想定外でした
理と理結が毎日のように、打ち合わせ?をしていたので、チビキャラフィギュアのことだろうとは、思っていたのよ。
ティルたちはみんなモデルやることにオッケーしたみたいだし。
契約してない子も契約したいからモデルやるって言ってたらしく、
屋敷の執事さんやメイドさんや料理人さんや、
理結のギルドショップの店員さんや、
神凪コーポレーションの従業員さんなんかも契約したんだって。
みんな敷地内に住んでるからね。
この辺りの人達には、スキルポイントの話はしてなかったらしいんだけど、精霊と契約するのはいい機会だからと、他には言わないことを約束してもらって伝えたんだって。
魔力量増やさないと、精霊に魔力あげられないものね。
今、みんな必死で魔力とスキルポイントを上げてるらしいわよ。
がんばれ!
で、理結からティルへのお礼が、なぜかティルが私から魔力が欲しいから私にお礼して欲しいとお願いされたらしい。
それならと、売る予定のチビキャラフィギュアが欲しいと言ってみた。
何個かもらえたらいいなって。
違うドレスとか着たティルとか可愛いかなって。
そう思っただけだったのよ。
まさか、全精霊コンプリートして渡されるとは思ってなかったのよーー。
シリーズ毎に透明のケースに入ってるのよ。
こういうケースも売ってるのね。
すごいわ。
並べて飾ったらちょっとすごいわよね?
「りゆにい?これ、なに?」
「理織が欲しいって言ってたろ?売るチビキャラフィギュア欲しいって」
「ちる、だけ、ちがーの?」
「あっ何?ティルのが欲しかったのか?」
「あい」
理結は、あーそうかーと呟いて、
「まっ、でも持ってきたから全部もらってくれな?」
「いーの?」
「いいに決まってるだろ?理織のアイデアなんだから」
「あーがと」
理結は、私の頭を撫でて笑った。
「理織、この間のひんやりバージョンのハンカチとあったかバージョンのハンカチは、ハンカチ以外でも出来るのか?」
「あい」
普通にできるわね。
「温度は変えられる?」
「おんど?」
「今は、自分より10℃低い温度の空気で包んでるだろ?」
「あい」
あったかバージョンは調整まだですよー。
寒くなったらやります。
ひんやりバージョンは、最初からマイナス10℃の設定にしてある。
「買った人から、問い合わせがたくさん来てるんだよ」
問い合わせ?
どんな?
「まだ暑いから、もう少し温度の低いのが欲しいって言うのと、寒いからもう少し温度の高いのが欲しいって言うのだな」
えっ?
どうするのよ、そんなの?
『今のひんやりバージョンのマイナス2℃とプラス2℃を作るのは?』
なるほど?
アレドの案で、理結にそう聞いてみると、
「温度の設定変更を自由にできないだろうか?」
どういうこと?
最初から10℃とかに設定しないってこと?
「わかーない」
「ダンジョンの火山地帯に行ったら、もっと涼しくしたいとか、雪山地帯に行ったら、もっと暖かくしたいとか、そんな調整できないかなって」
あっ、なるほど。
10℃じゃ足りないのね。
人によっても感じ方違うだろうしね。
それなら、新しい魔法作るのが良くない?
『アレド、空調魔法みたいの作ればできそうよね?』
『いけますね、それなら冷房と暖房に分ける必要もありませんね』
そうよね?
最初からそうすればよかったかしらね?
いやでもお試しでやっただけだしね。
「まほう、ちゅくりゅ?」
「温度調整できるやつを、ってことか?」
「あい」
『腕輪にして、魔法陣刺繍して、腕輪で上げる下げる出来るようにしたらどうかしら?』
『いいですね、腕輪ミスリルにしましょう』
『おー!いーわね!』
理結は少し悩んだ後に、やってみてもらってもいいかな?と乗り気な感じになった。
よし、作ろう!
