対人戦? 数十トンの鉄塊の前では『回避』も『防御』も無意味です
「……いたぞ。あの変な鉄の箱が、噂の『重機召喚者』だな」
拠点の入り口。
リゼが構築した監視画面に映ったのは、全身を黒装束で包んだ五人の探索者だった。
彼らの頭上には、管理システムが弾き出した赤いマーカーが不気味に点滅している。
「マスター、気をつけて! あいつら、この辺りで有名な『影の旅団』よ。高い敏捷性と暗殺スキルで、多くの配信者を引退に追い込んできたPK部隊なんだから!」
リゼが焦ったように叫ぶ。
対する黒装束のリーダーは、俺の油圧ショベルを見上げ、鼻で笑った。
「デカいだけのガラクタが。そんな鈍い動き、俺たちの『縮地』の前では止まっているも同然だ」
合図と共に、五人が一斉に散った。
残像を残すほどの高速移動。人間一人の視界では、到底追い切れないスピードだ。
(……なるほど。確かに速いな)
俺は冷ややかに独白し、ジョイスティックを指先で微調整する。
俺の視界、ARディスプレイには、リゼが解析した彼らの『移動予測ルート』が、未来位置を示すガイドラインとして網の目のように展開されていた。
「リゼ、予測データの同期を頼む。誤差はコンマ三秒以内に抑えろ」
「了解! 外部センサー全開。あいつらの重心移動から、次のステップを全件プログラムで予測するわ!」
リーダー格の男が、俺の背後の死角から跳躍した。
その手には、魔法の炎を纏った短剣が握られている。
「死ねッ! 鉄くずごとバラバラにしてやる!」
「悪いが。現場の安全管理(安全第一)を舐めないでくれ」
俺はジョイスティックを横に弾く。
ショベルの機体が、轟音と共に猛烈な速度で旋回した。
ガギィィィィンッ!!
男が放った必殺の一撃は、俺の背中ではなく、旋回して割り込んできた『カウンターウェイト』――機体後部にある数トンの鉄の塊に激突した。
「なっ……!? 鋼鉄の防壁を斬ったような衝撃だと……っ!?」
「当たり前だ。お前が斬ったのは、俺の背中じゃない。中身まで詰まった『五トンの鉄の塊』だ」
重機は、ただの箱じゃない。
バランスを取るために、後ろ半分は巨大な鉄の重りでできている。
紙のような防具しか着ていない暗殺者が、全力で斬りかかれば、折れるのは自分の方だ。
「次だ。まとめて片付けるぞ」
俺はさらに旋回を加速させ、アームを地面スレスレで横に薙いだ。
逃げ場を失ったPKたちが、驚異的な反射神経で跳躍して回避しようとする。
「跳ぶと思ったぜ。……リゼ、座標確定!」
「オッケー! 逃げ道封鎖完了よ!」
俺はアームの先端のバケットを、空中でパカッと開いた。
そして、着地しようとする彼らの足元の地面を、一気に『一掬い(ひとすくい)』した。
「……は?」
PKたちが着地したのは、地面ではなく、ショベルの巨大なバケットの内側だった。
五人まとめて、鉄の箱の中に放り込まれた格好だ。
「な、なんだ!? 出られない!? この箱、魔法耐性が異常に高——」
「無駄だ。バケットの材質は特殊合金だ。おまけに、リゼが魔力コーティングを施してる」
俺はバケットを高く持ち上げ、そのまま地面に向けて垂直にガチリと押し当てた。
PKたちは、巨大な鉄のバケットと、俺が先ほど整地したカチカチの地面の間に、完全に『閉じ込められた』状態になった。
重機の重さ、数十トンの圧力が、バケットを通じて地面にのしかかる。
中からは、必死に剣で壁を叩く音が聞こえるが、ビクともしない。
「数十トンの圧力で蓋をされて、内側から開けられる人間がいるなら連れてこい」
『えええええええええ!?』
『対人戦ってこういうことなの!?www』
『最強のPK部隊が、ただの「箱詰め」にされたんだけどwww』
『同接7万人突破! 詰みゲーすぎて草』
配信画面は、かつてない爆笑と賞賛の嵐に包まれていた。
剣技も、魔法も、回避も。
圧倒的な「質量」による物理的拘束の前では、すべてのテクニックがただの悪あがきに変わる。
「……さて。誰に頼まれてここに来たか、ゆっくり話を聞かせてもらおうか」
俺がバケットの油圧をわずかに強めると、中から「ひっ、話す! 全部話すから潰さないでくれ!」と情けない悲鳴が上がった。
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