緑の手〜理人
『アナ、俺と契約してくれた精霊のハーブだよ。覚えておいて、仲良くして』
『ハーブ様』
と言ったところで、ハーブは首をフリフリして、ハーブでいいと言う。
『では、ハーブ。私はリヒトの鑑定スキルのアナと申します。よろしくお願いしますね』
『はい、ハーブです。よろしくです。アナねーさま』
『ねーさまですか?呼び捨てで構いませんが』
『アナねーさまで!』
『アナー、納得してあげて。俺のこともにーさま呼びだから…』
『…わかりました』
渋々だな、アナ。
まっ俺もだけど。
『アナ、俺さハーブと契約した時に、緑の手って言う恩恵?貰ったんだけど、どういうのかわかる?』
『緑の手、確かに恩恵としてステータスの項目に表示されましたね。これは、植物を育てるのにとても良いものです』
『植物?俺ガーデニングとかやってないけど』
『いえ、リヒトの場合は薬草を育てられそうです』
『そうなの?』
ハーブを見ると、頷いてドヤ顔でガッツポーズしている。
なにそれ、可愛いんだけど。
じゃなくて、薬草育てるの?高品質の薬草育てられちゃったり?
どこで?場所なくない?
『あっ、さっき裏庭拡張するって言ってたよな?そこで薬草育てられるか?』
『できる。ハーブがんばる!』
『リヒト、裏庭拡張ってなんでしょう?』
『なんか世界樹育てるのに、狭いから別空間に繋げるとか。で、その空間拡張するって言ってた』
ハーブがぶんぶん頷いてる。
リアクションが大きくて可愛いんだけど。
『世界樹ですか?未確認なのですが』
『世界樹の精霊が種を持ってたみたい。それをここで育てたいって』
『なるほど』
『にーさまの緑の手、役立つ!』
『世界樹にも効果ありなのか?すごいな』
薬草育てんなら、ダンジョン行って、根っこから採取してこないとだめだな。
今、葉の部分しかないからな。
さっそく、次の日にダンジョンに来たんだが、ハーブも付いて来た。
危ないから留守番させるつもりだったんだが、行くと言い張るので、しかたなく連れて来たんだが、連れて来て正解だった。
これとってー、あれとってー、次はこれー、今度これーとハーブの選んだ薬草は、アナによれば、高品質の薬草各種だった。
俺はもちろん、言われた薬草採取する係だったよ。
ひたすらに採取。
採取も緑の手の効果なのか、すっげぇ採取しやすかった。
ありがとうハーブ。
ありがとうアナ。
そんなわけで、マジックバッグに大量に採取した薬草を植えるため、裏庭に直行した。
リオの精霊のティルが、魔法を使っていた。
空間を拡張したのか、結界を張ったのか?
何もないところで、ドアを開けるみたいにしたら、空間が開いた。
えっ?あんな感じなの?
あの中が、世界樹育てる場所?
「リオ、その中で俺も薬草育ててもいい?」
リオは俺を見て、ティルを見て、
「あい、どうじょ」
入ってとジェスチャーしている。
なぜかティルとハーブも同じジェスチャーをしている。
3人揃ってそんなことしたら、可愛いがすぎるだろっ。
スクショ撮っとこ。
だいぶ前に取得した生活魔法の中にあったスクショ魔法。
いつ使うのかと思ってたけど、今のためだったんだなぁ。
『アホなことしてないで、いきますよリヒト』
アナひどくない?って抗議したら、ため息をつかれた。
わかりましたよ。はいはい、行きますよ。
何もないところを潜って驚いた。
「おーすげぇーめっちゃ広くない?」
「世界樹は大きくなりますから」
ドヤ顔のティルの横で、何故かハーブもドヤ顔だ。
これもスクショ案件では?
