新コトワリノハネ?〜理律
兄貴から、剣を渡された。
「何これ?」
「オレの作った剣。使ってみてくれねぇ?」
えっ!?兄貴ってハサミとかナイフとかしか作れなかったんじゃなかったっけ?
「兄貴、剣作れたの!?」
「出来るようになった。まぁまだ素材限定っぽいけどな」
「素材?これ鋼じゃないの?」
「あーそれ、ミスリル」
はっ!?ミスリル!?
「何言ってんの!?ミスリルなんかあるわけねぇじゃん」
聞いたことねぇよ、ミスリルとか。
兄貴は、変な顔して、
「あれ?きいてねぇの?理哉から」
「リナ?」
リナ!?あいつまたなんか連絡忘れてんのか!?
「聞いてないのか…世界樹あるのは知ってるよな?」
知ってる、と頷く。
「あの空間に理さんの精霊のヒマワリがミスリルの鉱脈育ててるんだって」
はっ!?ミスリルの鉱脈!?
「で、結構育って来たからって理さんが爺様と親父とオレにミスリルの塊くれたんだよ。なんか作ってみてくれって」
「全然きいてねぇんだけど。マジで!?」
「マジで。それで作ってみたのがその剣なわけ」
それなら兄貴の作ったミスリル剣じゃなくて、父さんとかじいちゃんのミスリル剣がほしいんだけど。
そんな思いが顔に出てたのか、兄貴は言った。
「ちなみに、親父と爺様はミスリルの扱いに苦戦してて、まだ塊のままだったぞ、ミスリル」
父さんとじいちゃんが苦戦する素材を兄貴が剣に出来る、だと!?
「えっ!?なんで!?」
「あーオレ錬金鍛治師だからじゃないか?鋼の鍛治よりミスリルの方がむいてんだってさ」
マジか、そんなことあんのか。
兄貴の作った剣を使うなんて考えたことなかったけど、ミスリル剣は使ってみたい。
「ちなみにそのミスリル剣な、魔力伝導率100、攻撃力➕50、速度➕20だから」
魔力伝導率って、俺の魔法付与と相性いいやつじゃないのか?
しかも攻撃力と速度もアップすんの?
「この剣の強度とかは?」
「それも含めて試して欲しいんだよ。あとリリの魔法付与に耐えられるかとか」
そこまで言うなら、使ってみてやってもいいけどな。
っつうか、リナがリリって呼ぶからみんな俺のことリリって呼ぶようになったんだけど?
兄貴までリリって呼ぶなよ。
「わかった、今度ダンジョン行ったら使ってみてやるよ」
兄貴は、苦笑ってよろしくとミスリル剣を置いていった。
あとで、鞘がないことに気づいて、兄貴に文句を言ったのは、当たり前だろ?
「リナ、俺たちに話さなきゃいけないことないか?」
「んっ?ないと思うけど?」
へぇーないんだ?
「ヒマワリがミスリル育ててるってきいたけど?」
「リリ、ミスリルってなんだよ?」
やっぱハルも知らねぇじゃねぇか。
「育ててるよ、って言ってなかった?」
「「きいてねぇーよっ」」
いつもこんなじゃねぇかよ、リナ。
「忘れてたけど、別に問題なくない?」
はっ!?
「大アリだっつうの!これ見ろ!」
俺はマジックバッグから、ミスリル剣を取り出した。
「もしかして…か?」
ハルが聞く。
「これが何?」
リナは気づかない。
話の流れから気づけよ。
「ミスリル剣だっつうの!!」
「えーーー!?」
なんで、ミスリルの存在知ってたお前が1番驚いてんだよ。
「リリ、見せてくれよ」
ハルがワクワク顔してる。
だよな、ミスリルだもんな。
ないと思ってたものだからな。
俺は、鞘から剣を抜いた。
薄青く光る銀色のキレイな剣だ。
「おーすげぇキレーだな」
「だろ?」
「作ったのおじいちゃん?おじさん?」
リナは当たり前のように、その2人の作品だと思ったようだ。
兄貴が剣作れないの知ってたらそう思うのも無理ないよな。
「いや、兄貴」
「へっ!?理音兄ちゃんなの?」
「あれ?理音ってナイフとかしか作れないって言ってなかったか?」
「鋼だとそうらしいんだけど、ミスリルはいけたんだってさ」
驚くよな。
「ミスリルって魔法の通りがいいから、魔法付与して使えるか確認してほしいって、攻撃力と速度にバフかかってるんだよ、ミスリル剣」
「マジで?」
「じゃあ、その剣使って、リナの恩恵使ったらバフすごいんじゃない!?」
あっ、エンチャント効果2倍だったか?
