愛でてる場合じゃないPart2
今回はボキの考えた最強の猫娘を出現させました。悔いはないです。なんとかメインヒロインの一員にできるように画策します。
「い、いーくん……その子は誰なのかな?また別の女の子を口説いてるのかな?」
「ご主人様…流石に外でそういうことは……」
「お、お盛んっすねっ!」
彼らの視線の先には、褐色の少女に覆い被さり彼女の体を弄ってるイランの姿があった。
「ち、ちがう!この子はみゃるちゃんで…ッ!みゃるちゃんが人の姿で、……人がぷっしーているでキャストをしてて….?」
「ぅ"る"る"る"…なにやってるの〜?もっと撫でてよぱぱぁ〜」
褐色の少女は彼の焦燥など無視して自由気ままに自分の望みを要求する。
イランの腕へと身を摺り寄せ、実に気持ちよさそうに目を細めている。その様子はまさに甘えているといったところだ。
よく見るとその子には猫の耳と尻尾が生えていた。
「いーくん?パパってどういうことかな?」
「……イラン、様…」
「な、なんか修羅場っぽいから俺は先に行っとくねっ!」
(なぜ……こんなことに……ッ?!)
理解は追いついていない。だが違和感は数日前から確かにあった–––––– • • •
数日ほど遡る。
それはイランが珍しく1人で廊下を歩いている時のこと。
前から褐色の少女が歩いてくる。
通り際にすっとイランへと体を寄せ、その黒い尾をイランの足に巻き付ける。
『ぷっしーている』で何回も味わった至福の感触だ。
「ぱぱ〜お疲れ〜」
「あ、あぁ、みゃるちゃん。また店を飛び出したの?あまりお店の人に心配かけたらダメだよ?」
「ん〜わかった〜」
簡単な会話を交わしてその子は去っていった。
違和感。
(………ん?なんかおかしくなかったか?今。いや、みゃるちゃんが学園内にいるわけないし……喋るわけもない……げ、幻聴か?)
何回も味わった間違えるわけもない『みゃる』の尾の感触。強さも巻き付け方も、完璧に記憶しているイランは間違えるわけない。
故に自然と会話をしてしまっていたが、明らかにおかしいことに気づく。だがその答えがわからない。
また、魔術の実践授業を受けている時……
休憩のため地面へ腰を下ろしていると、背中から振動が伝わってくる。
「ん"ぅ"う"る"る"る"る"」
「みゃ、みゃるちゃん?今汗臭いから離れた方が……」
「ぅ"る"る"、なんで?いい匂いだよ?」
「そ、そう?」
「……もう行くね」
「あ、あぁ」
(相変わらず気まぐれだ……だがそこが良いっ!……あれ?今誰と喋ってた?)
またある時では……
あの日から何かとイランの部屋に押し入りってるファムナーム。その日はイランの左腕の整流という体で、コアラの様に体にへばりついついた。
「……んぎゅ」
「お前、最近どうした…?」
「……うわがき」
「何を上書きしているんだ?」
「……におい」
「俺、匂うか?」
ファムナームの言動をイマイチ理解できていないイランは何故か勝手に傷付いており、少ししょんぼりとした顔をしている。
その時に彼女はまた現れた。
「なんで?良い匂いだと思うけど?」
「みゃるちゃんはそう思ってくれるのかい?」
「……うん、良い匂い」
「ファムナもか……よかったよ、変な匂いをしてなくて」
「……今の、誰?」
その時にはもう謎の声の主の姿はなかった。
「……え、みゃるちゃんじゃ…いや、猫は喋らんな…?誰だったんだ?」
「……?…っ!、今の匂い…うわがきしなきゃ…」
「…おわっ?!」
そしてまたファムナームがイランへとへばりつきだすのだった。
• • • ––––––そして、その日の朝。
いつも通りネプトとクレアと登校していると、見慣れた姿を見つけたイラン。
『少し用があるから先に向かっておいてくれ』と2人と別れ、その影を追う。
「なぁ〜お」
「みゃるちゃん。また抜け出したのかい?お店の人が心配するよ?」
そこには黒猫の姿。猫カフェ『ぷっしーている』でキャストをしている黒猫『みゃる』だ。
「んなぁ」
「あはは、かわいいね。ここでも甘えてくれるのかい?」
イランの手にいつものように擦り寄り頭や頬をグイグイと押し付けてくる。
「よしよし、ここかな?ここが良いのか?」
「ん"る"る"る"る"る"る"」
「よしよし」
「ん〜そこそこ。ん"ぉ"お"、気"持"ち"い"い"」
イランは気付いていない。その猫が人の姿に変わっている事も、後ろから危機が迫っている事も。
「ははは、お気に召してもらえてよかったよ」
「い、いーくん?何をしているのかな?」
「ご主人様…?」
「………ッ?!な、なんだこれは?!誰だお前はっ?!」
**
「えっと……『ミャルルガウル・ケトシー』さん…ですか?」
「そー」
昼休み、食堂に複数あるうちの一つを貸し切り、イラン一向はそこで食事をとっていた。。
褐色の彼女の話を聞く為に。
因みにネプトは嫌な予感がしたためプレムを理由にこの場から逃げている
「獣人さん…なんだね。……珍しい」
「まぁね〜」
「……んっ、」
