プロローグ
澤村ユヅキ(さわむらゆづき)ーーーー。
デビュー作が約一年で3000万部を突破した、神と称されるラノベ作家。
彼の作品を読む者は誰もが、口を揃えて「面白い」と話すという。
一般ピープルも、学生も、そして身の毛も弥立つ超・毒舌評論家でさえも、彼の作品を好評価しているのである。
「そいつの作品の何が面白いのか教えてくれよ」
という読者の皆様ーー彼が創作した作品の中で最も人気が高い、『彼女は俺と同じ類だった』を例に挙げて、これから話をしようーーーー。
これぞラブコメの王道、と称されるこの作品(悪く言えば唯のキモオタの話なのだが)。
粗筋を説明するとーー主人公は二次元に住む彼女しか出来ない、惨めな「キモオタ」。そんな主人公はある日、自らが通う高校に転校して来た美少女・浅田マリアに恋をする。それから、彼女がアニオタだということが判明してーーという感じである。
これから先を話すと、ネタバレになってしまうので止しておこう。
兎に角、この作品の最大の見所は「インパクトの強すぎるキャラクター達」。
魅力的かつ独創的な美少女達に、読者は「ふぁあ〜」となってしまうーーアニメ化された今では、美少女達との良いコトを妄想する奴が相当いるらしい。
しかしーー澤村ユヅキは、これほどの人気を得るスーパーカリスマラノベ作家であるが、謎に包まれた人物として注目を浴びている。
謎その一。年齢が分からない。性別も、本名も、日本人なのかさえ分からない。
謎その二。顔を見たことのある読者が一人も居ない。つまりサイン会やらを行わない。
ネット上では、澤村ユヅキはロボットである(自動の文書作成)だとか、顔を見せないのは相当なブスであるから(って酷いだろ!)だとか。根拠も無い、しょうもない噂話がファン達によって繰り広げられているが。
残念。澤村ユヅキは、二人一役で成り立って居たのでした。
え?どういうことかって?
つまりな、つまりーーーー。
澤村ユヅキは、とある引き蘢りの少年とその妹のカリスマ女子中学生が、お互いの天才的な才能を分け合って作られた。
澤村ユヅキを解体すると、
兄ーーーー二ノ宮佑月。19歳。本職は一応ラノベ作家、澤村ユヅキ。しかし引き蘢りの非リアコミュ障童貞ネット廃人。
妹ーーーー二ノ宮冬。14歳。成績優秀スポーツ万能、美少女で性格も◎。バリバリのリア充。しかし家に帰れば、ゲーム廃人になってしまう。
ーーそんな二人が創作する作品は、神となるのである。