「ダンジョン行こうぜ、ミスリル剣の効果も見たいし、恩恵使って連携もしようぜ」
「だな、リナも行けるか?」
「もちのろんだよ!」
お前はホントに11歳なのか?
とりあえずいつもの2階層で、走るキノコ相手に魔法付与せずにミスリル剣を振ってみる。
全然抵抗なくスッパリ切れた。
「すげー切れ味だな」
「何も切った感覚がなかった」
「すごーい!あれ?いつもとなんかドロップ違くない?」
いつもはでかいマッシュルームと魔石なんだが、すげぇー小さいマッシュルームがたくさんと魔石が落ちていた。
「なんだこれ?」
「あれ?俺らって誰か鑑定とか取ってたか?」
取ろうって、話したこともなくねぇ?
「取ってないな…取った方がいいかもな、何かわからないと持ち帰るかどうかも迷うしな」
「じゃあ、少ないスキルポイントで取れる人が取ろうよ」
なるほど、そういう選択肢もありだな。
「そもそも、鑑定表示されてんの?」
「あるよー、リナは2500必要なの」
「俺もあるな、2000だな」
「俺は…あった。1000だ」
「おーじゃあ、ハルだね」
俺の半分で取れるのかよ。
「りょーかい、鑑定取るけど、とりあえずレベル1でいーよな?」
「鑑定出来なかったらあげるとか?」
「上げるポイントあればいーけどな」
毎日、増えていくのは確認してるけどよ。
「鑑定できたぞ、あのちっさいマッシュルームすげぇーぞ!速度上昇のタネだって」
「タネ!?植えるの?」
「そこまでは見えん、持って帰って理さんか理結兄に見てもらおうぜ」
「そうだな、今レベル1上げても詳細わからないかも知れねぇしな」
「あっそっか!そーだよね!うん、持って帰ろう。あっ理人兄ちゃんも鑑定できるはずだよ。確か。それに植えるなら裏庭空間で植えればいーよね」
「だな」
「よし、じゃあマジックバッグに入れてから、探索続けようぜ」
なんで、デカいマッシュルームじゃなくて、違うの出たのかもわからんしな。
「スライムも違うのドロップしないかな?」
「リナ、バフかけて、アローで倒してみろよ。練習したんだろ?」
俺がそういうと、自信なさそうにリナは、
「したけど、まだウォーターアローしかできない」
「スライムなら、いけんだろ?ダメだったら俺らフォローすっから」
「わかった、やってみるよ」
リナは、虹色の雫を起動し、攻撃力強化、命中率上昇をかけて、ウォーターアローを打ち出した。
さすがエンチャント効果2倍だな。
スライムの核の真ん中を撃ち抜いた。
いつもならスライムのゼリー状の部分は、溶けて無くなるのに、まだスライムの形を保っている。
なんか変だ。
「ハル、あれ鑑定できるか?」
「はっ?スライム肥料だそうだ」
「はっ!?」
なんだそりゃ!?
「えー何それー?畑にまく肥料?」
「字はその肥料だな」
「これも持って帰って鑑定だな」
「えードロップは!?ないの?えー!?」
リナのブーイングもちょっとわかるな、あんな会心の一撃みたいなので、倒したからな。
残念だが、ないものは仕方ない。
「次のドロップに期待しようぜ」
ブゥーとほっぺた膨らませるあたりは11歳なんだけどなぁ。
それからも走るキノコとスライムを倒したが、いつも通りのドロップだった。
最初のは、なんだったんだろうな?




