謎は増えるらしい
『おはようございます、リオール様』
『おはよ、アレド』
目をコシコシと手の甲で擦りながら、ベッドの上に起き上がる。
あぁ、昼寝したんだっけ?
まだ寝ぼけてるのか、頭が働いてないようだわ。
『起きたばかりで、申し訳ないのですが、ステータス確認していただけませんか?』
『ステータス?』
『はい、今のお昼寝で魔力がどの程度回復するのか、知っておきたいのですが』
確かに、それは把握しておくべきことね。
ステータス画面を表示する。
体力が10/10に戻ってるわね。
魔力は24/24ね
あれ?おかしくない?
『アレド…魔力って昼寝前は最大20だったわよね?』
『はい、20をすべて使用してからおやすみになられました』
そうよね、20だったわよね。
『なんか24/24になってるんだけど』
『はっ?この短時間の昼寝で、全回復して総量が4増えた、と?』
『増加2倍の効果?ということは、本当なら2だけ増える予定だったのかしら?』
『今の段階だとそう解釈できますね』
『今の段階って?』
『単純に2プラスなのか、総量の10%プラスなのか不明ではないかと』
あーなるほど。
単純に2プラスだと、2倍効果で、
20→24→28→32…な感じ。
総量の10%プラスだと、2倍効果で、
20→24→28か29→34か35…とかな感じ?
端数の扱いが今のところわからないわね。
『あと2回くらい魔力枯渇して回復したらどっちかわかると思うから、明日にはわかるんじゃない?』
アレドも、そうですねと納得したようなので、今わからないことは、わかるまで放置しときましょう。
それに、もうひとつ謎があるのよね。
『アレド…気になることがあるんだけどさー』
『なんでしょうか?』
『朝、スキルポイントって使い切ったわよね?』
『もちろん、フルでスキル取りましたから』
そうよねぇ、私もそう記憶してるのよ。
『なんかさ、スキルポイント増えてるんだけど』
『えっ?』
『3ポイントあるんだけど』
『3…なぜ?』
『いや、私が聞きたいよ。レベルアップしたら、増えるのかなーって思ってたんだけど、職業レベルは0のままだし、スキルレベルも魔力操作はLv1のままだし、アレドもそう予測してたでしょ?』
『確かに、レベルアップで増えるのではと思っておりましたが…レベルアップ以外でリオール様が行なったことといえば、魔力操作で魔力循環と魔力枯渇による魔力増加2倍ですよね…もしかしたらスキル使用でポイント加算されるとか、ですか?』
確かにそれくらいしかやってないよね。
昼寝でポイントは増えないだろうしね。
いや、昼寝で増えるならいっぱい寝るけれども。
『試しに魔力操作で循環してみるわ』
魔力感じて、体内を移動させてみる。
お腹、右手、頭、左手、お腹、左足、右足
一周させて、ステータスを確認する。
マジかーーーー。
『スキルポイント4になった』
『本当ですか?』
『体内を一周移動させたら、増えたみたい』
『では、起きてる時に循環させ続けたらすごいポイントになるのでは?』
『でも、3歳児には結構たいへんな作業よ?まぁやるけどね。これで考えると枯渇しても増加2倍でポイント増えそうよね』
『頑張って増やしましょう!』
アレドなんか楽しそうね。
『ところで、封印されてるスキルポイントはどうやったら使えるのかしらね?魔力増えないとダメなのかしらね?それとも大賢者が封印解除されないと使えないのかしらね?』
1億ポイントもあるのに、使えないもどかしさ。
『大賢者関係はさっぱりわからないですね』
『鑑定とか解析とかのスキルのレベル上げたらわからないかしらねぇ』
『あー可能性はありますね、スキルポイント貯まったら取得してみますか?』
『貯まってから考えるわ、まだ5ポイントだし』
話しながらも循環してたら、ポイント増えたわ。
『そうですね、スキルの増加2倍のところ触ってみて頂けませんか?』
『いいけど、なにかあるの?』
『それを確認したいのです』
私は、魔力増加2倍の文字を触る。
スキルポイントを触った時のように、もうひとつ画面が表示された。
『あ、これスキルツリーかしら?』
『やはり、スキルツリーでましたか。増加は10倍まであるようですね、必要ポイントも表示されてますね』
3倍は50ポイント
5倍は150ポイント
8倍は480ポイント
10倍は650ポイント
今の段階だとこれだけ必要なのね。
全然倍率上げられる気がしないわね。
魔力操作のレベル上げたら、スキルポイント増えないかしら?