その褐色の娘は、大きめのソファに座理食事をとっているイランの膝の上で寝そべり、猫で言うところの『へそ天』に近い状態で質問に答えている。まさに自由気ままと言ったところだ。
『獣人』
それは人間……いや、あらゆる種族にとって目にする事自体珍しい人種だ。
『獣神国ムルルノト』
ミャルルガウルの生まれ故郷。
禁忌人の一人である九つの尾を持つ狐の獣人『クゥ・フゥ』が統治している国。
だが統治と言ってもそれが直接国を運営している訳ではない。
その国ではそれを『獣神』として崇拝しているのだ。
『クゥ・フゥ』は国民の前にも滅多に姿を見せない。声すら発する事も稀だ。
『禁忌人』その存在は普通の人種にとって大きすぎる。
故に、稀にしかその存在を顕にしない。
数年に一回、建国祭などの日に一言、彼らに向けて放つのみ。そしてその声に国民達は狂ったように熱狂する。
それはその国の象徴として君臨している。
その国では入国も出国も難しく、厳しい審査や検問の末やっと行き来できる。
可能なのは一部の王族や位の高い者のみ。
故に獣人を見る機会など早々ありはしないのだ。
「ファムナもそうだが……何故わざわざ人間の学園に…」
「…んっ、んっ!」
「ん〜……あそこ怠いんだよね〜。発情期とかを勝手に起こされるし、あれの声聞いたら頭ん中ぐちゃぐちゃになるし……逃げてきちゃった」
「……んーっ!」
「どしたのー?小さな妖精さん?」
ファムナームは褐色の少女の裾を掴みイランの膝の上から下ろそうと引っ張り続けていた。
「……指定席」
「……ぱぱぁ?ぼく以外のメスを膝にのせてたの?浮気かなぁ?」
「い、いや!そうじゃなくて……」
「いーくん、いつもは初対面の人には厳しい態度なのに……随分と…心を許してるんだねぇ?」
ここでイランは我に返る。
(そうだ、確かにそうだ…ッ!こんな情けのない姿を晒していてはオルギアス家の名が泣く。たとえ相手があの『みゃる』ちゃんだとしても!)
「ミャルルガウル、ここは学園内だ。君もここの生徒なら節度を持った振る舞いを––––
「もう触らせてあげないよ?」
「…………」
「いーくん?」
「…っ!だが…ッ!」
「猫の姿にもなってあげない」
「………お許し下さい」
「それでよろしい」
「いーくん……」
イランを見るルノの目は憐れみだった。
にゃでナーであるイランが猫(?)に逆らえるはずもなかった。彼にとって猫とは崇拝の対象なのだ。神の意向に反する言動など出来るはずもなかった。
「ということで、ファムナ…今日はこの子に譲ってやってくれないか?」
そもそも何故自分の膝の上に座ることが習慣化されているかはさておき、このままでは自分に心を許す唯一の猫(?)に嫌われてしまうと焦ったイラン、今回ばかりはファムナームに諦めてもらうことにした。
「責任」
「………」
「とるって言った」
もちろんイランが言った『責任』の内容などわかっていないが、ファムナームの研ぎ澄まされた勘がここで働いてしまい、彼女にとっての最適解を導き出してしまう。
イランにとっての最悪解でもある。
イランの身体中から嫌な汗が一斉に湧き出す。
だがこれだけではない。イランが無自覚に振り撒いた問題の種が次々と芽をだしてゆく。
「イラン!ここにいたのね!……その女誰よ」
「……う、ウルカ」
何故こう、いつもいつもタイミングが悪いのか。どんどんイランの肩身が狭くなる。
「ふぅ〜〜〜ん。へぇ〜〜〜」
ウルカが俯き始めた。視線をこちらへチラチラ向けている。
「…ッ?!」
(まずい!またあれが来る!なんとかしなければ!)
そう思うもののもう既に詰んでいる。
「あんた……責任取るって言ったじゃん…あれ、嘘なの?」
「あ、いや……それは……」
「あたしのこと……すてるの…?」
逆にウルカの件はイランが内容を把握していない。だがこの態度を見るになんとなく内容は想像がつく。少なくとも軽いものではない。
「…い、いやっ!違うんだ!」
「ご主人様……クレアのそばにずっといてくれるって……」
「…ッ?!」
従僕といえど、この状況を黙って見ていられるほど彼女は大人でもければその気持ちも小さくない。
本来は主人の相手に口を出せる立場ではないがつい体が動いてしまう。
そんな彼らの蚊帳の外でイランの手を握りおもちゃのように戯れ付くミャルルガウル。
そんな光景を見てルノは……
(え?え?みんなそんなに進んでるの?もしかして私が1番、遅れてる……?)
焦りに焦っていた。
いつもなら嫉妬に呑まれ、その感情を無自覚に空気でイランに伝えているが、ここまで来るともうそんなレベルじゃない。
ライバル達はそれぞれ何やら彼と話を進めているようだ。
初めは自分だけだったのにいつの間にか魅力的な女性に囲まれ、イランの心をあちらこちらへ綱引きしている。
自分から彼が遠ざかってゆく感覚に耐えられない。
「う、うぅぅ。い、いーくんはわたしのぉおおおっ!」
彼の周りは今日も賑やかだった。
拝読ありがとうございます。
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