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未踏の第11階層。世界の『読み取り専用』属性を削り取ります

第5階層に築いた『黒部村』を後にし、俺たちは奈落の底、第11階層へと足を踏み入れていた。

そこは、これまでの階層とは明らかに「空気が違った」。


「……マスター、見て。岩肌に魔力のラインが走ってるわ。これ、天然の洞窟じゃない。巨大な『基板』の中にいるみたい……」


リゼが端末の明かりで照らした壁面には、幾何学的な模様が淡く発光し、回路のように明滅していた。

空気中に漂う魔力の密度はこれまでの十倍以上。

探索者たちの間では「神域」と恐れられ、誰一人として生還した記録のない未踏の領域だ。


俺たちの進く先を遮ったのは、青白く透き通った巨大な水晶の壁だった。


「リゼ、こいつは掘れるか?」


「……スキャン中。ダメよ、これ。岩盤の属性が『読み取り専用』にロックされてる! 物理的な攻撃も、魔法による分解も、全部『書き換え禁止』のエラーで弾かれるわ!」


リゼが絶望的な顔で叫ぶ。

世界のシステムが、これ以上の侵入を拒んでいるのだ。

だが、俺は愛機のエンジンを切り、新たな巨大重機を空中に描き出した。


「読み取り専用、ね。……なら、読み取れないほど細かく粉砕フォーマットしてやりゃいいだろ?」


俺が召喚したのは、もはや重機というより「巨大な鋼鉄の円柱」だった。

前面に無数の超硬合金のカッターを備えた、地下鉄工事の切り札。


「重機召喚――【シールドマシン(トンネルボーリングマシン)】。全ビット、超高速回転開始」


ギュルルルルル……ッ、ドォォォォォン!!


直径十メートルを超える巨大な回転刃カッターヘッドが、咆哮を上げて水晶の壁に食らいついた。

世界のシステムが「破壊不能」と定義した壁と、俺が召喚した「物理法則の結晶」が激突し、周囲の空間が悲鳴を上げる。


『うおおおお! ドリルじゃなくて「壁そのものが回転」してる!?』

『「読み取り専用」を物理で削り取るとか、発想がヤバすぎるwww』

『同接四十万人突破! 世界のルールを削り取る音、最高だわ!』


配信画面は、火花を散らしながら「不可能」を削り抜く鋼鉄の巨体に熱狂していた。

シールドマシンの強力な油圧推進力が、ロックされた世界の属性を無理やりこじ開けていく。


「……計算不能よ! 物理的な質量の圧力が、システムの保護領域をオーバーロードさせてる! マスター、そのまま押し切って!」


「言われなくても、工期は守る主義だ」


俺は操作レバーを最大まで倒し込んだ。

最後の一層が砕け散る。

パリンッ、という世界が壊れるような音と共に、シールドマシンは水晶の壁を突き抜け、その先の「広大な空間」へと躍り出た。


そこに広がっていたのは、緑色の光が流れる広大な「データの海」。

そして、その中央に浮かぶのは……この世界のOSを管理する、巨大な『中枢サーバー』と思しきクリスタルの塔だった。


「……着いたな。ここが世界の『バックエンド』か」


俺は回転を止めたシールドマシンのハッチを開け、目の前の異様な光景を見据えた。

第2章、ここからが本当の「世界の修理デバッグ」の始まりだ。

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