押し寄せるスタンピード? 『バイブロハンマー』で即席の要塞を建築します
ビーーーッ!! ビーーーッ!!
完成したばかりの平坦な安全地帯に、ARディスプレイのけたたましいエラー音が鳴り響いた。
『EMERGENCY(緊急事態):異常なトラフィックを検知。
対象:第6階層の群れ(スタンピード)。推測数:約500。
本座標への強制ルーティング(到達予想時間:40秒)』
「……は? 500匹だと?」
俺は操縦席から身を乗り出した。
リゼが構築したローカルネットワークの範囲外、荒野の地平線の彼方から、もうもうと土煙を上げて『狂乱の群れ』がこちらへ向かって押し寄せてくるのが見えた。
オーク、キラーウルフ、その他もろもろ。ダンジョンの生態系を無視した、明らかなイレギュラーだ。
「嘘でしょ……!? アタシの認識阻害を強行突破してくる!? こんなの、自然なモンスターの挙動じゃない! 誰かが強制的に座標指定を送り込んでるわ!」
助手席でリゼがタブレットを叩きながら叫ぶ。
その声に、休んでいた底辺探索者たちが弾かれたように立ち上がり、絶望の悲鳴を上げた。
「お、終わりだ……っ! 隠れる場所もない平地でスタンピードなんて!」
「逃げろ! いや、もう間に合わない!」
パニックに陥る探索者たち。
コメント欄も『500匹はさすがに無理だろ』『重機1台でどうやって守るんだよ!』と阿鼻叫喚に包まれている。
(……うるせえな。素人は黙ってろ)
俺は大きく息を吸い込み、ARディスプレイのシステムに介入する。
「リゼ、騒ぐな。平地で数が多すぎるなら、敵の『導線』を物理的に絞り込めばいいだけだ。建設作業に入る!」
俺はスキルを発動し、モーターグレーダーから再び『油圧ショベル』へと換装する。
ただし、今回のアタッチメントはバケット(爪)ではない。
「アタッチメント換装! 【バイブロハンマー(振動式杭打機)】!」
光の粒子が収束し、ショベルのアームの先端に、巨大な箱型の機械と、長さ10メートルを超える分厚い波打つ鉄の板——『鋼矢板』がセットされた状態で顕現する。
土砂崩れを防いだり、地下工事の際に周囲の土をせき止めるための「絶対の鉄壁」だ。
「現場の安全確認、ヨシッ! 打設開始!」
俺は迫り来る500の群れに向かって重機を旋回させ、アームを高く振り上げた。
ギュイィィィィンッ!!!!
バイブロハンマーに魔力が注がれ、毎分千回を超える超高速の『縦振動』が発生する。
重機全体が微振動し、空気がビリビリと震えた。
「落ちろッ!」
ズドォォォォンッ!!!!!
凄まじい轟音と共に、10メートルの鋼矢板が、硬い岩盤を豆腐のように貫いて一瞬で地中深くに突き刺さった。
超高速の振動が岩盤の摩擦抵抗をゼロ(液状化)にし、自重と油圧だけで鉄の壁を無理やりねじ込んだのだ。
「次! 次! 次ィッ!」
ガコンッ! ズドン! ガコンッ! ズドン!
俺はARディスプレイに表示された『防衛線ガイドライン』に沿って、次々と新たな鋼矢板を召喚しては、寸分の狂いもなく横に連結して打ち込んでいく。
ジョイスティックを捌く俺の手は、もはや残像しか見えない速度に達していた。
『え!? 何あの機械!? 地面が震えてる!』
『嘘だろ、数秒で10メートルの鉄の壁ができあがっていくぞ……!?』
『魔法使いの土壁なんか目じゃない硬さとデカさだろこれ!!』
群れが到達するまでの、わずか40秒。
俺はV字型になるように数十枚の鋼矢板を打ち込み、平地の中央に巨大な『漏斗』のような即席の要塞を完成させた。
「ギャァァァッ!」
押し寄せてきたスタンピードの先頭集団が、突如現れた強固な鋼鉄の壁に激突し、次々と圧死していく。
波打つ形状(U型)の鋼矢板は、力学的に圧倒的な強度を誇る。オークの突進程度で曲がるようなヤワな鉄じゃない。
「これで、群れは壁に沿って『中央の狭い隙間』に集まるしかなくなった」
俺はバイブロハンマーを解除し、今度は超大型のバケットへと換装した。
V字の防壁の頂点。モンスターが1匹ずつしか通れないように絞り込んだ、たった一つの出口。
俺はそこで、油圧ショベルのエンジンを限界まで吹かし、キャタピラを鳴らして待ち構える。
「さあ、一列に並んで出てこい。まとめて『撤去』してやる」
防壁というインフラに守られ、唖然として尻餅をつく探索者たち。
彼らの前で、500匹の群れを相手にした、一方的な『ベルトコンベア式・粉砕作業』が幕を開けた。
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