ミスリル剣爆誕〜理音
少し前まで無気力状態だった。
何をやってもうまくいかなくて…
何をやっても楽しくなくて…
元々、親父と爺様が鍛治師なので、
オレもきっとそうだろうと思っていたが、
職業をもらってみたら錬金鍛治師。
錬金鍛治師って何?
ギフトは、錬金魔法陣。
錬金魔法陣を使って鍛治するのが、錬金鍛治師らしいと、ようやくわかってきた。
だから、親父たちのように、
高熱の炉の前でカナヅチを振るうわけではない。
あの姿がカッコいいと思ってたんだ。
まさか自分には必要ない工程だとは、思いもしなかった。
錬金魔法陣で、鋼を高温で強化し錬金。
錬金魔法陣で、形を設定し錬金。
こんな感じのことしか出来なくて、
ハズレ職業だったのかと思ってたんだ、
内緒だけど。
でも、スキルポイントで自由にスキルが取れるって教えられた時に、最初に錬金と魔法陣のスキルのレベル上げようって思ったんだ。
あー、オレ別に錬金鍛治師が嫌なわけじゃないんだなって、するっと納得できた。
そしたら、めっちゃ楽しくなったの。
錬金魔法陣で錬金して鍛治するのが!
今までなんだったんだってくらいに。
そしたら、精霊と契約が出来たんだ。
親父や爺様はまだ契約してないって聞いた。
それなのにオレがしてもいいのかな?って思ったけど、オレがいいっていってくれるのは、素直に嬉しかったんだ。
ハガネって名前にしたんだ、髪も瞳も鋼色だったから。
でもハガネが言うには、オレの錬金は鋼よりも違う素材の方が向いてるらしい。
刀とか剣とか親父や爺様は打ってるけど、鋼を使ってるはず。玉鋼だったか?
でも他の素材ってなんだろうな?
ラノベとかだとミスリルとかオリハルコンとか出てくるけど。
ダンジョンから発見されたとか聞いたことないよな?
やっぱ地球には、存在しないってことなんだろうな。
残念だな。
親父と爺様とオレと、3人が理さんに呼ばれた。
「わざわざすみません」
相変わらず、理さんの腰は低い。
婿養子だから?と思ったが、親父も婿養子だった。
性格かな?
「珍しいな、理が呼び出すとは」
爺様が、そう言うと、
「いや、実はですね。僕と契約している精霊のヒマワリが、ミスリルを育てまして」
はっ!?
ミスリル育てたって何?
ヒマワリって名前可愛いね、とか思ってたからびっくりした。
「おい、理。ミスリルなんかどこから出て来た!?」
ホントに爺様の言う通り。
「あー、リオが創造魔法でミスリルのタネを砂つぶサイズで作り出したらしいんです。それをヒマワリが育てて、かなりの量になったらしいと、僕もさっき聞いたばかりで」
と、あせあせって感じの理さんが言う。
また理織やらかしてるのか?
「で、僕だけでは使いきれないくらいに育ってるらしいので、鍛治師のみなさんも使ってみませんか?ってことなんですが」
「現物はあるのか?」
「鍛治で使えるのか見てみたいんだが」
爺様と親父が言う。
そりゃそーだよな。
オレも見たい。
理さんは、普通のカバンかと思ってたそれから、何かをテーブルに出した。
それ、マジックバッグなの?
これがミスリル?
「ミスリルは、魔力の通りがとても良いそうです」
「それなら理君が使った方がよいのではないかね?」
「僕が使うとすると基本的に薄く伸ばしたものになるので、ものすごくたくさん必要なわけではないのです。なので、その塊はそれぞれ差し上げますので、使えるか試してもらえませんか?」
「オレももらってしまっていいんですか?」
「もちろんです」
と、理さんは笑う。
「うむ、では試させてもらおう」
「お願いします。もし何か特性などわかりましたら、教えていただきたいです」
「うむ、わかった」
「師匠、早速工房に行きませんか?」
親父は、ずっと爺様を師匠と呼んでいるな、そう言えば。
親父と爺様は、ミスリルを持って歩き出した。
オレも続こうとしたら、理さんに、
「理音くん、もしかしたらハガネくんが詳しいかもしれないので、色々わかったら教えて欲しい」
「はい、わかりました。ありがとうございます。オレもミスリル嬉しいです」
「ハガネー、ミスリルもらった」
「はい!?ミスリル!?」
「うん、精霊のヒマワリわかる?育ててるんだって」
「この世界で育つんだ?」
驚いてるハガネに、ミスリルの塊を見せた。
「まさかまたミスリルが見られるとは思ってなかったな」
あぁ、そうだった。
ハガネたちは、この世界にダンジョンが出来た時に、ダンジョンと一緒に違う世界から巻き込まれて地球に来てしまったんだったな。
「これって、オレ扱える?錬金鍛治師だけど」
「いや、むしろリオンの得意分野じゃないか?」
「そうなの?」
得意分野って言われても、今までハサミとか採取用のナイフくらいしか作れなかったんだけど?
