爆裂姐御、アークに君臨!
カグヤの爆裂魔法は、まさに一発逆転の切り札だった。あの日の爆発以来、マフィアの二大派閥は壊滅状態に陥った。残された者たちは、自分たちのボスが瞬く間に吹き飛ばされた光景を目の当たりにし、カグヤの圧倒的な力にひれ伏した。彼らは、これまでの抗争を忘れ、こぞってカグヤの元へと集まってきた。
「姐御、これからどうしましょうか!」
「姐御!俺たちをどうか使ってください!」
血気盛んだったマフィアの男たちが、今や子犬のようにカグヤの周りに群がる。カグヤは、彼らの様子を冷めた目で見つめながら、ニヤリと笑った。
「そうだな……。まずは、この街のゴミを掃除することから始めるか」
彼女の言葉は、裏通りにいる全員に響き渡った。彼女は、力ずくで、しかし明確な意思を持って、このアーク・ディストピアの裏通りを支配下に置いた。街の復旧作業の中で、この世界独特の建築技術や素材が使われる様子が垣間見え、倒壊した建物の基礎部分には、見たことのない奇妙な合金が使われていた。都市によって異なる形で、そういった技術が発達しているのだろう。人々は疲弊しながらも、カグヤの指示に従い、瓦礫を片付け、崩れた壁を修復していく。
カグヤは、そのカリスマ性で、瞬く間に彼らの心を掴んだ。彼女は、時に厳しく、時に優しく、そして常にユーモアを交えながら、彼らを統率した。彼女の言葉は、まるで魔法のように、彼らの間にあった対立を溶かし、新たな連帯感を生み出していった。
「姐御」「姉ちゃん」「爆姉」──。
彼女は、様々な呼び名で呼ばれるようになった。特に「爆姉」という呼び名は、彼女の代名詞となり、街の誰もがその名を口にするようになった。カグヤは、マフィアの抗争で疲弊していた街に、新たな風を吹き込んだのだ。人々が魔物によってどれだけ苦しめられているか、その具体的な被害の様子が、彼らの会話や荒廃した街の情景から痛いほど伝わってきた。カグヤは、彼らの苦しみを目の当たりにし、この街を変えたいという思いを強くした。
ある日の夜、裏通りの酒場で、カグヤは子分たちに囲まれていた。埃っぽい土の匂いと、安酒の匂いが混じり合う独特の空間で、彼らはカグヤを崇めるように見つめている。
「姐御、何飲みます?」
一人の子分が、遠慮がちに尋ねた。カグヤは、不敵な笑みを浮かべ、カウンターに肘をついた。
「火薬酒ダブルで。チェイサーは爆竹。」
その言葉に、酒場にいた全員が固まる。
「え、爆竹ですか!?」
子分が慌てて聞き返すと、カグヤは面白そうに笑った。
「ああ、爆竹だ。口の中で弾ける刺激が、アタシの魂を震わせるんだよ。爆発は芸術だからな」
子分たちは顔を見合わせ、苦笑いするしかなかった。常識破りのカグヤの言動は、もはや彼らにとって日常風景となっていた。彼女のユニークなセリフ回しは、周囲の状況に独特のコミカルな言い回しや、畳みかけるような勢いを与えていた。カグヤは、グラスの中の火薬酒をゆっくりと傾けながら、このアーク・ディストピアでの自分の未来に思いを馳せていた。