新階層攻略開始のコトワリノハネ〜理哉
今日からやっと神凪ダンジョン6階層にチャレンジするんだ。
スノーピークが4階層を攻略開始してるみたいだから、負けられないじゃない?
7歳も年上なんだよ?リナ。
リリとハルは今年21歳だしさ。
リナが学校に行ってる間に、どんどん強くなってるし、レベルも上がってるっぽいし。
ずるいよね。
リナだって、たくさんダンジョン潜りたいのになぁ。
でも学校は行けってリリもハルもうるさいし、楽しくないんだけどな。
友達もいないしさ。
だって洗脳されてたとは言え、
嫌がらせしてきた人たちと仲良くなんて出来るはずもないよね?
そもそも仲良くなんてしたくないし。
早く卒業したいよ。
今年1年の我慢だ。
「5階層まで転移して、6階層目指すぞ」
リリが1階層の隠し部屋の転移装置前で言った。
「はーい」
「リナ、気が抜けるからその返事やめろって」
「いーじゃない。リラックスだよー」
はぁってハルがため息ついてるし。
「ラビットフット持ってるか?」
「持ってるよー」
「俺もある」
なんかリオのラビットフットの効果がすごいっぽいから、
コトワリノハネも試してみようってことになったの。
面白いものがドロップしたら、楽しいじゃない?
「行くぞ」
と言ったリリに、ハルと返事して、
5階層に飛んで、
確認済みの6階層への階段まで一気に走り抜けて、
6階層に足を踏み入れた。
だって、5階層の隠し部屋って中ボスの奥だからねぇ。
そこから階段まで特になにも出てこないんだもん。
それなら走り抜けるでしょ?
「リナ、マップ作成してくれ」
「わかったー」
自動マップ作成起動。
ここも1発で階層丸ごとマップに出来るね。
「マップ出来たよ」
この階層の魔物はなんだっけ?
マップの魔物一覧は、ホーンベア、ワイルドビッグボアか。
初のベアだ!
「転移装置どっちだ?」
んっ?転移装置は…あっちーと右斜め前の方向を指差す。
「魔物はどうだ?」
「いっぱいいるよ?ホーンベアとワイルドビッグボアだって」
「クマか!」
「あとデカいイノシシだな?」
「肉持って帰らないとね?」
「「だなー」」
「理織の踊りを見ないとだな?」
ハルが笑ってる。
「あれは踊り…なのか?」
リリはなんとも言えない顔してるんだけど?
「リオはなんであんなに運動音痴なのかな?」
誰に似たんだろうね?
スキップも出来ないし。
「前からホーンベア1体」
「了解、俺が行く」
ハルが盾持って行く気満々だ。
「はいよ。リナ、バフかけてやれ」
リリは仕方ねぇーなって感じで了承してる。
「わかったー」
リナは、ハルにいつものようにバフを飛ばす。
あれ?なんかもうひとつ重ねがけ出来そう?
こっそり剛腕のバフも乗せる。
ハルがホーンベアの突進を盾で受け止めて、
盾を振った瞬間、ホーンベアが飛んでいった。
「「「はっ!?」」」
3人で固まった。
あっ、肉!!!
「収納!」
間に合った。
インベントリにホーンベア入ってる。
よかった。
「リナ!?お前何やった?」
ハルに言われて、
「へっ?」
間の抜けた音がこぼれた。
「なんのバフかけたんだ?」
リリに再度聞かれて
「いつものやつ?」
「ぜってぇ、違う。いつもと明らかに違ったぞ!?」
「あっ、なんかまだエンチャント重ねがけが出来そうだったから、
試しに剛腕飛ばしたんだった」
そうだ。
そうだったわ。
飛んでったクマにビックリして、頭から抜けてたわ。
ちゃんと剛腕エンチャントされてたんだね。
リナ、4つ重ねがけ出来るね。
「…剛腕を足した、だと?」
「なんで剛腕にした?」
「えっ?クマが力強そうだったから?」
なんかダメだった?
