表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

謝罪の意味

作者: P4rn0s
掲載日:2026/03/26

「ごめん」


その言葉は、いつも軽かった。


重さがないというより、落ちてこない。


宙に浮いたままこちらに届く前に役目を終えているような、

そんな響きだった。


「ごめんね、本当に」


少しだけ語尾を柔らかくしたところで、何も変わらない。

むしろ丁寧さが増した分だけ、空虚さが際立つ。


何が、なのか。

どこが、なのか。


その説明はいつも無い。


ただ、謝罪という形をした音だけが置かれて、

それ以上踏み込んでこない。


こちらが何かを言えば、


「うん、気をつける」


と返ってくる。


けれど、その“気をつける”の中身を、

彼は一度も言葉にしたことがない。


何に気をつけるのか。

どう変えるつもりなのか。


それを知らないまま、また同じことが起きる。


そしてまた、「ごめん」が置かれる。


ある時、聞いたことがある。


「何がダメだったと思う?」


ほんの少し間が空いた。


彼は目を逸らして、


「えっと……不快にさせたこと?」


と答えた。


間違ってはいない。

けれど、それは表面の話だ。


不快にさせた“理由”が分かっていない。


だから、また同じことを繰り返す。


それでも彼の中では、きっと終わっているのだろう。

謝ったから。

許されたから。


その二つが揃った時点で、

問題は解決したことになっている。


気づいていないと思っているのかもしれない。


でも、気づいている。


言葉の軽さも、間の取り方も、目の動きも、全部。


理解していない人間の謝罪は、妙に整っていて、妙に早い。


反省している人間は、もっと言葉に詰まる。

もっと時間がかかる。


何をどう言えばいいか分からなくて、

それでも何かを伝えようとして、歪な言葉になる。


その歪さが無い。


綺麗すぎる。


それでも、周りは受け入れる。


「ちゃんと謝ってるしね」


その一言で、全てが流される。


問題は、そこじゃない。


と思いながら、何も言わない。


言ったところで、きっと同じだからだ。


理解できないものに、

理解を求めることほど無駄なことはない。


気づいているのに、見ないふりをする人間と、

気づいていないまま通り過ぎる人間。


どちらが楽なのだろう。


少なくとも、前者の方が少しだけ疲れる。


けれど、後者にはなれない。


なろうとも思わない。



「ごめん」


また同じ言葉が落ちてくる。


やはり軽い。


拾う気にもなれず、ただそこに置いておく。


その言葉は、もうこちらには届かない。


最初から、届いていなかったのかもしれないけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