「このミスリルってリオンが使っていいやつなのか?」
「そうだよ、特性とかわかったら教えてとは言われてる。あとハガネが詳しいかもとも言ってたけど」
「…リオン、オレがあげた恩恵覚えてる?」
「カゲロウの羽、だろ?」
「そう、それを使って錬金魔法陣で加工すれば…説明するより、してみた方がわかりやすいか?」
「やり方、教えてくれるか?」
「りょーかいだよ。まずその塊だと剣3本くらい出来ちゃうから、錬金魔法陣で3等分にしようか」
「えっ!?これで3本もできるの?」
「だよ、早く錬金魔法陣用意して」
言われた通り、分割の錬金魔法陣で3等分する。
「実験してみようか、まずいつもの高温にして強化を錬金の魔法陣だけでやる塊と、いつものを使う時にカゲロウの羽を起動してからやる塊にしてみようか、1つは残しておこう」
「わかった、やってみるよ。とりあえずいつものやつだな」
魔法陣を展開して、ミスリルの塊を乗せる。
錬金すると、インゴットになる。
少し青みを帯びた銀色の塊になった。
「カゲロウの羽ってどうやって起動するんだ?」
「スキルと変わらないよ、アクティブで使う感じだね。そのまま魔法陣使ってみて」
言われた通りにやってみる。
同じようにインゴットになったけど。
「なんだこれ?すげぇ魔力量多くないか?これがカゲロウの羽の恩恵?」
「そう、この方が成形もしやすくなる。成形時にいくら魔力を入れてもこうはならないんだ」
「すごいな、ハガネ!」
「オレがすごいわけじゃないよ。オレとリオンが契約したから、この恩恵になったんだ」
「んっ?じゃあハガネが別の誰かと契約したとしても、カゲロウの羽にはならなかったのか?」
「そういうこと」
へぇーそうなんだ?
「オレは、ハガネが持ってる能力をくれたのかと思ってた」
「そういうわけじゃないよ。さて、次の工程行ってみようか」
「だな、カゲロウの羽使ってない方は使わないまま成形した方がいいよな」
「その方が、鋼じゃなくミスリルの方が向いてるのわかるかな、今日は剣にしよう」
「剣かー、出来たことないんだけど」
「だから、剣だよ」
まぁそうか、これで剣が出来るなら、ミスリル使いたくなるな。
「わかった、やってみる」
魔法陣に剣の設定をして、インゴットを乗せて錬金する。
一度光って錬金が出来たことを告げる。
出来た?
いつもは光らず、インゴットのままなんだけど。
今日は、出来たのか?
「ハガネ、出来てる?」
「自分で見ろよ」
ちろーっと視線を向けると、そこには剣があった。
すこし青味を帯びた銀色の剣がそこにはあった。
「できたーーーー!!!」
すげぇ、初めて剣出来た!
「やったな、リオン。やっぱり鋼よりミスリルだったな」
ハガネが笑っている。
「この勢いで、カゲロウの羽起動バージョンもいってみるぜ」
やる気出た。
超やる気出た。
「魔力の残り大丈夫か?」
言われるまで魔力のことなんて、頭から抜けてた。
ステータス確認したけど、まだ半分以上残ってる。
「大丈夫だ」
「なら、恩恵使ってみてくれ」
さっきと同じように、カゲロウの羽をアクティブにして、魔法陣に剣の設定をして、インゴットを乗せて錬金する。
ピカーって、さっきよりも光った。
「すげぇ光ったけどなんだ?」
剣出来たのか?
「リオン、すげぇ剣出来たぞ」
「マジで?」
オレも剣を見る。
なんだ?さっきのと段違いの存在感の剣だ。
これ、ホントにオレが作ったのか?
「なんかすげぇけど、見た目だけだったらヤダな、理さんに鑑定してもらうか。ハガネも一緒に行くだろ?」
「もちろんだ」
鑑定の結果は、見た目だけでなく、性能も段違いだった。
いつも通り錬金したものが、
ミスリル剣
魔力伝導率 100
攻撃力 ➕50
速度 ➕20
カゲロウの羽で錬金したものが、
ミスリル魔法剣
魔力伝導率 1500
攻撃力 ➕800
速度 ➕300
クリティカル 60%UP
オレもハガネも大喜びした。
だって、普通の?ミスリル剣だって、バフついてんだぜ?
ミスリル魔法剣なんて、さらにクリティカルとかまでついてるし、バフの桁が違いすぎる。
ミスリルすげぇな。
理さんにめっちゃ褒められて、ミスリルはいつでも取りにおいで、と言われたが絶対レアなんだから高額じゃん?
そんなものホイホイもらいに行くわけには…
そこは、親父と相談してみよう。
ちなみに親父と爺様は、ミスリルの扱いが難しくて苦戦していたらしい。
それを聞いて、錬金鍛治師は鋼よりミスリルなんだと思った。
ミスリル魔法剣は、誰かに使ってもらうにはバフかかりすぎだから、ミスリル剣を理律に使ってみてもらおうかな?
使ってくれるかな?
あいつ、爺様に剣打ってもらうのが目標だからなぁ。
ミスリル剣って言ったら、使いたがるかもな。
うん、色々これから楽しみになって来た。




