第二十三話 衝突
私生活多忙で放置しててスミマセン。
就活生。
ルフィスの手から離れた魔力の塊は圧倒的な暴力で"竜厭"を屠り、夜空に光の矢をかけた。
それを夜風に髪を遊ばせながらシルヴェストは呟く。
「アイツも派手にやらかすなぁ」
そしてシルヴェストは悪童のように笑った。
そのまま銀灰狼を操り魔軍へ向けて反転させ、夜空に銀色の獣が跳躍した。
しなやかな獣は空を駆け抜ける、城下町をひと飛びし、西側から黒い津波の様に押し寄せる『魔軍』に向かって駆け抜けていった。
銀灰狼がふれた場所から、城下町の上空は水滴を垂らす様にふるえ、人々は隠せぬ不安を顔に浮かべて見上げていた。
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「右翼出過ぎだ!さがれぇ、突撃陣形を維持したまま突っ込むぞ!!」
翼の生えた虎のような出で立ちの"騎獣"を操り、マリエルは自身を先頭に突撃陣形をたて中央突破を試みようとしていた。だが厭わしい咆哮をあげながら押し寄せる『魔軍』に騎士たちは些か浮足立っている。
シルヴェストが″3戒魔法″を用いて『魔軍』の戦力を大分削ってくれたから助かったものの、それがなかったらキツかったろうとマリエルは頭の片隅で考えていた。
″3戒魔法″とは無戒魔法の3戒下の巨大魔法を指し、
無戒から3戒。
4戒から8戒。
9戒から12戒に大別される。
普通の魔導師の素質ある者でも9戒が限度とされる。その例外は王族や契約者、すなわちシルヴェスト・ヴァンハールなのだ。
もう間近まで『魔軍』が迫ってきている。
ギャアアアアアアアッグアアアアッと人の悲鳴のように厭わしく醜悪に叫んでいる魔のモノは人を捕食対象として見ているのが恐れを生む。大きな口と並んだ鋭利な牙は人を一飲みする巨大さで、堪らなく嫌悪感を抱かせる。
だがマリウスは湧きあげる恐怖を跳ね返す様に叫んだ。
「グラビティ・シールドを発動せよ!!」
その瞬間、騎士団全体を包むように巨大なシールドが展開され、白と黒が衝突し、何かがせめぎ合う音が轟き、そのまま騎士団は『魔軍』へ突っ込んでいった。




