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大賢者リオールは楽しみたい!  作者: トーヤ


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扱えないのは悔しい〜烈

スキルポイントが使えて自由に欲しいスキルが手に入るようになって、鍛治師としての腕も上がった気になっていた。


優理(ゆうり)のための暗器が、いい出来上がりでやってやった感があったのだが、その後に残念な事が続いている。


この世界にはなかった素材、ミスリルが手に入ったと言うのに、鎚で叩くと鎚が壊れる。


炉に入れても、ほとんど溶けない。柔らかくもならない。


魔力を流しながら叩いて、やっと少しだけ叩けたような気がする。

気のせいかもしれない。

鋼と違い、普段の鍛治が通用しない。

何のカタチにも作り変える事ができない。


義父でもある師匠と、扱い方を考え悩んでいるうちに、息子の理音(りおん)が早々にミスリル剣を作っていた。


錬金鍛治師とは、どんな職業かと思っていた。

鋼の扱いが微妙だったからだ。

しかし、ミスリルとかのファンタジー素材と相性がいいのか。


理音の作ったミスリル剣には、バフもついてるらしい。

もうひとりの息子の理律(りりつ)が絶賛していた。

ミスリル剣を見せてもらったが、見事にちゃんとした剣だった。


鋼ではナイフくらいしか出来なかった理音の作品とは思えないくらいの出来栄えだった。

俺も師匠もミスリルを扱えてないのに、また新しい素材が届いた。

オリハルコンとアダマンタイトだそうだ。

これは、ミスリルよりも硬く、全く手の出しようがない。


師匠も半分諦めモードだ。


でも理音だけが、楽しそうに素材を加工して、どんどん剣や槍、盾に双剣などを生み出している。

使用した灯理(あかり)さん家族に聞いたところ、アダマンタイトの剣や盾で魔物の防御を破壊出来るらしい。

そんなバフがついた武器になってるそうだ。

そういうのを聞いちゃうと羨ましいんだよな。



「師匠、理音にミスリルやオリハルコン、アダマンタイトで鎚を作ってもらうのはダメでしょうか?」

「ちゃんと鍛治も出来ねぇヤツの鎚を使うって言うのか」


あぁ、やっぱり怒るよな。

わかってはいたが、俺はどうしてもミスリルなどを打ってみたい。


「でも、理音は錬金鍛治師です。俺達とは違う鍛治師です。あの子の作ったミスリル剣は見事な出来でした。俺は問題ないと判断します」


師匠は何かを考え込んでから、


「好きにするといい。ただし出来上がった鎚は見せに来い。それが条件だ」

「はい、必ず」



「理音、頼みあるんだが」

「親父が、俺に?」


そんなに意外だろうか?


「俺の鎚を作ってくれないか?ミスリルとオリハルコンとアダマンタイトそれぞれで」

「はっ!?鎚って、だって自分で作ったものしか使わないって言ってたじゃないか」


いや確かに言ったけど。


「ミスリル打とうとしたら鎚のほうが砕けたんだよ」

「えっ!?あのめっちゃなんでも打てそうな鎚が!?」

「そう、ミスリル打つならそれ以上硬い素材の鎚じゃないとダメなんだなって実感した。けどミスリルを打つためのミスリルの鎚を俺は用意できない。なら唯一用意出来るはずの理音に頼むのがベストだろう?」

「俺でいいのか?爺様怒るんじゃないのか?」

「師匠は、出来上がった鎚を見せに来いと言っていた。それが理音に鎚を作らせる条件だって」

「マジか!俺、鎚作った事ないぞ?カタチとかサイズとか重さとか教えてくれ。作ってみる」

「すまんな、頼んだ」

「任せとけ」


ちょっとだけ嬉しそうに見えたのは、たぶん気のせいじゃないと思うんだ。



鎚用のミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの代金の請求は俺のところに回させた。

(さとる)君はいつもくれるというが、それはダメだ。

正当な価格は、実際のところわからないから鋼プラスアルファでお願いしている。

間違いなく足りないんだろうけど、地球にはここにしかない素材だろうから、基準がないんだよ。

申し訳ないとは思う、が、とてもありがたいのも事実なんだよな。


「親父、鎚できたよ。3種類とも」

「早いな」

「俺の錬金鍛治師は、鎚振うわけじゃないからな」

「見せてみろ」


はい、と渡された鎚はとてもキレイな鎚だった。


「右からミスリル、オリハルコン、アダマンタイトね」


順番に持って振って確かめてみる。

重さやサイズは良さそうだ。

後は、同じ素材を叩けるのか、だな。


「この段階ではいい出来だと思う」

「爺様に、みせても大丈夫だろうか?」

「とりあえず行くぞ」


まだこの時間なら、工房にいるだろう。


「師匠、理音の鎚が出来上がりました」


師匠は無言のまま、手を出した。

俺と理音は、鎚を渡す。

理音の顔が固まっている。

大丈夫か?

じっくり鎚を見る目が、真剣なのがわかる。


(れつ)、ミスリル打ってみろ」

「はい、師匠」

「親父、たぶん鎚にも塊にも魔力流した方が叩きやすいと思う」

「わかった」


あんまり、鎚にも素材にも両方へ魔力を流す事はないからな。

うまく出来るかどうか。

まぁやるけど。

よし、行くぞ。

カンと甲高い音が、響いた。

一度だけでウソみたいに塊からカタチを変えた。

すごい。

これで、俺もファンタジー素材を扱えるようになる。


「理音、すごいぞ!頼んでよかった、ありがとな」

「…理音、儂にも鎚つくってくれんか?儂もミスリル打ってみたい」

「爺様の鎚、俺が作っていいのか?マジで!?やった!任せて!あとでサイズと重さとカタチ教えて!」

「素材と一緒に届けさせよう」


これで心置きなく、ミスリルで遊べるってもんだ。

楽しくなりそうだな。

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