って、ミスリルの腕輪なんてないじゃない。
『アレド!ミスリルの腕輪なんてないわよ。指輪もないわ』
『あっ、インベントリに薄いミスリルの模様のない腕輪あります。どこかの引き出しから出した風にして使ってください』
『了解よ』
私は、引き出しからミスリルの糸とミスリルの腕輪を出したように見せながら、インベントリから取り出した。
空調魔法
どんな魔法か定義
「対象者が指定する温度の空気の層で対象者を包む魔法。温度設定はいつでも変更可能にする」
魔力量1億を消費。
クリエイトボタンをタップ。
暖房魔法の横に、空調魔法が表示された。
続いて、魔法陣展開魔法をタップ。
展開する魔法を指定
空調魔法
必要な魔力量 20,000
魔力提供者
理織
展開ボタンをタップ。
それから魔法陣刺繍魔法をタップ。
指定する糸
ミスリル糸
指定する魔法陣
空調魔法陣
指定する素材
ミスリルの腕輪
必要魔力量 20.000
刺繍作成ボタンをタップ。
ミスリルの腕輪が小さく光って、ミスリル糸が少し減った。
ハンカチの時よりは使ったようだ。
腕輪をつけて魔力を流してみると、温度設定のプラスとマイナス表示が出た。
マイナスを10回押してみると、ひんやりな空気に包まれた。
うん、大丈夫そうね。
魔力を流すのをやめて、理結に渡す。
「できた」
「使ってみてもいいか?」
「あい」
もちろん使ってみてもらわないとわからないものね。
理結の指が何かをタップしてるのがわかる。
温度変更中なのだろう。
「理織、これすごいな!お願い通りだ!」
「あい」
よかったわ。
「ってか、理織?これミスリルの腕輪って鑑定に出てるんだけど?」
「あい」
『リオール様、何が聞かれたら、前にティルちゃんにミスリルもらったから作ってみた、と誤魔化してくださいね』
『りょーかいよ』
「ヒマワリが育ててるって言うミスリルか?」
「あい」
「これはミスリルの腕輪にミスリルの糸で魔法陣を刺繍してるんだな?」
「あい」
鑑定もってると説明しなくていいから楽ね。
「理織、今これを1個複写しようとすると、魔力量が100万必要になるんだが」
えっ!?そんなに?
作るのに2万しか使ってないのに?
あっ、材料がないから?
『アレド、腕輪分くらいのミスリルある?また引き出しからだしてくるから』
『承知しました、少し大きいですが大丈夫だ思います』
『ありがと』
私は引き出しから、ミスリルの塊持ってきて、ミスリルの糸と一緒に腕輪の横に置いた。
「りゆにい、これちゅかって、ふくしゃ、できる?」
「おう、確認してみる。…おっ、1個5000で複写できるぞ。複写してもいいか?」
「あい」
ミスリルはものがないとものすごく魔力必要なのね。
「できた、これは探索者向けに高めに売り出せそうだな」
理結の顔が、黒い笑顔に見える。
お金大好きな顔に見えるわ。
「あい?」
とりあえず首傾げとくわ。
「理織はまだわかんなくていいよ。この腕輪俺に売ってくれるか?」
別にあげてもいいんだけど?
理結、商人だから買いとるわよね。
その辺は任せるわ。
『いいわよね?いつの腕輪かもわかんないし』
『問題ございませんよ』
そうよね?なら返答は一択よね。
「あい」
「ありがとうな」
頭を撫でられたので、にへらと笑ってしまった。
後日、ハンカチバージョンはかなり安めに、腕輪バージョンはかなり高めに売り出されたが、どちらも売れに売れて、複写スキル持ちが頑張っているらしい。
ってか、ショップの店員さん、複写スキル取得させられたらしい。
その分、臨時ボーナス出したんだって言ってたけど。
ボーナスって何?
ミスリルの方は、足りなくなったら理に交渉しているらしい。まっ私に言われてもわからないものね。
ミスリル糸は何度かお願いされた。
フィギュアもらったから、と思って普通に渡していたけれど、後で聞いたらちゃんと買取になっていたんだって。
もちろん、売上利益の一部も私の口座に振り込まれていると知ったのは、何年も後のことだった。




