利権の侵害? 規約に同意できない方はお引き取りを
開通したばかりの道を通り、拠点の広場に数台の馬車が滑り込んできた。
中でも一際目を引く白銀の意匠を凝らした馬車から降りてきたのは、贅沢な法衣に身を包み、いかにも上級役人といった風貌の小太りな男だった。
「ふむ……。聞いていた以上に勝手な真似をしているようだな」
男は高級そうなハンカチで鼻を押さえ、俺の油圧ショベルを汚物でも見るかのような目で一瞥した。
「私はギルド本部から派遣された、都市開発局のレジナルドだ。貴殿らが無許可で構築したこの道路、および拠点のすべての所有権を、ギルド規定に基づき即刻接収する」
周囲の探索者たちがざわつく。
せっかく手に入れた安住の地を、権力にモノを言わせて奪いに来たのだ。
「接収、ね。いいが……あんたらにここの維持管理ができるのか?」
俺は操縦席のドアに寄りかかり、冷めた声を出す。
「道ってのは、造って終わりじゃない。砂漠の砂に埋もれないよう定期的な整備が必要だし、地下水脈を汲み上げる井戸の調整だって職人の勘がいる。素人が触れば、三日でただの砂場に戻るぜ」
「黙れ。技術ならギルドがお抱えの魔導師を寄越せば済む話だ。古き法によれば、ダンジョン内の建造物はすべて公共の資産。貴様のような若造に所有権などない」
レジナルドが尊大に手を振る。
だが、その「古き法」という言葉に、リゼが鼻で笑った。
「その法律、いつの時代のものかしら? 管理方法すら書いてないカビの生えた仕様書なんて、今のこの現場じゃ通用しないわよ」
リゼは空中にホログラムの操作パネルを展開し、そこに流れる複雑な文字列を見せつけた。
「この村の防衛機能も、水回りの制御も、全部アタシが書いたプログラムで動いてる。このシステムの管理者アカウントは、世界でアタシ一人しか持ってないわ。あんたたちが無理に奪おうとしても、アタシがログインを拒否すれば、井戸の蓋一つ開かない。……あ、もしかしてアタシを拷問してパスワードを聞き出すつもり? 無駄よ。一定回数間違えれば、データが全部消えるように設定してあるから」
「な……っ!? 貴様、ギルドに逆らうというのか!」
顔を真っ赤にするレジナルド。
そこに、俺がトドメを刺すように、広場の中央へ巨大な映像を投影した。
そこには、流れるようなコメントの滝と、現在『十万人』という驚異的な同時接続数が映し出されていた。
「今、あんたが放った『接収』って言葉。この十万人の視聴者……地上の有力な商人や貴族たちもリアルタイムで見てるぜ」
画面には、『ギルドの横暴だ』『せっかく開通した流通ルートを潰す気か?』『独裁官レジナルド、即刻罷免せよ』といった過激なコメントが並んでいる。
「この村はすでに、一つの巨大な経済圏だ。それをギルドが私利私欲で握り潰そうとしている……。この配信の記録が王都の議会に回ったら、あんたの首、明日まで繋がってるかな?」
レジナルドの顔が、赤から一気に土気色へと変わった。
現代のエンジニアなら誰でも知っている。
どんなに権威のある古いシステムも、ユーザーの支持と適切な管理権限がなければ、ただのゴミクズになるということを。
「……く、狂っている。貴様らのような鼻たれ小僧に、何ができるというのだ!」
「できるさ。俺たちはインフラを造り、みんなに快適な場所を提供する。……あんたが俺の作った『利用規約』に同意して、正当な通行税を払う客として振る舞うなら、追い出しはしないぜ?」
俺が不敵に笑うと、レジナルドは地を挺うような呻き声を残し、逃げるように馬車へと転がり込んだ。
『主、交渉術まで最強かよwww』
『「利用規約に同意できない方はお引き取りを」は草。ネットの鉄則だな』
『同接十万人突破! 歴史が動いたぞ!!』
配信の熱狂が、最高潮に達する。
だが、俺は知っていた。
この敗北を喫したギルドが、次はこの場所を物理的にではなく、もっと根源的な『世界の理』を使って消し去ろうとするであろうことを。
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