公開捜査。王都全域に『セキュリティ監査結果』を強制配信します
「……よし、全データのサルベージ完了よ。マスター、準備はいい?」
リゼが不敵な笑みを浮かべ、手元の端末を俺に向けた。
画面には、ギルドが過去数年にわたって行ってきた『環境改変』の生々しい記録が、実行者の署名付きでリストアップされている。
そこには当然、シークフリートの名も刻まれていた。
「ああ。ただの暴露じゃ面白くない。王都中の人間に、最前列でこの『ゴミ箱の中身』を見せてやろうぜ」
俺はスキルを起動し、新たな重機を呼び出した。
「重機換装。高所作業に入る。――【トラッククレーン】!」
光の粒子が収束し、巨大な伸縮式ブームを備えた多軸の巨体が現れる。
建築現場の華、数十メートルの高さを自在に操るクレーンだ。
「リゼ、その特大魔石をクレーンのフックに固定しろ。地上じゃ電波……魔力の直進性が足りない。上空から一気に全方位へブロードキャストする」
「了解! 村の全端末を中継局にして、王都のメインサーバーに直接データを流し込むわ。名付けて、『セキュリティ監査結果の強制報告』よ!」
リゼが魔石をクレーンのワイヤーに繋ぐ。
俺は操縦席に座り、レバーを慎重に操作してブームを天高く伸ばし始めた。
ギュイィィィィン……ッ!
銀色の長いアームが、荒野の空を貫くように伸びていく。
高度五十メートル、六十メートル。
地上では届かない、王都の魔力通信網の『基幹ルート』が見える高さまで、光り輝く魔石を吊り上げた。
「……位置、確定。送信開始!」
リゼがエンターキーを叩いた瞬間、クレーンの先端にある魔石が、太陽よりも眩しい青白い光を放った。
『な、なんだ!? 街中のモニターに何か映ってるぞ!』
『「ギルド本部・不正アクセスログ公開」……これ、シークフリート様の署名じゃないか!?』
『ハイドラを誘導したのも、嵐を起こしたのも……全部ギルドの自作自演だったのか!?』
王都の広場、貴族の館、そしてギルド本部のロビー。
あらゆる魔法端末に、リゼが解析した「証拠」が強制的にポップアップし、逃げ場のない真実を突きつけていく。
同接数はついに二十万人を突破。コメント欄は、神格化されていた英雄の墜落を目の当たりにし、怒濤の勢いで加速していた。
――その頃。王都ギルドの最上階。
「……馬かな、バカなバカな!! なぜだ、なぜ私の端末(権限)が弾かれる!!」
シークフリートは、狂ったように管理コンソールを叩いていた。
だが、画面に表示されるのは『管理者アカウント:停止中(リゼによる凍結)』という冷酷なメッセージだけだ。
窓の外を見れば、広場に集まった民衆たちが、空に浮かぶ巨大なホログラム――自分の悪行の証拠を見上げ、怒りの声を上げているのが見える。
「あの泥臭いネズミめ……! 私を、私をここまでコケに……ッ!!」
プライドを完全に粉砕されたシークフリートの顔が、怒りでどす黒く歪む。
彼は震える手で、デスクの奥に隠されていた『黒い魔石』を取り出した。
「こうなれば、階層ごと消えてもらう。ギルドの禁忌、エリアデリート(空間消去)の強制起動だ……!」
それは、バグを利用した小細工ではない。
ダンジョンのシステムそのものを破壊しかねない、文字通りの『最終手段(強制終了)』。
王都に激震が走る中、俺たちの頭上の空が、今度は不気味な紫色に染まり始めていた。