「普通に考えて、盾振ったらクマ飛んでいくとかおかしいだろ?」
ビックリしたよねぇ。
って言ったら2人にどでかいため息つかれた。
「次からは剛腕なしで頼む。
今までの修行の成果がわからねぇじゃねぇか」
あっ、そうか。
「わかったー。いつものバフだけね?」
そっかそっか、確認も兼ねてるのか。
うん、ごめん。
なんか出来そうと思ったからついやっちゃったんだよね。
「あっ、左右からワイルドビッグボア一体ずつ」
「「りょーかい」」
2人にいつものバフかけて、
「リリ、火はやめてね。ボア燃やさないでね!肉持って帰るんだから!!」
「お、おうよ」
今、絶対言わなかったらファイヤーアローとか飛ばしたでしょ!?
ハルはアダマンタイトの盾でボアの突進受け止めて、ボアの防御破壊してトドメをさしていた。
リリは、ミスリル剣からウインドカッターを飛ばして首をスパンと落としていた。
2人とも鮮やかだねぇ。
「正面のクマ、リナ倒してもいい?」
「「おう」」
じゃあ、とりあえず虹色の雫起動して。
命中率上昇、威力強化、威圧エンチャント。
「ドレイン」
あれ?ドレインで弱らせて、アローで仕留めるつもりだったのに、ドレインだけで倒せた?
あっ、収納しなきゃ!
「リナ?」
「今何やった?」
2人とも声が低くなってるんだけど?
何?怖いんですけど?
「何って、ドレイン?」
「いやいやいや、ドレイン1回だけでクマ倒れないだろ?」
ハルにツッコミを入れられた。
「何をエンチャントした?」
「ん?虹色の雫起動して、命中率上昇と威力強化と威圧?」
なんかダメだった?
「それはお前、過剰攻撃だろ!?」
「そうなの?」
はぁーって何よ?
「リナ、自分がどのくらい強いとかわかってないだろ?」
「えっ?リナ強くないよ?」
2人で頭振るのやめてくれる?
「次、クマ来たらエンチャント無しでドレインやってみな?
さっきみたいにドレイン1回では倒れないと思うぞ?」
「じゃあ、ドレイン何回で倒れるか試してもいい?」
「好きにしな。危なくなったらフォローしてやるから」
「うん、お願いね」
隠し部屋に向かって歩きながら、クマとボアを探す。
「左斜め前から、ボア3体」
「俺がやる」
リリがやるみたい。
「さっきは風だったから、今度は氷行ってみっかな。ハル、フォロー頼む」
「はいよ」
リリは、剣を振ってアイスアローを飛ばした。
なんで剣から矢が飛んでいくの?
うわっ、眉間命中!
あっ、バフ忘れた!?
「リリごめん、バフかけてない」
「あっ?さっきのが、かかったまんまだぞ?」
えっ!?そんなに長く保たないよね?
「リナ、レベル上がったからじゃないのか?持続時間延びたんじゃないのか?」
そうなのかな?
「あっクマ来た。でも2体。1体ハルお願い」
「りょーかい」
リナは自分にエンチャントかけずに、クマにドレインを飛ばす。
やっぱり1度じゃムリよね?
なら次、ドレイン、ドレイン、ドレイン、ドレイン、ドレイン。
ここでクマが倒れた。
インベントリに収納。
「何回ドレインした?」
「6回」
「マジか、あのクマをドレインだけで倒せるのか」
「俺は、10回以上ドレインすると思ってたぞ?」
そうなの?
「ならさっき1回で倒れたのって、虹色の雫とかの効果ってこと?
エンチャントってそんなにすごかったっけ?」
リナのエンチャントはヘナチョコじゃなかった?
「あれ?俺らリナのエンチャントはすげぇぞって、何回も言ってるよな?」
「うーん、どうもリナじゃなくて、
リリとハルがすごいんだなーって思っちゃうんだよね」
「少しずつでいーから、リナはすげぇって感じてくれ」
難しいな?
リナすごくないもん。
「リナ、マップで転移装置部屋以外の隠し部屋とかないか?」
そうだった!
今日はラビットフット持ってきてるんだった。
マップになんかないかな?
「リリとハルもマップあるじゃん、なんかないか見てよー」
「あー、気づいちゃったかー」
ってひどくない?
