お花見?
今日は朝からいい天気で、ポカポカ陽気。
神凪一族でお花見?するんだって。
満開になったピンク色の花が咲く桜の木の下で、料理を食べたり、大人はお酒を飲んだりするんだって。
理一の屋敷の庭に桜の木が何本かあって、みんなでそこに集まるのが毎年の恒例行事なのだそうだ。
去年は、まだ覚醒前だったから記憶がイマイチなのよね。
『アレド、去年も参加してたかしら?』
『参加はされてましたが、ほぼお昼寝なさってましたね』
『2歳は寝るわよね』
『普通の赤さまでしたからね』
赤さまって。
しかも普通って…間違いじゃないけど。
今はちょっとばかり?やり過ぎな幼女ですからねぇ。
わかってるのよ。
でもやっちゃったものは仕方ないじゃない?
今まさにやらかし案件が目の前にいるのよ。
『アレド、見えてる』
『見えてますね』
『精霊…よね?』
『そうよ!』
ふわふわの天色の髪に翠緑色の瞳をした精霊の女の子が、応えた。
アレドに念話で確認したつもりだったんだけど、本人?本精霊?から返答が念話で返ってきた。
他の人はまるで気にした様子がないので、見えていないみたい。
『私だけ見えてる?』
『あなたにだけ、姿見せてるわよ』
『どうしてかしら?』
理由はあるはずよね?
『私と契約してくれない?』
『契約?私とあなたが?』
『そうよ、悪い話じゃないでしょ?』
確かに精霊と契約できれば、精霊にちなんだ何かしらのスキルが取得できたり、スキル能力が上がったりする。
悪い話ではないが、釈然としないのもまた事実なんだけど。
『そもそも、どうして私と?あなたはなんの精霊なのかしら?』
『私は世界樹の精霊。ダンジョンが出来た時にこちらに紛れ込んでしまった。あなたからは世界樹の香りがする』
あっ、しまった。
『リオール様?私の知らないうちに種作りましたね?』
『はい、ごめんなさい』
『やっぱり!!世界樹の種、植えて育てて!お願い!こちらには世界樹が存在しなくて、私は限界に近かったの。でも突然、世界樹の存在を感じられた。だからここにきた。あなたがいた。だからお願い、契約してあなたといさせて』
そうか、世界樹はこちらの世界に存在しないんだね。
って、それって育てたらまずくない?
『世界樹って、すごーく大きくなるわよね?』
『大丈夫!見えないようにするから』
それならいいのかしら?
『アレドはどう思う?』
『そうですね、私から質問してもよろしいですか?』
『見えないけどいいよ』
そりゃ実体ないから見えないよね。
『契約したとして、リオール様にデメリットなどは?』
『うーん、毎日魔力は欲しいかな』
『どのくらいでしょう?』
『10,000くらい?』
『結構多いですね』
『こんななりしてるけど、これでも上位精霊なんだよ』
なるほど。小さいサイズも可愛らしいのにね。
『では、メリットは?』
『あなたの場合は、恩恵で創造魔法が今より自由になる可能性があるわね』
あらそれは、素敵かも?
『アレドは、どう思う?』
『嘘は無さそうですし、隠し事がなければよろしいかと』
あーそういう可能性もあるのか。
ちょっと鑑定。
確かに世界樹の精霊ね。
上位精霊だけど、名前がないわね。
何か隠してる?
隠蔽看破。
あーそういうこと。
なるほど、それなら大丈夫かしらね?
『いいわ、契約しましょう。ただし、隠れてる他の子も姿を見せて?』
世界樹の精霊は、どうしようか迷った顔をして、結局は他の子の姿も見せてくれた。
あら、可愛らしいじゃない。
みんな違う精霊みたい。
『けど、さすがに全員と契約はムリよ?』
『わかってるわ、あなたには私と契約してもらいたい。できれば、この子たちはあなたの家族と契約してもらえたらと思ってる』
なるほど?
『他の子も魔力10,000必要なのかしら?』
10,000必要なら、理理と理哉は難しいかも知れない。
『いえ、この子たちは下位精霊なので、必要なのは3000くらい』
それなら大丈夫かも。
『ならまずは、私とあなたと契約してしまいましょう。どうすればいいかしら?』
『精霊契約の魔法陣を起動するから、私に名前つけてくれる?』
『私がつけていいの?』
世界樹の精霊は、お願い、と頷いた。
どんな名前がいいかしら?
天色と翠緑色の間の色って、どんな色かしら?
『宝石などで使われるティールブルーという色はいかがでしょう?』
あら、いい色かも。
ティルとかどうかしら?
『ティル、って名前はどうかしら?』
世界樹の精霊の、顔がパァって嬉しそうになって、頷いている。
『じゃあ、決まりね?契約しましょう』
魔法陣がサーっと広がり、私と精霊を包む。
『あなたの名前はティルよ』
魔法陣の光が一段強くなり、おさまった。
契約時にも、魔力2,000くらいだけど持っていかれたわ。
『契約完了ね、これからよろしくね、ティル』
『こちらこそよろしく、理織』




