コトワリノハネ〜理哉
生産職で支援職の多い神凪一家でも戦闘職は存在する。
少なくて目立たないだけである。
魔法剣士の理律 13歳。
盾役の遥翔 13歳。
付与術師の理哉 10歳。
子供と言っていい3人組だが、ギルドで正式に登録しているパーティであり、パーティ名は【コトワリノハネ】と言う。
基本的には、神凪ダンジョンで活動しているが、遥翔の家の一ダンジョンでも活動している。
今日は神凪ダンジョンの日である。
「リナ、荷物は?」
「よくぞ聞いてくれました。コレ見て見て!」
私が示したのは、ウエストにあるポーチである。
「それだけ?」
「もう、察しが悪いなぁ!お父さんが作った魔法のカバンなの!」
「「マジで!?」」
理律と遥翔の声が重なった。
「マジで!でもまだ試作って言ってたけどね。実践で試してくるって奪取してきたの」
お父さん渋々だったけど。
「お前、おじさん泣くんじゃないのか?」
「まさかぁ」
私は笑い飛ばした。
「リナ、中どんなかみたい」
「みる?見てみちゃう?」
理律も遥翔も興味津々で、ぶんぶん頷いてる。
「しかたないなぁー」
私は、カバンを開けてみせる。
「おー、なんか謎空間だな」
「ホントだ、亜空間ってやつ?」
「いや、詳しいことは知らないよー。聞いてもわかんないし」
「お前ってそういうヤツだよなぁ」
遥翔が相変わらずだなって、呆れた顔してる。
何よ、わかんないものはわかんないのよー。
私10歳なんだから、難しいことはわかんないの!
「まぁいいや、そのバッグどのくらい入るって言ってた?」
理律が確認してくる。
それは聞いてきたよ。
「部屋ひとつ分くらいって言ってた」
「結構、入るな。」
「だったら今日は魔物素材たくさん持って帰れるな。いつも魔石くらいしか持てないからな」
うん、うん。
今日も、がんばろー。
「あっそうだ、理人兄ちゃんが治癒草ってのがあったら採取してきてほしいっていってたんだけど、リリとハルは治癒草ってみたことある?」
「いや、知らないな、初めて聞いた」
「俺も聞いたことないなって言うか、リリって呼ぶなよ」
「いーじゃない、リリとハルでー」
ブゥーって膨れたら、俺の方が膨れたいとリリにほっぺたつつかれた。
「で、その治癒草って何に使うんだ?」
ハルに聞かれて、あれ?なんだっけ?って…
私の記憶力どうなってんの?
えーっとなんだっけ?
魔力ポーションじゃなくて、あー?
「そうだ、あれだ。苦くないポーションって言ってた」
と思う。
自信ないけど。
「マジか、リヒ兄のポーション傷とかには効くけど、まじマズくて飲めないからな。飲めるようになるなら、探索にほしいよな」
「だな、でも治癒草がわからねぇんだが」
それねー。
「理人兄ちゃんもどんなのかわかんないらしくて、困ってた」
3人で、じゃあダメじゃんって諦めた。
ダンジョンに潜って、2階層。
1階層はスライムがたまにいるくらいなので、スルーして2階層へ。
ここも、スライムはいるけど、なぜか走るキノコがいる。
キノコは倒すと、なぜか小さな魔石とでかいマッシュルームをドロップする。
このマッシュルームおいしいんだけど、でかくて、いつもは荷物になるから持って帰れなくてちょっと悔しい。
今日は魔法のカバンに入れてたくさん持って帰るよ。
「ちょっとリリ、剣に火魔法付与するのやめてよー、キノコ美味しそうなニオイするじゃない。お腹空くからやめてーー」
「ホントそれな!」
「火魔法が1番使いやすいんだよ」
「使いやすいのしか使わねぇから、他の属性上達しねぇんだろ?」
「リリは剣に風魔法付与して、剣振ったらウィンドカッターとか出せたりしないの?土魔法で、ロックバレットとかさー」
「それ面白そうじゃねぇか、リリやってみろよ」
「簡単に言うなよ、やったことないんだから」
「だから練習しなよって、神凪か一じゃなきゃ練習出来ないんだからさ」
「防御は盾役の俺がやるんだから、攻撃がんばれ!」
「ハル、余裕あったら、キノコに重力かけて足止めしてくれる?リナもキノコ倒してレベル上げたい。レベル上げないと使えるバフとか増えない」
「了解、ちょっと待ってな」
ハルはリリを攻撃から守りつつ、私のためのキノコの足止めをしてくれた。
「ありがとう」
「けど、お前攻撃手段なくねぇ?」
それは、そうなんだよね。
なんとかボールとかなんとかアローとかなんちゃらニードルとか使えないんだよねぇ。
でも、ちょっと試してみたいことあるんだよ。
「デバフでなんか出来ないかなって考えてたから、ちょっと試しにやってみてもいい?」
「おう、やってみな」
いくよー。
「体力低下!」
これだけじゃムリか?
