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深更。
雀女は布団の中でぐすぐす泣いていた。
──まだ戻りたくない。
元の世界に帰れることに安心したのも本当だ。
でも、自分が選んだ選択が待っている世界に再び直面することが、まだ怖くてたまらない。
後悔しないなんて、そんな自信はない。
異世界というのは度が過ぎていたとしても、そこから逃げ出せたこと、猶予が与えられたことを喜んでいた自分も心の底にいたのだ。
でもここに残ってもきっと迷惑だ。
夏雪君のためにも月弧さんのためにも、何の役にも立っていない。
それに二人とも喜んでくれた。
月弧さんが近距離OKを出した宿のお客さんも頭を撫でてくれたり、干菓子をくれたりした。
みんなが優しいのに、自分だけがみっともなくて情けなくて、もっとちゃんと応えられる自分だったら良かったのに。
きれぎれにまた歌声が聞こえてくる。
夏雪君のお母さん……。
わがままなんて、言えない。だっていきなり現れた自分を置いてくれただけでももう十分に迷惑をかけてしまったのだもの。
でも、せめて自分にできることがあったら良かったのに。
夏雪君のためになること。
やっぱり、わたしなんか──、ふと宙に浮いた感覚がして、次には吊り下げられて浮いていた。
「ふえっ?!」
『落つっど、娘ッ子』
ぐいーんと持ち上げられ、それがかなりの高さに及んだため、飛んでいるような感覚に陥る。
彼女を摘まんでいたものの鼻先まで持ち上げられる。
『夢ン中は注意して歩かにゃ、深ぇ場所がそこらにあるでよ』
鼻先にぶら下げられて、風がとどろいているとばかり思っていたのが言葉だと知る。
爆竹を仕掛けたり、はたきで叩いたり、めちゃくちゃしてもなお平和だった寝顔に見覚えがある。
──〈渡し風の間〉のだいだら坊だった。
明朝早く、雀女は〈渡し風の間〉で金塊に埋もれて発見された。




