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──数時間後。
体育館ほどもある〈渡し風の間〉のほとんどの体積を占めて眠るだいだら坊の限られた周囲は雑多なものが散乱しまくっていた。
やかん、大小のバケツ、金だらい、すりこぎ、ホイッスル、メガホン、トロンボーン、玉ねぎ、ミント、胡椒、唐辛子、バレーボール、布団叩き、木槌、金槌、庭石、鞭……。
そして、ぐったりと疲れはてた守り神とメイド服の女子高生。
「お、起きませんね月弧さん」
寒さで起きることを期待して庭に面した戸を開け放っているので、雀女はメイド服の上に毛布をかぶっている。
さらに夏雪が足を冷やさないか気遣ってくれたというので、黒ストッキング着用だが(なぜだか月弧の部屋の押し入れからはなんでも出てくる)、普通に外気は寒い。
「くうっ、まさかここまで鈍いとは!かくなる上は奥の手じゃ、火器を使う!!」
「ええ?! でもここ、木造……」
「保険には入っておる!! 蔵に爆竹と花火があったはず。雀女はバケツに雪を詰めておいておくれ!」
結果。
すやすや眠るだいだら坊と、精根尽き果てたかと思われる二人。
「月弧さん、ちょっと落ち着いて他の方法を考えてみたら──」
「くううっ、許さん、負けるかッ! 次は斧じゃ!! うっかり大木と間違ったと言い抜ければよい!! さすがに怒り狂うやもしれぬから、雀女は避難しておれ!!」
「お、落ち着いて、月弧さん、さすがにそれはマズイよ!! 今までも相当だったけど!!」
「心配ない、命を賭した闘いになってもわらわが勝つ!!」
「月弧さん、それって当初の目的見失ってるから!! 落ち着いて、は、はやまらないで~!!」
いきりたつ月弧、すがりつく雀女に廊下から廊下から声がかかる。
「こらこら、二人とも。なにをしているのかな?」
青い髪の少女と共に、制服のポケットにひよこの幽霊を入れた夏雪が立っていた。