「ドレイン!」
キノコはしおしおになって消えた。
「やったー!」
わーいって喜んでたら、ハルに笑われて頭撫でられた。
「あれなら、近づかなくていいからケガの心配もなさそうだな」
「おい、ハル。こっちも援護してくれっ」
あっごめん、リリ放置してた。
わっ、キノコあんなに群れて出てきたことなくない?
「多くない?」
「多いな」
「って、いいからお前らも戦えって」
「おうよ」
ハルは大盾を振り回して、キノコを吹っ飛ばして行く。
すごい筋肉?筋力?あっ重力いじって軽くしてる?
スキルとかギフト使う時って、魔力消費してるの?体力の方?
今度2人からちゃんと聞いておこう。
なんのバフかければいいのかわからないや。
とりあえずキノコに体力低下のデバフを飛ばす。
多少は効いてるみたいで、動きが鈍くなった。
リリとハルにどんどん倒されて行く。
すごい。
2人の動きを捉えている視界の端に何かが映った。
「リリ、ハル。右奥のキノコ、色違うみたい」
「なに?」
「リナ、あれにさっきみたいにドレインかけれるか?」
ここから?
「遠くてムリだよぉ」
「わかった。リリ、あいつなんとかしてくれ。こっちは、俺とリナでなんとかする」
「リリ、速度上昇!」
「サンキュー、おりゃーーーー」
一気に色違いのキノコまで距離を縮めている。
バフかけたとはいえ、速すぎるでしょうよ。
「リナ、届くのはドレインかけろ。消えなくても萎れたら俺がつぶす」
わかったーと返事して、キノコに向かって、ドレイン!ドレイン!ドレイン!ドレイン!ドレイン!ドレイン!ドレイン!ドレイン!
かけられるだけかけた。
さすがに魔力ない。
何体かは、キノコ倒せたっぽい。残りはハルがつぷしてくれた。
魔石とマッシュルームが散乱していた。
「ぶっ飛べーーーー」
リリの声が聞こえて、振り向いたら剣からウィンドカッター飛ばしていた。
出来てるじゃん!
色違いのキノコは真っ二つにされて、消えた。
いつものキノコよりも少しだけ大きい魔石と、なぜかマツタケが10本ほどドロップした。レアキノコだったのかな?
なんかいつもより、すごくすごく疲れた。
「リリ、ハル。今日はもう帰ろう?」
「だな、すげぇ疲れた」
「じゃ、スライムとキノコに気をつけて戻るぞ。今日は荷物ないから楽だな」
「どれだけ倒したか覚えてないけど、魔法のカバンに入ってる分は魔石の個数とかわかるのか?」
「どうだろう?確認してみる」
魔法のカバンに手を入れると、リストと個数が表示された。
「魔石、23個。マッシュルーム18個。マツタケ10本。これだけあるみたい」
「結構あるな、どう分配する?」
「あー俺マツタケ4本欲しい。あとはお前らで分けていい」
ハルが珍しく最初に主張してる。
いつもは魔石だけだから、等分してるんだけど、今日はキノコが大量。
「マッシュルームは3で割れるから、6ずつでいーじゃん?マツタケはオレとリナが3本ずつで、魔石はリナが11で、オレとハルが6ずつでどうだ?」
「リナ、もらいすぎじゃない?」
「お前今日頑張ってたからいいと思うぞ?」
「それなら、ありがとう」
ダンジョンを出てから、分配して帰宅した。
疲れたけど楽しかった!




