ベルトコンベア式粉砕作業。このスタンピード、意図的な『スパム攻撃』か?
「ギャァァァァッ!」
V字型に打ち込まれた強固な鋼矢板の防壁。
その後方から押し寄せる500匹の群れは、圧力に耐えかねて、たった一つの出口から文字通り『トコロテン』のように押し出されてくる。
「よし。供給ペースは一定だな」
俺は油圧ショベルの操縦桿を握り、あくびを噛み殺しながらバケットを振り下ろした。
グチャッ。
出口から飛び出してきたオークが、20トンの鉄の塊に押し潰され、一瞬で光の粒子となって魔石に変わる。
俺はアームを上げ、次の個体が押し出されてくるのをコンマ数秒待って、再び振り下ろす。
ズドン。グチャッ。ズドン。グチャッ。
「……まるで、産廃処理工場のベルトコンベアだな」
敵の回避行動も、防御魔法も関係ない。
『防壁というインフラ』で物理的に導線を一本化してしまえば、あとは単純な反復作業だ。
右から左へ。出てきたものを、ただ淡々と油圧で処理していく。
『うわぁ……完全に工場見学の映像だこれ』
『500匹のスタンピード相手に「作業」って単語が似合いすぎるww』
『主、ジョイスティック操作しながらコーヒー飲んでね!?』
『同接4万人突破! 歴史に残る消化試合だわ』
パニックになっていた探索者たちも、あまりに一方的な『粉砕作業』を前に、ポカンと口を開けてへたり込んでいる。
わずか10分後。
500匹の『狂乱の群れ』は、俺の重機の前にうず高く積まれた『魔石の山』へと変わっていた。
「……ふぅ。全オブジェクトの撤去完了。現場の安全確認、ヨシッ」
エンジンをアイドリング状態に戻し、キャビンの扉を開ける。
歓声を上げて駆け寄ってくる探索者たちを横目に、リゼは一人、山のような魔石の前にしゃがみ込んで顔をしかめていた。
「……マスター。これ、自然発生したスタンピードじゃないわ」
リゼは拾い上げたオークの魔石に自身の端末を繋ぎ、空中に緑色のホログラム画面を展開した。
「アタシ、前から『魔力や魔石の構造は、情報工学の法則で完全に説明できる』って仮説を立ててるじゃない? だから魔力駆動のOSも書き換えられるわけだけど……」
リゼが特定の魔力の波形を指差す。
「この500匹の魔石全部、中に組み込まれてる『行き先のデータ』が、ピンポイントでこの安全地帯の座標に強制上書きされてたのよ。自然な魔法現象なんかじゃない。誰かが意図的にプログラムを書き換えた痕跡よ」
「……なるほど。誰かが意図的に、俺たちの場所に群れを誘導したってことか」
「ええ。大量の迷惑メール(スパム)を一つのアドレスに集中させてパンクさせるような手口ね。しかも、誰が送ったかの痕跡は完全に消されてる。ダンジョンの魔力場をここまで広域でハッキングできるなんて、信じられない技術力よ」
迷惑メールの送りつけ。
それなら、パソコンに詳しくない俺でも直感的に理解できる悪意だ。
ダンジョンの奥深くで突然変異が起きたのか、それとも……凄腕のテイマーか何かが、外からちょっかいを出してきたか。
犯人が誰であれ、このダンジョンには俺たちの知らない『裏のルール』を操作できる何者かがいるのは確実だった。
「まあ、気にするなリゼ」
俺はシートから降り立ち、魔石の山を重機のバケットで器用にまとめながら笑った。
「スパム攻撃だろうが何だろうが、俺たちの防壁(鉄の壁)は抜けなかった。次また迷惑メールが送られてきたら、もっとデカい重機で、送信元ごと『整地』してやるだけだ」
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