あなたのこと
あなたは彼女と違っていた
年上の女性で
落ち着いていて
僕たちのことは
なんでも知っていた
色気があるというのとは
ちょっと違っていたが。
それでも彼女より色気があって
無邪気に笑う彼女と違い
あなたはいつも僕を見ると
微笑んだ。
「ねぇ、あのバンドの新曲聞きました?」
「いい曲よね」
「はい」
いつも
そんな他愛もない話をしていた
そんな話をするだけだった
「彼女さんとは?最近どうなの?」
「え、」
「この前、利用されてるかも。なんて言ってたじゃない」
「あぁ、」
「そんなに自信なくさなくても
本当に彼女さんは君のこと好きそうよ?」
「はは」
ただ、まだ何故僕のことをすきなのかが
分からない
「けっこうモテるのよ?」
そういってあなたは僕を指差した
「え?僕が?」
「うん、君はちょっと楽器に夢中になりすぎ」
「はぁ。。。」
僕はなぜか赤面した。
「花火大会いくの?」
「花火大会?いつですか?」
「そっか、君はこの地区じゃないから知らないよね。
8月の半ばごろだよ」
「あぁそう言えば、誘われました」
「彼女さんに?」
「はは、まぁ。。そんな感じです」
正直まだ行くとはきまってなかった
だって、僕は行きたくなかったから。
もともとそういうの苦手なんだ。
そんな僕からのメールを最後に
彼女から返信は来なくなっていた
はじめは怒らせてしまったのかと
思っていたが、
結局彼女はあなたが言っていた花火大会当日まで
姿を現すことはなかった。
だから
こうして浴衣姿のあなたと花火を見上げている。