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おかしな森の悪役令嬢  作者: ゆきあさ


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21/75

夏休み お昼ご飯とお茶会

来ていただいてありがとうございます!



「いやぁ、昔適当に書いた魔法書を理解できる天才が俺以外にもいたなんてなぁ」

「ではあなたが魔法王国の伝説の魔法使い、エルマー・ヘリオドール様なのですか?!こんなにお若い方だったとは。お会いできて光栄です!」

シル様とエルマー師匠が握手してる。二人で魔法談義を始めたから、私は台所に立った。


「もう大丈夫なのか?ノーラ」

ヴァイスが心配してくれたけど、もう魔力も体力も回復してる。今世の私は丈夫で嬉しい。

「うん、もう平気。そろそろお昼ご飯にしよっか」

「ああ、そうだな。」

「それじゃあ、焼いておいたパンでサンドイッチでも作ろう」

「朝煮込んだスープもあるからそれも温めよう」

「じゃあ、一緒にお湯を沸かして香茶も淹れよう」

ヴァイスと二人で昼食の支度を始めた。


「ヴァイス、エルマー師匠って有名人なんだね」

スライスしたパンにハムやハーブを挟みながらヴァイスに尋ねる。ヴァイスはスープをかき混ぜながら温め、洗っておいた木の実を切って盛り付けてる。ヴァイスの盛り付けってカフェみたいで綺麗なんだよね。私はその辺のセンスはちょっとアレだから羨ましい……。

「ああ、お師匠様は我が国でもかなり高名な魔法使いだ。ただ、神出鬼没であまりひとところに留まらないから、会える人は限られている。年齢も姿も変えているからお師匠様がどんな人なのか知っている人も少ない」

おお!レアキャラってこと?もしかしてこのゲームの隠しキャラだったりして……。今度アレックスに聞いてみよう。そういえばまた何か思い出してないかな?


サンドイッチと、野菜のスープ、木の実と香茶も並べてお昼ご飯をみんなで食べた。椅子が足りないから、瓶の入ってた木箱にクッションをのせて椅子替わりにした。

「リノーは凄いね。料理もできるんだ」

「シル様、料理といっても簡単な物ばかりですわ。それにヴァイスが一緒に作ってくれています」

「とても美味しいよ。ヴァイスさんもありがとう。まさかリノーの手料理が食べられるなんて嬉しいな。それにエルマー殿にお聞きしたんだけど、回復薬もリノーが作ってるんだってね」

「ええ、エルマー師匠に占いのことをお聞きしたので。聖なる乙女様方のようには病気は治せませんが、少しでも役に立てればと思いまして」

「そうか。こんなに深い青い色の回復薬は初めて見たよ」

本棚に置ききれずに窓辺に置いた回復薬の瓶が床に青い影を作っていた。



「美味かった。ご馳走様。さあ、俺は魔法王国に戻るよ」

食事が終わるとエルマー師匠が立ち上がった。

「お師匠様、お帰りですか?」

「ああ。じゃあ、この回復薬は預かっていく。小分け用の小瓶も手配しておく。それじゃあ、後は頼んだぞ、ヴァイス」

「はい。お任せを」

エルマー師匠はドアから出て行かず、その場から消えた。これが超時空跳躍魔法なんだ。転移門と違って、何も設置しなくても思い浮かべた所へ移動できるんだって。必要なのはイメージ力ってこと?私は妙に感心してしまった。私にもできるかな。


「リノーは午後からも回復薬を作るの?」

「午後は回復薬じゃなくてお菓子屋さんへ持っていくお菓子を焼こうと思ってるんです」

みんなで食後の後片付けをしながら、シル様に聞かれたからこれからの予定を伝えた。シル様って何をしにここへ来たんだろう?

「そうなんだ。じゃあ、僕も手伝うよ」

「そんな!シル様にお手伝いいただくわけにはいきません」

シル様って忙しいんじゃないの?確か王宮でお仕事があるって聞いてたけど。

「服が汚れてしまう可能性がありますよ」

ヴァイスも心配そうにシル様の高価な服を見てる。

「平気だよ。僕も料理とか興味があったんだ」

シル様はそう言って上着を脱いで笑った。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆







夏の王宮の庭園

木陰のお茶会


「避暑?」

「はい!王家の保養地があるのでしょう?そこへ連れて行っていただきたいですわ!山や湖、とても美しい景色が広がっているってお聞きしてます。ボートにも載せていただきたいですわ」

「アリス……状況がわかっているのかい?あの話については説明してあるだろう?」

「ええ!それはわかっています!でも聖なる乙女にも休息は必要でしょう?」

「そうですよ。殿下。アリスは毎日頑張っていますよ」

侯爵令息のユーインはアリスを援護し、周りの皆も頷いている。


「毎日、ね」

テーブルの上の回復薬を見た。今日できた回復薬は酒瓶ほどの大きさの瓶二本分。やや薄緑色の色のついた回復薬を持ってアリスが王宮を訪ねてきたのだった。

「大丈夫ですわ。昨年のように私達が病気の方々を治療して参りますもの。回復薬のストックはそれほど必要になるとは思えませんわ」

アリスが無邪気な笑顔を見せるとユーイン、クリストファ、ジェフ、グラントリーもその笑顔に見惚れるように笑った。みんな昨年の病では重症になっておりその際に救ってくれたアリスに心酔しているのだった。


エルドレット王子もアリスに救われた一人だ。そのアリスにエリノーラが嫌がらせをしていたと聞き、どうしても自分の婚約者を許せなかったのだ。だからこそ厳しい処罰をしたのだが、その判断が間違っていたと王弟に指摘され自分のことが信じられなくなっていた。


(このままアリスの言うことを受け入れ続けていても大丈夫なのだろうか)


「確か王家の保養地はアゲート地方にほど近かったですわよね。そうだ!最近仲良くなったサンドライト家のアレックス様もお呼びしようかしら……」

アリスはずっとずっと無邪気に笑い続けている。



エルドレットは不安に思いつつも、従者に保養地への訪問を告げるのだった。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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