昔の仲間
前書きってマジで何よ。私の想像で行こうと思います。
梅雨も明けて日の照りが強くなったこの頃、もう外出たくないです。自転車が毎朝辛いです。では、4話でーす。
1
「で、君たち何やってんの?」
シバル・ロネはニコッと満面の笑みで微笑みながら、俺たちが何をしでかしたのか言及する。
「いや、別になにも」
「で、君たち何やってんの?」
こちらにズイと一歩寄り、尚も同じ質問を繰り返す。その肩は怒りからくるものなのか、わなわなと震えている。
神様の機嫌があまりよろしくないのか、徐々に雲が現れ始めている。曇りは俺の気分が一番高まる天候だ。太陽の光を遮断する水の粒子のお蔭で、日焼けはしないし、汗を掻かないしと、兎に角最高である。いいぞ、もっと怒れ!
宙を仰ぎ始めた時未の顔を掴まれ、強制的に目を合わせられる。
「「「す、すんませんでしたぁぁ!」」」
俺は物理的圧力を掛けられて尚、平常心を保てられる程肝は据わっていない。
三人一列に並び、直角に腰を折って最敬礼。最敬礼は土下座の次に誠意が伝わるという。
彼女から滲み出る遺憾の意は、俺たちの心を握って放さない。むしろ握り潰すかのような圧力が存在している。全身から嫌な脂汗が噴き出る。紗雪の憤慨とはまた違う恐怖である。例えるなら、彼女は教師のそれだ。
「私は「謝れ」とは一言も言ってないよ?何やってんのって聞いたの」
「こ、こいつが悪いんですよ!」
「あ、てめっ」
俺は奏士を生贄に出す。だって我先に問題起こしにいったのこいつだし?俺は悪くないし?俺は無実なのである。
「神宮君かぁ。これからご飯って、私言ったよね?30秒と経たずに問題起こしてさぁ」
女性恐怖症の奏士だが、謝るときはちゃんと謝罪するらしい。
「お、美味しそうな匂いがしたもので、裏道に行きました。そしたらおじさんに絡まれたので、ややり返しました」
奏士は完全にビビッている。
「やり返したのね?」
ロネは目を細くした。
「は、はい」
「俺もやりました」
「そりゃもうボコボコに」
「余計なこと言うな!」
「よくやった!」
ロネは両手を合わせ、顔をぱぁっと明るくさせる。先程の笑顔とは対極だ。
「「へ?」」
「うん?」
ロネは奏士の両肩をガシッと掴む。ロネさん、そんなことしたら……ああ、やっぱり。
奏士は泡を吐いて天に召された。
「さっすが男の子だね!活きがあってよろしい!」
「あぁ、はい。どうも」
俺たちはあの取っ組み合い。というか、一方的な蹂躙のあと道中ロネに追い付き、こってり絞られると覚悟したのだが何故か褒められてしまった。
沙雪と姫桜は先に店で待たせているらしい。
「もう迷惑かけないでね?ここは日本じゃないんだから、罪に問われるとエラいことになるよ。反省してるみたいだし、行こっか」
「寛大な心に感謝します」
ロネは回れ右して先に進む。黙って私に付いて来いということか。エラい事とはどんなことだろう。
4人並んで歩道を歩いていると、ふと、そこかしこにいた妖精たちがいつの間にか飛び交っていないことに気付く。
「あれ、ロネさん。妖精さんは?」
「多分亜人討伐隊が帰ってきたんだろうね。妖精は兵士の治療も担当するから、凱旋に行ったと思うよ」
鏡夜は夢見る子供の様に目を輝かせる。
「その部隊、僕見たいなー」
ロネは苦笑した。
「英雄の帰還とかそんな大層なもんじゃないよ。見たところで良い気分はしないかな」
「結構生々しい感じなのか?」
「そうね。腕がちょん切られてたり、眼球が抉られていたり様々」
危うく想像しそうになっちまったぜ。
「で、でもあれだろ?妖精が忽ち治しちまうんだよな?無くなった腕だって……」
ロネは遠い処を見る様に呟いた。そこには覇気が感じられなかった。
「……そうだったらいいよね」
「あ、ごめん。そんなつもりじゃなかった」
現在の『シバル・ロネ遊撃部隊』隊員は彼女一人だったけか。部隊と名乗る以上、以前はメンバーもいたことだろう。彼らは、脱退したか、若しくは……。
「いいんだよ別に。ちょっと昔を思い出してさ。……殉職と言えばまだ聞こえはいいけど、ただの犬死だったよ。私は、あの時何も出来なかった。助けられなかったんだよ……」
そうか、彼女は大切な仲間を失ってしまったのか。こういう時は、「お気の毒様」とでも声を掛ければいいのだろうか。俺は今までの人生で、そんな事を考えたことはなかった。否、考える必要がなかった。如何に俺が恵まれた環境で育ったのかを酷く痛感する。
「……そうか。大変だったな」
「……うん」
俺はタイムスリップして過去の遊撃部隊を救うなんてチートはできない。この悔やみが彼女慰めになるなど毛頭も思っちゃいない。言葉を掛ける以外してやれることなんてない。
だが。
「俺らは、死なない。誓ってやるよ。もう、ロネさんを独りにはしない」