「金色のマークって宝箱だったって聞いた気がするんだけど」
違ったっけ?
「いや、合ってると思うぞ?俺も金色は宝箱って認識してるぞ」
「リナとハルも金色マーク見てえんだな?」
「リリも?」
「俺のマップにも出てる」
おーこれは、なんか良いものが出てもおかしくないんじゃない?
「じゃあ、サクッと宝箱開けに行くか」
「そうしよー!」
って、ちょっと待って!?
「どこいくの?」
「あっ?だから宝箱開けに行くんだろ?」
怪訝顔のリリが言う。
えっ?だって、
「リナのマップの宝箱、あっちだよ?」
リリが行こうとしてた方向とは真逆なんだけど?
「はっ!?そっちに金色マークなんかねぇぞ?」
「リナだってそっちに金色マークないよー?」
「あー、俺はどっちにも金色マークないぞ?俺のマップは転移の隠し部屋の方向だ」
えっ?どうなってるの!?
なんでみんなマップ違うの?
魔物の位置は、一致してる。
転移の隠し部屋の位置も一致してる。
宝箱だけなんで?
「もしかして、それぞれの宝箱とかなんじゃねぇの?」
「どういうこと?」
「だから、リナが見えてる宝箱はリナの宝箱ってことじゃないのか?って言ってんの」
「それって、宝箱の中身が全然違う可能性もあるな。
個人に適したものが出たりしてな」
ハルの言った通りだったら、リナは何が出てくるのかな?
「どこから行く?」
「ハルは最後だな。転移の隠し部屋の方向だし」
「それでいいけど、リリとリナのどっち先いくんだ?」
「リナでいいぞ?待ちきれない顔してるし」
えっ?そんな顔してる?
でもなんか、ワクワクしてるよ?
「いーの?ならリナの宝箱から行こう!」
マップ見ながら、金色マークまで行ったんだけど、リナにしか宝箱見えなかったの。
なんで?
ワナはないみたいだから、開けたよ。
いつもはハルが鑑定してくれるのに、
今日は見えないから鑑定出来ないって。
しかたないから、リナ自分で鑑定したよ。
自信ないから、おっかなびっくり開けたよ。
ワナはなかったよ。
スリリングだった…。
で、中に入ってたのは、魔導具?みたいだった。
リナの鑑定だと、調整の魔導具としかわからなかった。
宝箱から取り出したら、リリとハルにも見えるようになったみたい。
ハルに鑑定してもらったら、魔力調整の魔導具って出たみたいだけど、詳しいことはわからなかった。
帰ったら笑理姉ちゃんに見てもらおう。
リナの次はリリの宝箱を開けに行ったよ。
ホントに見えないんだ。
変なの。
リリが宝箱手に取ったら見えた。
リナのは取り出さないと見えなかったのにね。
「俺の鑑定だと、属性の涙しかわからん。リナとハルはどうだ?」
「リナも同じだよ」
「俺も同じだ」
ってことは、笑理姉ちゃんに見てもらわないとダメだね。
「そのまま持って帰れる?」
「大丈夫そうだな」
リリは、宝箱ごとインベントリへしまった。
あとは、ハルの宝箱開けて、転移装置に登録するだけだね。
「ハルのは、どんなのだろうね?」
ハルの宝箱は、リナと同じで中身を取り出さないと見えなかった。
取り出したら消えちゃったけどね。
「手袋?」
真っ黒の革で作られてる手袋のようだ。
なんで手袋?
「剛腕の手袋だと」
剛腕かー。
「またクマ飛んじゃうね?」
「ってか、宝箱って誰が用意してんのか知らねぇけど、
絶対俺たちのこと観察してんだろ?ダンジョンマスターか?」
「剛腕とかタイムリーすぎだしな」
確かに。
リナはたまたま剛腕のバフ飛ばしただけだしねぇ。
「それなら、リナとリリのもなんか関係あるものだよね?きっと」
「笑理姉さんに鑑定してもらおうぜ」
「それがいいよね。使い方もわかんないしね」
リナたちは、転移装置に登録して1階層まで飛んで帰宅した。