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その企みの結果は

来ていただいてありがとうございます!




生徒達のいなくなった講堂の中はしんと静まり返っている。


私達はいつの間にか兵士に取り囲まれていて、イブさんも念のため学園に一番近い治療院へ運ばれていった。セラフィーナ様も離宮へ帰られるかと思ったけど、何故か残って成り行きを見守ってる。


「残念だよ。ジェフ、グラントリー。君達がこんな事を企むなんて」

エルドレット殿下がやや青ざめた顔で跪かされた二人を見下ろしてる。


「何のことでしょう、殿下」

「俺達にはこんな扱いをされる理由が無い」


えっと、つまり今回の事はこの二人が仕組んだってこと?私は二人と対しているエルドレット殿下を見た。


「ジェフ・コルケット、君が魔法王国からあの黒い小瓶を手に入れていたことはもう調べがついているよ」

シル様が静かな声でジェフに告げた。え?シル様も知ってたの?私は隣にいるシル様を見上げた。

「ごめんね、リノー。実はあの黒い小瓶の事をずっと調べていたんだ。コルケット伯爵家は魔法王国の裏町の常連だったみたいでね。店主に穏便に尋ねたら快く協力してくれて、たくさん話を聞かせて貰ったよ」


「穏便に……って、快く……って……こわぁ……」

いつの間にかそばに来ていたアレックスが腕をさすりながら呟いた。っていうか貴方まだ残ってたのね。リオン様も。


「つまり彼らの計画は、エリノーラ嬢が王太后様に毒を盛ったと見せかけ、エリノーラ嬢を捕まえさせ排除しようという事か。そしてついでに王太后様をローザリア伯爵令嬢に救わせ、彼女の名誉を回復する。……何とも杜撰だな」

リオン様が呆れたように彼らを見下ろした。


「でもアイザックス伯爵令嬢が先に食べてあの騒ぎってことか。あいつ真面目だもんなぁ……」

アレックスはイブさんと知り合いみたい。真面目な人だから、私が焼いたお菓子を先に味見(毒見)してくれたんだ。王太后様に変なものを食べさせるわけにはいかないものね。……自分で言っててちょっと傷つく……。


「あの黒い小瓶の中身はかなりの猛毒だ。てっきりリノーに使うつもりだと思ってたけど違ったんだね。しかし……リノーがいたから良かったものの、君達はローザリア伯爵令嬢の力を過信し過ぎだ。アイザックス伯爵令嬢や王太后様が亡くなっていたらどうするつもりだった?」

シル様は厳しい表情でジェフに問いかけた。


あの時アリスは治癒魔法をかけていたけど、イブさんの顔色はどんどん悪くなっていってとても間に合いそうに無かった。解毒薬を間違って持って来てなかったらと思うとゾッとした。


「……かった」

「何だって?」

ジェフの呟きをエルドレット殿下が聞き返した。

「アリスさえ王妃になれればあとは誰がどうなろうとどうでもいい!」

それって、イブさんや他の誰かが毒のかかったお菓子を食べて亡くなっても良かったってこと?王太后様も?

「アリスの望みは僕が叶えるって決めたんだ……!」

ジェフは私を憎らしそうに見つめた。アリスの望みって王妃様になることなの?

「せっかく邪魔なお前を排除して、アリスをエルドレット殿下の婚約者にしたのに!」

シル様が庇うように私の前に移動した。


「幻影魔法」

シル様の言葉にジェフがビクっと体を震わせた。

「使えるものは限られるという稀有な魔法だ。君もその使い手なんだね。その魔法を使ってリノーを陥れた」

「あ、ではローザリア伯爵令嬢が嫌がらせをされた時、私の後ろ姿を見たっていうのは……」

ジェフの魔法だったってこと?


「すまない。エリノーラ。あの時は目撃者が多数いたから君を犯人だと決めつけてしまったんだ。もっとよく調べるべきだったよ」

エルドレット殿下が苦笑する。いや全然笑い事じゃないんですが……。死にかけた私にとってはアナタも同罪ですよ。



「グラントリー・スパーク。君がエリノーラのバスケットに黒い小瓶を入れたこともわかっている」

エルドレット殿下はグラントリーに向き合った。

「どうして……。あの時は誰もいなかったはずだ……」

「語るに落ちた、というつもりは無いよ。君達は監視されていたんだ」

「監視……だと?」


「詳しくは言えないけれど、ある魔法を使って学園中を見張ってもらっていたんだ。怪しい動きがあれば逐一報告してもらうようにしてある。またリノーに冤罪をかけられてはたまらないからね」

シル様がジェフを睨みつけた。

「ちなみにリノーの冤罪を晴らしたのも同じ魔法だよ。残念だったね」

シル様の言葉と共に気温が下がっていく気がする……。寒い……。私は肩を震わせた。

「ああ、リノー、ごめん」

シル様は上着を脱ぐと私に着せかけてくれた。シル様の体温が残っててあったかい……。ドレスは肩が出てるデザインが多いからとても冷えやすい。

「ありがとうございます、シル様」

私はシル様に笑いかけた。シル様も微笑み返してくれてる。シル様が私を守るためにずっと動いてくれていたんだと知って心が温かくなった。


「何を笑ってやがる……アストリア!」

「え?」

グラントリーが私を睨んでる。

「お前は一体何なんだ!なんであの森に置き去りにされて生きてやがる!?」

グラントリーの腕や肩を押さえてる兵士達が驚愕の表情を浮かべ、他の兵士が走り寄って来たその時、グラントリーが兵士を振り払い、私の方へ突進してきた。

「せめてお前だけはっ……!」


ヒュッ


風を切る音


黒く鋭い何かが私の方へ飛んできて、私の顔の前に影が差して、



シル様が倒れた。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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