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ぺし、ぺし。ぺしっ。……ぱっちん!
「こら、そろそろ目を覚まさぬとお次はグーで殴るぞ」
「……、うう……?」
「よし、気がついたな」
大きな金色の目に覗き込まれていた。
「わあ?! あ、あいきゃんと、すぴーくっ」
「む? わらわは生粋の豊葦原の生まれ。言葉の心配は要らぬぞ。そなた、客か? 行き倒れか?」
わたしはまじまじと、黒い鳥居を背に堂々とした威風で立つ着物姿の女性を見つめた。
くっきりした目元の少し吊り上がった凄みのある金の目、不思議な光沢のある灰黒の髪はきっちり結い上げられて椿のかんざしが挿してある。
赤い唇が口を開くと牙のような歯が見える。
おしゃれにしては鋭利で長すぎる爪。
誰?! ここ、どこ?! 寒いし! 雪っ、雪が積もってる?! 雪国?! しかも、自分、普通に制服しか着てない、凍えるッッ!!
「──その様を見るに迷子だな」
「こ、こここ、ここどこですか?!」
「宿だ。葛籠の宿。わらわはそこの守り神を務めておる月弧じゃ」
宿?! 神社じゃなくて? ていうか、さらっと言われたけど守り神って、神様??
「そなた、名前と種族は?」
「せ、仙桃果 雀女、です。えっと、ヒト、です」
神様に対してこんな返答でいいんだろうか、混乱で頭のなかがぐるんぐるんする。
「ふむ。お立ち、雀女。とりあえず中で甘酒でも振る舞おう」
「あ、あの、ここってどこだか、わたし、さ、さっぱりわけが」
「そなたが只人なら、こちらの方が仔細を心得ておる。取って食ったりはしないから安心おし。ここの宿の主人は人間だからな──おや、噂をすれば」
ざくざくと雪を踏みしめる音がする。
「月弧、お客様?」
「迷い人じゃ。今拾った。よい時に戻ったな、夏雪」
天女がいた。




