逆ハッキング開始。汚い魔法には『パッチ』を当てて無効化します
嵐が止んだ。
さっきまでの暴風雨が嘘のように、第5階層には再び静寂が戻る。
だが、拠点の広場に集まった探索者たちの視線は、泥にまみれながらも傷一つなく鎮座する油圧ショベルと、その操縦席から降りてきた俺に釘付けだった。
「……信じられん。あの規模の天災を、ただの鉄の塊で凌ぎきったというのか」
馬車の中から顔を出したレジナルド役人が、ガタガタと震えながら呟く。
俺はそんな小悪党には目もくれず、巨大な魔石の前で端末を叩き続けるリゼのもとへ歩み寄った。
「どうだ、リゼ。尻尾は掴めたか」
「ええ、バッチリよ。でも……あいつら、本当に趣味が悪いわ!」
リゼは怒りに肩を震わせ、ホログラム画面に映る複雑な幾何学模様を指差した。
「この嵐を呼んだ命令、めちゃくちゃよ。本来の気象の法則を無理やりねじ曲げて、エラーを無理やり出力させてる。プロの仕事じゃないわ、ただのクラッキング(破壊行為)よ!」
リゼにとって、魔法の法則を汚く扱うことは、エンジニアが美しいソースコードを汚されるのと同じくらい許せないことらしい。
「あいつら、王都のギルド本部にある管理端末から、この場所の座標をピンポイントで指定して魔力を流し込んでる。……でも、甘いわね。一度繋がったなら、こっちからも『道』は見えるのよ」
リゼの指が、光のキーボードの上で踊る。
「今から、この魔石を中継機にして、あっちの管理端末に逆アクセス(逆探知)を仕掛けるわ。あっちが無理やりこじ開けた『通信経路』をそのまま辿って、あっちのシステムの門を叩いてやる!」
『逆アクセスきたあああああ!!』
『やられたらやり返す、これが重機無双のスタイル!』
『リゼちゃん、怒らせると世界で一番怖いタイプだww』
配信のコメント欄が、リゼの反撃に沸き立つ。
だが、しばらくするとリゼが「ちっ」と舌打ちをした。
「……やっぱりね。向こうの入り口、分厚い『門』で閉じられてるわ。古い儀式用の魔法障壁が、外部からの干渉を全部シャットアウトしてる」
「物理的な壁か。なら、俺の出番だな」
俺は再び操縦席に乗り込み、アームをリゼが解析している「魔力の空間座標」へと向けた。
「リゼ、その『門』の座標をARディスプレイに転送しろ。論理的に開かないなら、物理でこじ開ける」
「了解、マスター! 座標固定……そこよ!」
ARディスプレイに、空中の何もない一点が真っ赤なターゲットマークで表示される。
俺は油圧ショベルのアタッチメントを、超強力な打撃を繰り出す『油圧ブレーカー』に換装した。
コンクリートの基礎や硬い岩盤を粉砕するための、巨大なノミだ。
「世界の理だろうが、ギルドの守りだろうが……。叩けば壊れるだろ?」
俺はレバーを引き、空間の『門』に向けて油圧の衝撃を叩き込んだ。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドォォォォォン!!
目に見えないはずの魔法障壁が、重機の物理的な打撃を受けて、ガラスが割れるような音と共に空間に「ヒビ」を入れる。
「今よ! 門が開いたわ!」
リゼの端末から、膨大なデータがギルドの管理端末へと逆流していく。
それは、ギルドが今まで隠してきた「環境操作の記録」を強制的に吸い出すための、リゼ特製の解析プログラムだった。
数分後。
リゼの画面に、ギルドの最高機密であるはずの『過去の環境改変履歴』が、リストとなってズラリと並んだ。
「……見つけた。シークフリートの名前で実行された、非公式な命令の数々。これですべての証拠が揃ったわ」
俺はリゼと顔を見合わせ、静かに頷いた。
レジナルド役人は、すでに馬車を走らせて逃げ出そうとしていたが、もう遅い。
この解析結果は、すでに『15万人』の視聴者を通じて、全世界にリアルタイムでバックアップ(中継)されているのだから。
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