邪魔ばかりしおって。

 ああそうじゃ、支配の首輪があるんじゃし、先にこのキメラを使うてあの失敗作を解体してしまうか」


 なんと、体がほとんど動かせないのはムービー中は動けないお約束のあれかと思ってたのに、どうやら呪われ系アイテムのせいなのか。ますます許せないなこの婆さん。


「あのボンクラ共め、わしを破門しよって……。倫理じゃ道徳なぞわしらにとってすればあってないようなものじゃろうが。

 じゃが、この成果さえあればあいつらなぞ簡単に追い落と――」


 ぶつぶつ文句を言いながら檻の鍵を開ける婆さんの後方で、ゴブリン君が立ち上がりパイプのようなものを持ってふらふらと近づいてくる。

 よく見ると装備されていた怪しい首輪がさっきの衝撃で壊れているようだ。


 そして婆さんの真後ろで、大きく振りかぶって――――


「がッ!?

 ぎゃぁああああ!?腕がッわしの腕が!?おのれ、失敗作ごときが邪魔をオゴっ――」


 ダメージエフェクトが出て横に吹き飛ぶ婆さん、そして倒れた婆さんをひたすら叩き続けるゴブリン君。容赦ないねキミ。

 婆さんの上に出ているHPと思われるゲージがみるみる減っていく。あ、こいつマッドアルケミストLv7って名前なのか。そしてゴブリン君はフェイリアゴブリンLv1、と。


 そしてマッドアルケミストのHPゲージがなくなると同時に僕に装備されていた悪趣味な首輪が自動的にはずれ、自由に動けるようになった。


〈チュートリアル:攻撃をしてみよう〉


 チャット欄にシステムアナウンスから連絡が入る。どうやらここからがチュートリアル本番のようだ。


 このゲームの攻撃は『攻撃の意思を持って行った行動』あるいは『一定以上の威力のある行動』などの一定の要件を満たしたものが該当する。

 前者は身内でじゃれつくようなものであれば攻撃とみなされないわけだ。後者に関しては武器を使って殴りかかるようなのはさすがにダメですよということだろう。

 それ以外にもいろいろと条件があるらしいが詳しいことはわからない。検証してくれるユーザーが現れてくれることを願うばかりである。めんどくさいことは自分ではやりたくないのだ。


 檻から出て攻撃に関するチュートリアルを何度か読み返していたが、ゴブリンはマッドアルケミストを殴った場所から動こうとしない。こちらが相手の後方に陣取っても反応なしである。


 現在の僕はキメラとはいえ全部子供サイズの動物が集まっただけであるため、体の大きさはせいぜい大型犬くらい。そこに子ヤギの頭が背中側から生えているので体高は人の胸程度で、ちょうどヤギの目線の高さがゴブリンとほぼ同じくらいだ。


 考え事はここまで、チュートリアルとはいえ、これからは戦闘の――狩りの時間だ。

 初撃はとびかかっての猫パンチ、膝を狙って転倒狙い!


「くるるる……オオッ!(よーし……当たれッ!)」


 斜めに振り上げた前足に加速と体重を乗せてゴブリンの膝をぶったたく。斜め前方に倒れるようにゴブリンが突き飛ばされる。そして驚くべきことに直撃した膝は継ぎ接ぎ部分から千切れていた。


〈攻撃は命中させる場所や攻撃方法によって威力が増減します。また、弱点部位や攻撃の種類によっては相手の部位破壊を行うことが可能です〉


 なるほど、このゴブリンはどうやら部位破壊のチュートリアルを兼ねていたようだ。

 倒れているゴブリンのHPを確認するとまだ半分程度残っている。これはこのまま飛びかかりなどで倒していいのかなと思っていると、


〈魔法攻撃をしてみよう〉


 とのアナウンスが表示され、魔法に関する説明文がポップアップする。

 要約すると、魔法は使用するとキャストタイムがカウントされ、0になると発動するようだ。また、発動後はリキャストタイムが設定されており、連発はできない仕様となっている。

 キメラの場合は現在氷魔法が使用可能らしいので早速使用してみる。


「メェェエエ!(アイスボール)」


 子ヤギ頭の周辺に青色のエフェクトと、視界の端に00:02.00と時間が表示される。00:00.00になると握り拳二つ分ほどの大きさをした氷の塊が結構な勢いで飛んでいき、ゴブリンに直撃。HPを残り1割にまで削っていった。


 命中後に表示された説明を読むと、魔法の威力は命中部位の他に相手の魔法耐性によっても上下することや、威力や詠唱に関係するスキルが存在することがわかった。




 後は自由にゴブリンを攻撃していいみたいなのでサクっと猫パンチ|(振り下ろし)でとどめを刺し、その後のチュートリアルをこなしていく。


 種族アビリティの説明や、レベルアップ時のステータスの振り分け、アビリティの攻撃スキルや魔法などの追加説明、採取や探索の行い方、アイテムの収納に使用方法、メニューの呼び出しやチャット設定、オブジェクトに対する攻撃など一通り終わったところで、残りは出口から外に出るだけというところまでチュートリアルを進行させた。


