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4話

 再翻訳。


 ネットでできるアレだ。

 手順としては――

 外国語を日本語に、あるいは日本語を外国語に、または外国語を外国語にする。

 そして、訳した先の言語を、もう一度元の言語に訳す。


 するとどうでしょう。

 元に入力した言葉とは、まったく違う文章ができあがるのだ!



 明らかに『ソレ』が起こっていた。

 俺は電話杖に対し、小声で叫ぶ。


「おいおいどうなってんだコレ!? まるで意味がわからんぞ!」

『ちょ、ちょっと待ちください! 原因を調べますので!』

「どのぐらいだ?」

『さ、三年……?』

「三十秒でやれ!」

『あいあいさー!』


 三十秒の沈黙。

 ドタバタと音がする。

 それから。


『わかりました! えっと、たぶんですね……変換ミスしてます』

「変換ミス!?」

『異世界に産まれ変わる時に、能力を授けるのが普通なんですけれど、世界が違うので、能力に変換をかけないと与えた通りの能力にならないことがあるんです』

「お、おう!」


 よくわからなかった。

 とりあえず返事だけする。


『それでですね、えっと、そのお……』

「なんだなんだ」

『怒らないで聞いてくれます?』

「わかった。言ってくれ」

『……能力の変換をミスしちゃいました。えへっ』

「何が『えへっ』だ! かわいく笑ってんじゃねーよ! すっごいミスだろそれ!」

『怒らないって言ったのに!』

「最後にかわいく笑ったのが完全に火に油だよ!」

『あうあう……で、でもですね! 大丈夫です! 万全のサポートをお約束します! 治ります! 治りますからそれ!』

「そうなのか……ならいいんだけどさ。いや、俺もつい怒ってしまったけど、考えてみればすでに埒外の幸福をもらってるしな。怒鳴ってごめん。それで、どのぐらいで治るんだ?」

『三年ぐらいかけて、変換器の扱いをマスターしてきます。それからですかね?』

「なんでいちいち単位が『年』なんだよォ!?」

『だって専門技術なんですもん! 研修ではうまくいったんですよ!』

「本番でできなきゃ意味ないだろ!」



『戦ってないから生涯無敗』みたいなこと言うなよ!

 そういう駄目そうな発言は俺がするから!

 女神はもっと毅然としててほしい。



『……えっと、なる早で治しますので、しばらくはこのままでお願いします』

「わかった……」



 俺たちは妥協した。

 たった数秒だか数分だかの会話でえらく疲れた。


『では、いったん切りますね』

「ああ……うん……じゃあ」

『はい。では失礼します』


 ガチャッ。

 ツーツーツー。


 電話杖の通話は切れた。

 俺は杖から耳を離す。


 そして、オフィーリアを見た。

 彼女はおろおろしている。


「え、えっと、預言者様……預言、拝聴いたしました」

「……はい」

「難しくってよくわからないところばかりでしたけれど……も、もう一度お願いしても?」

「あーはい。……えっと、


『それが望み、私の予言が聞かれる時には、私は国の平和の外で詐欺をしないけれども、それはよい。開発を持つ繁栄がある。私は様々なファミリーを協力させないけれども、帝国の布告は保存し、確実な「集会を催しなさい。」をする』


 だったかな」



 うん、やっぱり駄目だ。

 俺としては女神に言われた通り、『国家安泰せしめんと欲するならば、我が預言を聞くがいい。幸福は発展とともにあり。多種族協調せしめんがため、議会催せと勅す』と語っているつもりだ。

 だが、口に出すと再翻訳される。



 オフィーリアがぶつぶつと預言を復唱する。

『それが望み……私の預言が……』というつぶやきが聞こえる。

 伝わり方も、発言したままのようだ。

 向こうでさらに翻訳されているとかはないらしい。


 数度つぶやいて。

 オフィーリアがうなずく。


「え、えっと、つまり…………詐欺をすればいいんですね!?」

「違う違う!?」


 たしかに『私は国の平和の外で詐欺をしないけれども、それはよい』と言ったけど!

 っていうかなぜ『詐欺』とか出て来た!


「え、で、でも……あ、一部分でとるからいけないんです、か……? えっと、えっと、詐欺がよくって、開発を持つ繁栄……ファミリーを協力させず、集会を催す……『帝国の布告』? 帝国なんてこの大陸にあったかな……」


 オフィーリアは困り果てていた。

 俺だって困り果てている。


 しばらく考えて。

 オフィーリアは言う。



「とにかく、集会を催します」



 唯一わかる場所を拾った感じだった。

 俺の預言が三分の一も伝わってない気がした。


 まあ、無難だ。

 ……しかし集会か。


 ……嫌な予感しかしない。

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