なんて根拠のない台詞だろうか。言ってる自分が馬鹿らしい。人間死ぬときは死ぬ。……あの時は本当に幸運に恵まれていた。
「ロ、ロネさん!おお、俺たちに任せろってんだ!」
奏士も、俺と同じことを思っているのか、彼の表情は曇っている。
ロネの表情も弛緩し、嬉しそうに微笑む。
「シバルさん。言ってはいけないんだろうけど、僕はこう言いたい」
突如、温まった空気を切り裂くように、鏡夜は眼鏡を外し、ゆっくりと語りだす。
「……弱いから死んだ。貴方が、彼らが、強ければ、犬死なんてしなかった。仲間を護れる実力もなくてさ。哀愁込めちゃって、馬鹿馬鹿しい」
時が止まったような気がした。実際には2秒と経過していないだろう。
その発言に情の欠片も感じられなかった。ただ淡々と、突き放すような言動だ。
「鏡夜、それ以上は」
鏡夜は俺を手で制し、続ける。裸眼から見せた一瞬の眼光は、考えがあるから察っせと、そう言っているようだった。
「シバルさん、ただ君は慰めて欲しいだけなんじゃないかな?」
「―違う!」
「いいや違くない。僕はそんな逃走する人間が大っ嫌いだ。傷舐めを求める人間がどれほど醜いか。僕はそういう奴らを嗤ってやる。」
「なにを!」
ロネは瞳孔を開き、鏡夜に殺気を向ける。
「激昂するのが何よりの証だよ、シバルさん。……辛いのは身に染みて分かるよ。だけど、僕も背中を預けたいんだ。後ろばかり見ていれば、君も僕も皆死ぬんだ。頼むよ」
鏡夜の訴えには説得力があった。
「……僕も人を信じて、ダメだったことがある。その人は、今の君のようだった。」
先刻までの浮かない表情はすでに吹き飛んでいた。彼女は正面を見据え、決意を評す。
「……フフ、ありがとう。伝わったよ」
鏡夜も影一つない笑顔で応える。
「じゃあ、行こっか」
俺は鏡夜の過去は身に染みて知っている。ロネは鏡夜の心を看破したのだろう。
改めて歩を促す黒髪の少女を筆頭に、揃って前に進む。
今にも降り出しそうだった曇天の空は既にその影を消していた。
2
―同刻、七瀬紗雪と波風姫桜では。
「にぃたち遅いなー」
頬杖を突く紗雪は、退屈そうにグラスの中の氷をストローで弄る。
「……うん」
机に突っ伏す姫桜も、気怠そうに返事をする。
ロネが二人を店に送り届けて直ぐに、時未を探してくると出ていってしまったのだ。
突然、見知らぬ土地でほっぽりだされた紗雪は狼狽を隠せなかった。
何より驚くべきことは、売り物であろうケトルで勝手にジュースを注がれ、飲んでてと言われたことだ。大胆不敵すぎる。
「ひさちゃん、さゆたち何ヵ月ぶりに会ったんだろう?」
氷も溶け出し、掻き回す暇潰しを失った紗雪は適当な世間話をチョイスする。
「8ヶ月は経ってる」
「ってことは新年度以来かー」
「うん」
特に中身のない会話はたった2往復で終了。
昔から姫桜には関わり辛いとは思っていた。
「じゃあ、あたし、寝る。ぐっど、ない……スピー」
おやすみの言葉を言い切らず姫桜は寝息を立ててしまう。
「……ひさちゃんは羨ましいなぁ。色々恵まれすぎだよ」
紗雪はぷぅっと頬をを膨らませ、眠れる美女のおでこを人差し指で突く。
「う~ん……んふぅ」
姫桜は楽しい夢でも見ているのか、それともくすぐったかったか、にんまりと笑みを零す。
「―えいっ」
今度はその豊かな胸に指を突き入れるが、ムニムニィっと指が吸い込まれていく。
「んっ……」
……おかしい。こうも沈み込むのは変だ。人並みの大きさもない紗雪だが、気付いてしまった。知ってしまった。
確認のため、ガシッと鷲掴みにする。
「っあぁ……んっ」
「くそぅ、可愛い声出しやがってぇ。………じゃなくて、まじかこれ」
掴んだ右手は何の抵抗もなく沈んでいく。
紗雪は悟った。人類の叡智を。
「ノ、ノーブラだ……」
そして、ゆっくり顔を俯かせた。
「……はぁ」
周囲には強面の男達。いきなり連れてこられた異世界。知り合いはたったの4人。着替えはない。電気も親もいない。
紗雪は早速ホームシックに陥った。
「お待たせー!」
やがて見知った兄貴分をぞろぞろと引き連れたロネがビールゥ!と叫んだ。
紗雪を発見した時未が手を振ってくると、つい今までつっかえていた寂しさはなくなっていた。
はいこんにちは。野口マリックです。服を脱いで洗面台に立った際、腕だけ真っ黒なのがいやで、最近は長袖で生活しています。しかしこれが暑いことなんの。外出したら汗びっしょりになるので、外に出たくありません。太陽が憎い。
体調も回復したのですが立ち眩みと言いますか、私男ながら貧血持ちでして。立ち上がった時や前転をするとぶっ倒れてしまいそうになります。気になったので今試しに後転してみたところ、問題ありませんでした。これからのベッドインはバックロールエントリーを採用します。……くっそどうでもいいわ。
読んでくれる皆様ありがとうございます!ではまた。