「ティル、この空間で薬草育てても問題ないか?」
「もちろんです、緑の手を持ってる理人ですからね。ぜひ世界樹の育成にも緑の手を発揮してください」
「そのための緑の手でもあるんだろ?ハーブ」
「にーさまがんばる、ハーブもがんばる」
「だそうだぞ。なんで、ここに自由に出入りできるようにしてくれると嬉しい」
「了解ですわ。後ほど入り口のところで魔力登録しましょう」
「おう、よろしくな」
俺はグルッと拡張空間を見渡して、
「世界樹はどこに植える?畑はどこに作っていい?」
「世界樹の種は、今光ってる辺りわかります?この空間の中心なんですが、そこに植えたいです」
真ん中ならどこかにぶつかるようなこともないだろう。
しかし中心まで結構あるな。
「りひにい、抱っこ」
と、両手をあげている。
リオ、中心まで歩くの断念したのか。
でも行きたいと。
わかったよ、抱っこしようじゃないか。
「よし、おいで」
俺はリオを抱っこして、世界樹の種を植えるために、歩く。やっぱりちょっと遠い。
「これ、水やりとかどうすんだ?」
俺、毎日ここまで来るのか?
「見えないですけど、契約できるほどのチカラがまだない精霊の子たちが、水やりや雑草取りをしますので、ご心配なく。理人はたまに緑の手で魔力を流してくれないかしら?」
「了解した。畑は入り口の近くでもいいか?」
「そうですね、入り口入ったら左側でお願いします。右側は地下を広げる予定ですので」
「地下?なんで?」
「ヒマワリが金属系の精霊なのです。鉱物とか育てると思います」
「えっ?鉱物って育てられんの?マジで?」
「精霊ですので」
精霊すごいな。
「他の子は?」
「サクラとアクアとイーリスは、何かを育てる系の精霊ではありませんので、ここには遊びに来るくらいじゃないですかね」
「なるほど」
やっと、中心が見えて来た。
「りお、おりりゅ」
自分で歩くらしい。
なぜかあっちふらふら、こっちふらふらって感じでチョロチョロしてる。
立ち止まったと思ったら、しゃがみ込む。
何してんだ?
「ここ、うえりゅ」
「んっ?そこに世界樹の種植えるのか?」
「あい」
「ティル、いーのか?」
「大丈夫です」
「どのくらい掘る?」
「掘らなくて大丈夫です。理織が指差して空けた穴で十分です」
そんなんでいーんかい。
「リオ、植えてあげな」
「あい」
リオは、マジックバッグから種を出して、土に指をブスッと刺したところに種を入れて土を被せた。
「かんしぇい」
「みんな、お水お願い」
ティルが言った途端、種を植えた土のあたりに水が降って来た。
雨が降るみたいに。
「理人、緑の手で魔力を流して?」
『アナ、緑の手で魔力ってどうするんだ?』
『緑の手と念じてみてください』
おー、右手ちょっと光ってるな。
『これで、魔力流せばいいのか?』
『そのようです』
俺は、種の上辺りから魔力を流した。
『どのくらい流せばいーんだ?』
『そろそろ大丈夫そうです』
魔力を流すのを止めると、それはいきなり起こった。
種を植えた土から芽が出て、ニョキニョキと成長したのだ。リオよりはデカくなった。
うそだろ?なんだこれ?
さすが世界樹、さすがファンタジーって納得すればいいのか?
「緑の手の魔力!素晴らしいです。さすがです」
えっ?俺なの?
これ、俺のせいなの?
じゃあこの後、薬草も植えて、緑の手で魔力流したらいきなり増えたりすんの?
マジでー?
案の定、畑は薬草でもっさもさになりました。
ちなみに畑はハーブが、魔法で、えいやーって耕して畝作って植えるだけの状態にしてくれた。
これにもビックリした。
ドヤ顔は可愛かった。
普段は畑の管理を、見えない精霊ちゃんたちが、してくれるんだって。
ありがたい、さすがに毎日来られないしな。
よろしくな。