 おもしろかったのはやはりキメラの種族アビリティで『捕食吸収』というもの。敵を倒すと『○○の肉』というアイテムを確率でドロップさせ、それを一定数取得することでステータスが伸びるというものだ。

 ちなみにフェイリアゴブリンの肉の必要数は1で上昇したのはHPだった。なお、一回目は確実にステータスが上昇するが、2回目からはステータスの上昇が発生するかはランダムらしい。




 チュートリアルを終わらせるため、施錠されたドアを体当たりで破壊すると、その先は広場になっており、先ほど倒したのと同じフェイリアゴブリンが3体待ち構えていた。

 システムアナウンスが〈おさらい:自由に戦闘してみよう〉とあることを踏まえると、これがチュートリアルのボス的立ち位置らしい。


 ゴブリンは3体、そのうち素手ゴブリンはLv1で2体、両手用の棍棒を持っている棍棒ゴブリンがLv3 で1体、そして彼我の距離は10mほど。

 全部のゴブリンがこちらに近づいてくるが、素手ゴブリンに比べ棍棒ゴブリンは武器を引引きずっており移動速度が遅い。

 となれば間合いがある今、初手は魔法だ。狙いは向かって右の素手ゴブリンA。棍棒ゴブリンを狙うのもいいかなと思ったけれど、同時に2体の素手ゴブリンにたかられるほうが辛そうなので後回しに。


「メェェ!」


 子ヤギ頭の鳴き声と共に撃ちだされた氷塊が素手ゴブリンAのお腹に命中し、その勢いで後方へ転倒させる。よし、これで2対1を避け、1対1を3回する状況に持っていけそうだ。


 向かって左の素手ゴブリンBがさらに近づいてきているので、こちらから飛びかかり前足で引っ掻いてやった。HPの減りはいまいちだが、やはり継ぎ接ぎだらけで部位破壊しやすいのだろう。引っ掻きが命中した左腕が千切れている。

 そのまま無事な右の肩口から噛みつき、左右に振り回してやると、素手ゴブリンBはあっけなくHPが0になり光の粒子となって消えていった。




 さて、困ったことになった。1体目をあっさり仕留められたから油断した。

 痛恨の、というほどではないが、ミスったな。素手ゴブリンAと棍棒ゴブリンにここまで近づかれるなんて。これでは同時に相手することを避けられそうにない。


 縮こまっていてもしょうがないし、多少のダメージは覚悟しよう。幸いチュートリアル採集でHPポーションを一つ手に入れているので大丈夫なはず。

 魔法を準備し、発動する。対象は棍棒ゴブリン、素手ゴブリンの攻撃力は低いだろうから子ヘビ頭でけん制して時間を稼ぎ、その隙に火力の高いであろう棍棒ゴブリンをしとめる作戦だ。


 子ヤギの詠唱が終わり氷塊がゴブリンへと飛んでいく。がしかし、なんと棍棒でガードされてしまい、ダメージこそ多少入っているものの転倒させることに失敗した。

 チュートリアルとはいえボスにもなると正面からの攻撃だとガードも使ってくるのか。この継ぎ接ぎゴブリンやりおる。


 ガードに少し驚いたが、このまま攻め切らないと反撃がくる。ガードしたことで姿勢が崩れてるうちに体格差を生かして体当たりを敢行する!


「がぁああ!(どっせい!)」


 体高こそさほど差がないが、ゴブリンに比べて僕のサイズは大きい。加えて2足歩行というのはバランスを崩しやすいのだ。案の定体を支えきれず転倒した棍棒ゴブリンに馬乗りになり、急いで追撃をしかける。

 というのも体当たりをした後から素手ゴブリンが後ろ足の当たりを殴ってきており、地味にHPが減ってきているのだ。子ヘビ頭で牽制攻撃をしているが、HP減少を気にする素振りを見せずに攻撃を繰り返してくるのは狂気を感じてちょっと怖い。


 とりあえず馬乗りで動きを封じている棍棒ゴブリンの顔面に猫ぱんち(振り下ろし)を3回ほど当ててとどめを刺しておき、そのまま位置取りを調整して素手ゴブリンAには後ろ足であるヤギの蹄を用いた全力の蹴り上げを胸にお見舞いしてみた。

2 m以上吹っ飛びそのまま光と消える素手ゴブリンAを見て、動物の蹴りって怖いなと再確認。現実で動物と触れ合う時は怒らせないように気をつけねば。


 なんにせよ、戦闘終了である。





ストック終了のお知らせ。

次は早ければ明日。遅くとも週末には投下可能になる予定です。


時間が取れないのは大体台風のせい、あんにゃろいらん仕事を増やしおってからに……

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