そこに期待してみましょうかね。
『アレドの探した情報にスキルツリーに関するものって何かある?』
『いくつかありましたが、ツリーは出たけど選択できないというものと、触ったらスキル欄に表示されたというものですね』
『選べないのはきっと、ポイントが足りないからよね?ポイントの存在を知らないと、スキルツリーにも必要ポイントが出ないの?取れたのは、スキルポイント足りてたのね、でもホントに欲しいスキルだったのかしら?別のが欲しかったのなら、それって、理不尽すぎないかしら?なんでスキルポイント知らないのかしら…』
教えたいよね。とりあえず家族だけでも。
絶対たくさんスキルポイント持ってるとおもうんだよね。
なんとなくモヤモヤした気分のまま、えっちらおっちら階段を降りて、リビングの連理の元へ向かう。
「ママ、おみじゅ」
「理織起きたの?喉乾いたの?」
コクリと頷く。
「お腹は?空いてない?」
寝る前に食べたけど、魔力循環してるからお腹空いてるわ。
「ちょっと」
「じゃあ、少しオヤツ食べてからパパのところ行きましょうね」
「パパ?」
確か理は、隣の工房で作業してると聞いた気がする。
魔導錬金術師の工房って、どんなかしら?
興味そそられるわねー。
私も魔導錬金術師だものねー。
どんなもの作ってるのかしら?
連理は、表面に砂糖のまぶしてある何かと牛乳を持って、
「パパが理織の魔力を身体から出す魔道具を理織用にするからきて欲しいって」
おー昼寝前の話の魔道具!楽しみー。
「あい」
「行く前にドーナツ食べて、牛乳飲んでね」
砂糖をまぶしたお菓子はどーなつと言うのね。
どれどれ、どんなお味なの?
手掴みで、3歳児の手には少し大きめのどーなつを持ち、齧る。
「!!おいちー!」
なにこれ、なにこれ!
すごく美味しい。
フェリーラザには、なかったわ。
もしかして、この世界って美味しいものがたくさんあるのかしら?
あったらいいなぁ、楽しみ!
魔導具もおやつも楽しみしかないわね。
『アレドもどーなつ食べられたら良かったのにね』
『レシピを検索しておきます』
いや、今そういう流れじゃなかったと思うんだけど…
まぁいいか。
どーなつ食べたら次は魔導具よね。
「パパいく?」
砂糖でベタベタになった手を拭いてくれている連理に聞くと、
「行きましょうね」
と、抱き上げてくれたので、大人しく連れて行ってもらう。
わっ、ホントに隣に工房あるんだ。
「理さーん、理織連れてきたわよ」
うわー、なんか色々なものが置いてある。何に使うのかわからないものから、フェリーラザでも使ったことのある器材などもある。
キョロキョロしていると、
「リオ、珍しいかな?」
連理の抱っこから理の抱っこに移動して、
「いっぱい、ある」
「そうだね、でも勝手に触ってはダメだよ、危ないものもあるからね。わかったかな?」
「あい」
「リオ、魔力を動かせたんだって?」
「ポカポカ、ぐるぐる」
今もしてますけどねー。スキルポイント8まで増えましたよ。
「すごいね、リオのポカポカを増やすのに、おやすみする前にこれ触ってくれるかな?」
理織の手のひらよりも少し大きめの丸い玉で真ん中にぐるっと一周何かがはまっている。
丸い玉の上下は見えていて、水晶みたいな透明である。
「どこしゃわる?」
「両手で、ココとココを触ると、リオの身体からポカポカをだしてくれるんだ」
ほうほう、水晶っぽい部分を両側から挟むようにさわればいいと言うわけね。
これは簡単ね。
真ん中のぐるっと貼っている何かをさして、
「ここ、なに?」
「気になるかい?」
「あい」
「ここに身体からでたポカポカの量がでるんだよ」
よくわかんないって顔で、首をかしげてみる。
「リオにはまだ難しかったかな?お休みする前にさわる。だけ覚えればいいかな」
「あい」
触るだけでいいのは、わかるけど、全然よくないんですけど?
なんですって?数値表示される?
魔力総量チェック入るのと同じじゃないのよ。
それってマズイじゃないの!
みんなの想定より、魔力総量多くなるのに、どんどん増やす予定なのに。
『マズイわよね』
『大丈夫だと思いますよ?今日だったら20になるまで、理様の魔導具で魔力抜いて、残りは空の魔石に入れてしまえばよろしいのではないでしょうか?』
毎日、計算しながら魔力抜くの?
面倒くさいじゃないのよー。
すごい魔導具よね、わかるわよ。
他の3歳児には、簡単で嬉しくて必要よね。
でも私には、嬉しくない魔導具よーーー。
はぁぁぁ。
誰か、簡単に計算出来る何かをください。