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おかしな森の悪役令嬢  作者: ゆきあさ


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青い回復薬

来ていただいてありがとうございます!




「じゃあ、始めようかノーラ」

「はい。お願いします!ヴァイス師匠」

「師匠は少し恥ずかしいな。本当に今まで通りでいいから。じゃあ、あの青い実を採ってこよう」

「回復薬にあの実を使うの?」

「ああ」

前に作った時は薬草だけだったのに。私が不思議に思っていると、ヴァイスが説明をしてくれた。

「あれはノーラの魔力の結晶みたいなものだから、使うと回復薬がレベルアップする。そのまま食べても滋養強壮に良い食べ物になる」

「へえ……!エルマー師匠の研究してた植物って凄いんだね!」

「お師匠様がいた頃は金色の実を付けていたな」

あ、目の色と同じだ。

「じゃあ、ヴァイスのは?水色?」

「いや。私の実は生らない。私の魔力は二人とは質が違うそうだ。二人はそもそもの魔力が大きくて放出し続けているタイプ。私のは体内で練り上げて大きくしてから放出するタイプ、らしい」

「そうなんだ。ヴァイスの実も見てみたかったな。きっとヴァイスの目みたいに綺麗な水色だね」

「さあ、とりあえずこのくらいでいいだろう。小屋へ戻るぞ」

巨峰の一粒くらいの大きさの青い木の実でいっぱいになった小さなかごを持って小屋へ帰った。



エルマー師匠に頼まれたこと。それは回復薬をたくさん作ること。


エルマー師匠が今滞在している魔法王国では占いも盛んで、これから来年にかけてかなり広範囲で今までにない病が流行ると予言があった。それで今対策を練る為に動いていて、魔の森へ来たのも育てていた木の実が何かに使えないかって考えたから。でもここには私がいて色々作ってた。ちょうどいいから私にそのまま木の実の研究の続行と回復薬作りをして欲しいんだって。サンプルとして私が作ったお菓子や薬、育った木の実を持って帰って行った。


やっぱり、続編のゲームの設定通りになっちゃうんだ……。私は暗い気持ちになった。


「そういえばノーラは何か私に話したいことがあったんじゃないか?」

「うん。あのね、ちょうど私も去年の事を思い出していて……。ほら、去年も疫病が流行ったでしょう?それで孤児院の子達のこととかが気になっちゃって、なにかできないかなって思って相談したかったんだ」

「そうだったか……」


アレックスからの情報からも去年の疫病よりもずっと深刻な症状の病気が流行してしまうことがわかってる。エルマー師匠の聞いた話とリンクしてしまう。私は少しでも犠牲になる人を減らしたいと思った。せめてあの孤児院のような薬を買えないような人達を救いたい。アリスや他の聖なる乙女達のように病気を治すことはできないかもしれないけれど、病気に負けないように体力をつけたりする薬が作れないかってヴァイスに相談しようと思ってた。


「ノーラが以前に作った回復薬の残りを見て、お師匠様はノーラを褒めてたぞ。出来が良いって」

「え?本当?だとしたら嬉しい!みんなに配れば、少しは患者を減らせるかな」

「配っていいのか?無料(タダ)で?」

「当然だよ。そもそも元手がかかってないんだから」

生活の為にお菓子を作って売ってたけど、本当ならこれはズルだよね。せめて非常事態の時の回復薬は無償で配りたい。

「ふふ、そうか……」

おおっ!ヴァイス……笑うと随分柔らかい印象になる。ちょっと女の人っぽい。って女の人だったね。


小屋にあった一番大きな鍋に入れて魔力をかけた薬草達と木の実が深い青色の液体になった。お玉でその上澄みを掬って大きな空き瓶に入れていく。瓶はあらかじめ煮沸消毒済み。いっぱいになったら蓋をして封印の魔法をかけておく。それの繰り返し。

「瓶が足りないな。それに小分け用の小瓶も必要だ。またお師匠様が来た時に相談してみよう」

手伝ってくれてるヴァイスが回復薬でいっぱいになった瓶を見つめて考え込んだ。


「エルマー師匠は凄いんだね、私よりも年下なのに魔法王国で重用されてらっしゃるなんて」

「…………ん?ノーラは誤解してるぞ?お師匠様は私達よりずっと年上だ」

「え?」

あ、そっちのパターンだったんだ。

「もしかして時操りの魔法とかでもう何百年も生きていらっしゃるとかっ?!」

「相変わらず鋭いな。何百年は違うけれど。どうしてわかるんだ?」

あはは。そういう設定のキャラって多かった気がするんだよね。

「じゃあ、エルマー師匠はもうおじいさん?!」

「いや、そこは少し違う。確か今三十代にはなってるはずだ」

「おじさんか……」

「ふっ……それ、お師匠様の前では言うなよ。機嫌が悪くなるから。さあ、今日はこれで十分だろう」


気が付けば大きな瓶五つ分になる回復薬ができていた。綺麗な青い色……。うっすらと光を放つ回復薬を空いている棚に並べた。

「うわっ!外、もう真っ暗になってる!早く寮に戻らなきゃ!」

予習が!復習が!課題が!慌てて走り出そうとして少しふらついた。

「危ないっ」

ヴァイスが受け止めてくれて転ばずにすんだ。

「ありがと、ヴァイス」

「かなり魔力を消費したから疲れてるんだと思う」

そういえばこんなに大量の回復薬をつくったこと、今までになかった。お菓子を焼くときにも魔力を使ってるって前にヴァイスが言ってたけど、回復薬は魔力の消費が大きいみたい。

「毎日こうして回復薬を作っていれば、作れる量が増えてくる。次は同じ量を作って少しずつ増やしていこう。決して無理をしないように」

レベルアップできるんだ。そっか、やればやるほど成果が上がるんだ。私そういうの好き。

「うん。頑張るよ!」

聖なる乙女達はたくさんいるし、日々修行してレベルアップしてるだろう。みんなで頑張ればきっといい結果が付いてくるはず。私もできることを頑張ろうと思った。


ただこの日はちょっと魔力が足りなくて、ヴァイスに転移門を起動してもらって寮の裏庭まで送ってもらった。うーん、力の調節が難しい……。部屋へ帰りつくととりあえず明日期限の課題をこなし、なんとか予習をしてから眠った。翌朝、寝坊せずに登校できた私を誰か褒めて欲しい。






ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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