逃避行編 3 鎧の大男
タイトルが確定しました!
薪割り場へと向かったロムとシムだったが、ロムの提案で2人は今、村から少し離れたとある川辺にいる。
林の中にポツンと存在する小川。川幅は数メートル程度、水はささやくように流れている。
この小川はたくさんの木々に囲まれ、周辺には緑が生い茂っている。
かつて、村の近くにはこの小川一本しかなく、飲み水の確保や洗濯、作物の耕作はこの川で成り立っていた。
ロムは度々、この川辺に訪れる。
「お兄ちゃんはホントにこの場所が好きだね~。僕にはどこがいいのかさっぱりだよ。このふさふさした床は気に入ってるけど」
シムは両手を地面について座りながら草原の上に寝そべるロムに言い捨てる。
ロムはシムの言うことなどおかまいなしに無視する。
しばらくして、シムがロムにあることを尋ねる。
「お兄ちゃんはこの場所をどう思ってるの?」
ロムはまぶたを空に向け小さく答える。
「別に、どうも思ってない。好きでも嫌いでもどっちでもない。でも・・・この場所へ来ると心が落ち着くんだ。どうしてかはわからないが・・・昔によく来てたのかもな」
「へえ~そうなんだー」
真剣な表情で答えていたロムの答えをシムは興味ないけど暇だから聞いただけと言わんばかりの相槌をする。
再び長い沈黙が続く。
シムが立ち上がり、話し始める。
「ねぇお兄ちゃんそろそろ薪割り場に行こうよ。お兄ちゃんからしたら安らぎの場かもしれないけど、僕からしたら退屈すぎるよ。今日はアクティブに動きたい気分なんだよね。だから、今日の薪割りは魔術を使わずに斧を使ってやろうと思ってるんだ。やり方教えてよ」
シムは斧で薪割りをするジェスチャーをしながら話す
中々起きないロムにしびれを切らしたシムは、ロムの体を揺らしたり、蹴ったりするが、依然ロムは無反応。
「もしかしてお兄ちゃん・・・・寝てるの?・・・・・いやいやさすがに寝顔が険しすぎるって。ねぇー起きてよお兄ちゃん!」
シムがロムを立たせる方法を考えていると、1人の少女が走って向かってきていることに気づき、目を細めて少女が誰なのかをじっくりと見る。
「ん、あれは・・・リウさん・・・・?」
リウは瞬く間に2人がいるもとへたどり着く。
「ロムくん、どうなってるの?」
リウは焦燥感に駆られているような表情でロムに問う。
しかし、ロムは変わらず無反応、険しい表情のまま。
「お兄ちゃんさっきからずっとこうなんですよ。何してもうんともすんともいわなくて」
「な、なるほど・・・」
リウとシムは困惑の表情を浮かべ、顔を合わせる。
リウは再び張りのある声でロムに声を掛ける。
「ねぇロム君、何かあるの?何か言ってくれないと私はわからな・・・」
リウが言い終わる寸前にロムの赤黒い瞳が強く見開く。
ロムは即座に立ち上がり、川の向こう側を見て、臨戦態勢に入る。
その直後、地響きが起こり、しばらくして草木を押し分ける音も聞こえ始める。
音は次第に大きくなり、周辺の空気が圧迫感を増す。
川の向こう側にある草むらが揺れ、一つの巨大な影がかすかに
そして、銀色に輝く鎧を全身に纏い、鉄塊の如し大剣を腰に身に付け、背丈は並の人間の2倍以上、鎧で実際には見えないが、周辺の木々と同じような太さの四肢を持つであろう大男が勢いよく姿を現す。
顔の鎧から漏れる呼吸音は、風のような低いうなり声だった。
「見つけたーーーーー!!!」
大男はロムに気づいた途端、叫び声をあげ、川へ向かって高く跳び上がり、空中で大剣を両手で握る。
大剣が陽光を反射させ、一直線に3人のもとへ―――――
逃避行編 第3話どうでしたでしょうか?
状況をうまく伝えることがとても難しい・・・
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