致死の毒沼? いいえ、ただの『埋立地』です
ズズ……ズズズズズズッ!!!!
整地したばかりの第3階層の地面が。
俺を乗せた重機ごと、丸ごと底なしの闇に向かって崩落を始めた。
(マジかよ、基礎の岩盤ごと抜けやがった……!)
無重力感が全身を襲う。窓の外を、岩の破片が猛スピードで上へと流れていく。
だが、俺の思考は不思議なほどクリアだった。
『System Alert:高度急低下。着地まで推定4.2秒。』
ARディスプレイが、眼下の暗闇を高速でスキャンし、緑色のワイヤーフレームで地形を描き出していく。
(……ショベルカーのサスペンションじゃ、この落差の衝撃は吸収しきれない)
なら、やることは一つだ。
俺は空中で操縦桿を激しく切り返し、機体を無理やり回転させた。
「アーム展開! ブレーカー、全力駆動!」
『Target Locked. 着地地点の岩盤へ物理的干渉を開始します』
落下地点。そこは強固な岩盤ではなく、不気味に発光する巨大な「毒の沼地」だった。
俺は沼の縁の岩壁に向かって、油圧ショベルのアームを全力で突き立てる。
ガガガガガガガガッ!!!
岩壁に突き刺さった鉄の爪が強烈な摩擦火花を散らし、ブレーキの役割を果たす。
重機の圧倒的な重量とトルクが落下の運動エネルギーを相殺し、機体は毒沼のギリギリ手前で重々しい着地音を立てて停止した。
「……現場の安全確認、ヨシッ」
『うおおおおおおお!!』
『空中でアーム使ってブレーキかけたぞ!? 変態機動すぎるwww』
『映画のスタントかよ!! 同接3000人いってるぞ!』
コメント欄が尋常ではない速度で滝のように流れている。
だが、俺はフロントガラス越しに広がる光景に目を細めた。
『WARNING:強酸性流体(推定pH 2.0)を検知。接触時、装甲の溶解率95%』
AR視界が、紫色の沼全体を「立ち入り禁止エリア」として赤くハイライトする。
ここはおそらく、第4階層。
落ちた先は、既存のトップ探索者たちですら攻略を諦める『腐食の毒沼』だった。
(なるほど。剣や魔法じゃ、足場がないこの沼は渡れないってわけか)
俺はシートに深く座り直し、フッと息を吐く。
土木工学の基本。足場がないなら、作ればいい。
「スキル発動。【重機換装】」
空間が歪み、俺の乗る油圧ショベルが光に包まれる。
次に現れたのは、フロントに巨大な排土板を備えた、数十トンクラスの大型『ブルドーザー』だ。
「さあ、埋め立て(土地改良)の時間だ」
キャタピラが唸りを上げ、ブルドーザーが前進する。
俺はブレードの角度を絶妙に調整し、沼の周辺にある巨大な岩塊と土砂を、一気に毒沼へと押し出した。
ゴゴゴゴゴゴッ!!
『えっ?』
『ちょ、おま、何して……』
『もしかして、毒沼を物理的に埋め立てようとしてる!?』
その通りだ。
酸性の沼だろうがなんだろうが、上から圧倒的な質量の土砂で覆い尽くせば、ただの「新しい地面」だ。
ARディスプレイが、地形の傾斜と土砂の最適配分を計算し、水色のガイドラインを表示する。
それに沿って重機を走らせるだけで、致死のトラップは強固な舗装路へと変わっていく。
「ふぅ……これで導線は確保できたな」
『マジで道作りやがった……』
『強酸性の沼をブルドーザーで物理無効化www 魔法陣形涙目www』
『【名無しメカニック】:あの排土板の角度! 土砂の安息角(崩れないギリギリの角度)を完璧に計算して押し出してるわ! このマスター、ただの素人じゃない!』
またあのマニアックなリスナーか。よく見ているな。
と、その時だった。
「ひっ……! 誰か、助けて……!」
ブルドーザーの強烈なライトが、沼の対岸を照らし出す。
そこには、油まみれのツナギを着た小さな少女が、背後に迫る巨大なヘドロの化け物に追い詰められていた。
尖った耳。ドワーフか。
「……おいおい、民間人が工事現場に立ち入るなよ」
俺はため息をつき、再びギアを入れる。
ビーーーッ!!
『System Alert:新たな敵対オブジェクトを検知。
推奨行動:対象の完全な『圧殺』』
「了解。これより、障害物の撤去作業に入る」
轟音を立て、数十トンの鉄の塊が少女の目の前へ猛スピードで突進した。
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