魔力回路と循環
「ママ、パパのポカポカぐるぐる、みて」
「どうしたの?理織?」
「ママのきらきらおめめで、パパのぐるぐるみて?」
もう一度、言ってみる。
通じるだろうか?
連理の魔力視で、理の魔力循環を確認してほしいのだけれど。
「理織のじゃなくて、パパの見るの?」
「あい」
連理は首を傾げながら、理に言ってくれる。
「理織が言ってるから、理さん魔力循環してもらえる?」
「いいけど、何の意味があるんだろうな?」
「わからないけど、理織にお願いされたから」
と、連理と理は笑う。
「いいかい?始めるよ?」
「えぇ、お願い」
私が見えるのは、魔力が胸のあたりで詰まってるように見えるくらい。
連理には、どう見えるのだろうか?
連理は理の動く魔力を見て首を傾げた。
「理さん、ちょっとストップ、理人も循環してみてくれない?」
「いーけど、行くよ?」
理の時と同じようにみて、理理と理哉にも循環させる。
「理さん、もう一度お願い」
「わかった」
私には、理人と理理と理哉はスムーズに循環しているように見えたが、やはり理は詰まってるように感じる。
「やっぱり、そうだわ。理さん、魔力循環の回路がたぶん変。本来の回路じゃないところを流れてるから魔力が引っかかっているような、詰まっているような流れ方してる」
本来の回路じゃないところを流れてたのか。
違和感はそれだったのか。
「えっ本当に!?」
理は、目を見開いて驚いている。
そりゃビックリするわよね。
「たぶん、理理のほうが詳しくわかると思う。理さんのことスキャンしてみてくれない?」
「リノ?」
連理に首を縦に振られ、理理はわかった、手をきゅっと握りしめた。
「お父さん、どこかに横になってくれる?その方がスキャンしやすいんだ」
理は、わかったと絨毯の上にゴロリと仰向けで横になった。
みんなは2人から少し離れて、見守る。
理理は、理に手をかざして魔力を使いスキャンしているようだ。
「ここだわ、胸の真ん中あたりに魔力が流れてない場所がある。その近くに細い回路が出来てて、かろうじて循環できてるだけみたい。流れてない本来の回路に魔力流してあげないと、魔力総量の上がりが悪いかも」
「理理、治せる?」
連理が聞く。
「ムリしなくていいけど、治せるならお願いできるかな?」
理も理理に確認する。
理理は、笑って言った。
「リノは聖女よ?治せるに決まってる」
理理、自分で聖女って言ったよ?
あんなに嫌そうにしてたのに?
「でも、治癒の前に、ちょっと休憩させてー、飲み物飲ませてー、スキャン思ったより魔力使ったみたい」
「もちろんだとも。別の日でも問題ないよ」
理の言葉に、理理はムッとして、
「イヤよ、絶対今日治すんだから」
「ありがとう」
理はそう微笑んだ。
「お礼は治ってから言ってよね」
とりあえず、みんなでお茶にすることにした。
「リオはどうしてわかったの?」
なにが?と首をかしげたら、
「お父さんの魔力循環が変って言ってたでしょ?」
「きらきら、ここ、ないないしたよ」
ここのときに胸のあたりさしてみた。
「そうなんだ、私には見えないよキラキラ」
理哉はそう言った。
見える人見えない人がやっぱりいるんだね。
「私はスキャンしないと見えないよ」
と、理理が言うと、理人も俺も見えねぇなって。
「魔力の回復時間かかるなー、昼寝したら早く回復するかな?それよりも理人兄さん?早く魔力ポーションとか作ってよ」
魔力ポーションないのか。
「まだムリだな、今やっと苦くないポーションに取り掛かってるところだからな」
苦くないの大事よ。
「あー傷には効くけど、苦くて飲めないポーションって微妙だもんね」
理理がしみじみ遠い目をしていた。
理理って、魔力回復できるけど自分にはできないのかな?
魔力回復に魔力使うから意味ないのかな?
それなら、理哉の付与でなんとかならないのかしら?
「りなねえ、りのねえ、ふよ、かいふく、ない?」
なぜかみんなに一斉に見られて、ビクッとした。
「なに?」
怖いからやめて?
「リオ、今リナにリノを回復できないのか聞いたのかな?」
私は、コクンと頷いた。
なんかそういう付与とかあるのかなーと思ったんだけど、検討違いだったかしら?
「考えたことなかったわね」
連理が目からウロコねー、そんなことを言う。
「回復はリノ姉の担当だと思ってた」
理哉の言葉に、理理が、
「リナ、なんか回復出来そうな付与あるかな?」
「えっ?なんだろう。魔力強化?魔力消費量減?」
「それかけてみて」
「両方?」
「うん、ダメなら解除できるよね?」
「それはできるよ」
「じゃあお願い」
理哉は、マジで?って顔して、連理と理に、いいの?と確認している。
「試しにやってみなさい」
「わかった。行くよ、リノ姉」
理哉は魔力を練って、理理にむけて、
「魔力強化!魔力消費量減!」
私はこっそり鑑定を使う。
理理にバフがかかった。
魔力が回復している。
すごいかも。
理哉、詠唱破棄持ってたわね、だからエンチャント名だけで付与できるのね。
ちょっとうちの家族すごくない?
「魔力回復したよー、すごいね。リナ」
「良かった、なんか変になったらどうしようかと思ったよ」
「リナは、もっと自信持ちなよ、すごいよ」
理理に褒められて、えへへって、照れている理哉かわいいね。
「よし、お父さん、治しちゃおうよ」
「大丈夫なのか?疲れてないか?」
理は自分よりも理理の心配をしている。
「大丈夫!さっさとそこに横になって!」
「わかったよ」
若干苦笑いの理に、連理が優しく微笑んでいる。
魔力上手く流れるようになりますように。
理理を信じよう。
「いくよー」
理理は理の胸に手を乗せ、治癒魔法を発動させる。
いや、スキャンも使ってるっぽいね。
そりゃ魔力足りなくなるよね。
5分くらい理理が奮闘している。
大丈夫かな?
理の全身が一度ピカっと光った。
「これで大丈夫だと思う」
理理が疲れたのか、座り込んでしまった。
「お母さん、お父さんに循環してもらって確認してー」
「わかったわ、理さん。循環いける?」
理は頷いて、始めるよと声を掛けて魔力を動かし始めた。
「ちょっと理さん?一気に動かしすぎよ」
「違うんだ、今までと同じことしかしてないんだ。」
理が戸惑いを隠せていない。
いや、連理も私もみんなもかな。
うわーすごい勢いで循環してる。
今まで滞ってた分が巡っているのだろうか?
「これは間違いなく、詰まりが解消したわね」
理の魔力総量すごい爆上がりしそう。
『アレドこれだけ循環したら、魔力総量上がってギフト解放されないかしら?』
『可能性大ですね。循環が自然に落ち着くまで理様動けないかも知れません』
えっ?そこまで?
確かにあれだけ体内を魔力が巡ってたら、寝てた方が楽だと思うわ。
「すまない、動けそうにないからしばらくここで休むことにする」
「その方がいいわね。飲み物用意しとくわね」
「ありがとう」
理はそのまま眠りについたようだった。
この時眠っている理の中で、ステータス更新のぴこーんと言う音が何度となく鳴っていたのは、理を含め誰も知らないのだった。




