逃避行編 2 信号
2話目書きました!
ヨツバ村学舎。
木造の小さな学び舎の窓から、朝の日差しが斜めに差し込んでいた。
一室だけの教室には、年齢も背丈も全くそろわない十五人ほどの生徒たちが並んでいる。
ヨツバ村には戦争による不景気で家を失いこの村へ移住することを余儀なくされた者たちがいた。
その中には小さな子供もおり、ゼロに等しかった子供が増え、訳はどうであれ
元々いた村人は大喜びだった。
そこで村長が子供たちに教育の機会を与えるべく創設した。
ヨツバ村学舎にはロムも在籍している。
教職員は移民である男性が務めている。
今日は月に1度あるテストの日らしく、黒板には学力試験と大きく書かれていた。
「はーいみんな静かにー、試験用紙を配るからもうしゃべらないことー」
二十代後半程度の眼鏡を掛けた若い教師が発したこの声を合図に、ざわついていた教室が静まり返る。
試験用紙を1人ずつ配ろうとした矢先、あることに気付く。
「ん・・・ロム君がいませんね」
教室にいる全員が最後列中央にあるロムの席を見る。
「たしかに、今日はテストの日なのに見てないな」
最前列に座る少年がロムの席を見ながら言う。
「参ったなぁ、これじゃ始められそうにないです」
困り顔の若教師はそう言いこぼす。
「別に始めちゃえばいいじゃないですか。授業の日には1度も来たことないし」
最前列に座る少女がほとんどの子供が思っていることを若教師に向けて言い放つ。
「そうは言っても、村長からテストだけは受けさせるように言われているんですよ。今まではちゃんと来ていたし、忘れてるということはないでしょう・・・・。体調不良ということも・・・・」
しばらく沈黙が続く。
「誰か様子を見に行ってくれませんか?申し訳ないですが彼の家を知らなくて・・・」
ざわつかせながら子供たちは互いの顔を見合う。
その空気を一変させるかのように最後列窓際に座る一人の少女が手を挙げる。
「でしたら、私が行きます。私なら家の場所を知っているし、ロム君をすぐに連れてこれると思います。
連れてくる間は自主学習でもさせておいてください。では失礼します。」
窓からの光に照らされながら若教師に告げると、返事をする暇を与えずにさっそうと学舎から出ていく。
青く長い髪をなびかせ、片耳にはめたイアリングを輝かせる彼女の名はリウ。学舎の中でもロムに次ぐ年長者であり、学舎の子供たちからは「リウ姉」という愛称で慕われており、若教師からも一定の信頼を得ている。
ロムとは小さい頃からの馴染みでよく遊んでいた過去を持つ。
リウが教室を出てから少年と少女の間でとある会話が生まれた。
「ねぇねぇ、リウ姉ってロム兄のこと好きだったりするのかな・・・?」
「嘘だろ!テストの日以外は来ないような奴だぜ」
「でもさ、それでも点数はいつも満点じゃん。ロム兄みたいなミステリアス天才イケメンを好きになっちゃう女子って結構いると思うよ。それにあの二人、同じイアリングを片耳に付けてるもん。もう付き合ってても不思議じゃないよ・・・」
「先生はどう思う?」
少年が若教師に質問するが少女が遮る。
「先生にこういう話は聞かない方がいいって、独身なんだから」
「聞こえてますよ失礼だな・・・。まぁ、先生からそういったことはあまり言えませんが・・・・・・・そうですね、あり得なくはないかと・・・」
そう呟く若教師の眼鏡は怪しく光を反射していた。
自然な会話を書くのってムズカシイ・・・