あの美女は誰だ?〜理編
ティルイーリオの広告ポスター?パネル?が話題になっている、らしい。
〔あの美女は誰だ!?〕
って、ネットで騒がれてるらしい。
俺の婚約者だっつうの。
ってか、グラビアアイドル時代も人気あったんじゃねぇの?
認知度それなりにあるんだと思ってたけど。
いや、俺は知らなかったけど。
雑誌とか見ねぇから。
って、話してたらお袋に怒られた。
「何言ってるのよ、ティルイーリオで全身磨いてダイエットの実で抜群のプロポーションに仕上げたのよ。さらに綺麗になったでしょ?」
そうは言うけどよ…?
「俺的には、ずっと可愛いしずっと綺麗なんだけど?」
ニコはぽっちゃりしてても可愛いんだけどな?
お袋に苦笑いされたけど、なんでだ?
「兄貴、すげぇ話題だな」
「あのポスター?であんな話題になるのか?」
えっ?って顔された。
「違うよっ!動画だよ動画」
「動画?」
何のことだ!?
「あれ?聞いてないの?」
何を?
「知らんけど?」
なんで知らないかなぁって、スマホで動画を見せてくれた。
なんだこれ!?
「すげぇな。ニコだ。余すことなく間違いなくニコだ。これ撮った人天才か!?」
真っ白なノースリーのワンピースを着て、長い髪を風になびかせて、笑っている。
「ってか、これいつ撮影したんだ?もうすぐ10月終わるぞ?」
「それ室内だよ」
「えっ!?ウソだろ?」
どこか南国だろ!?
「今の映像技術すごいだろ?まっ魔法も使ってるみたいだけどな」
「そうなのか。言われても室内には思えないな。それに、ニコが楽しそうだ」
「だろ?話題になるの当たり前だろ?」
あーこれは話題になるな。
あの美女は誰だって、なるな。
「ニコが綺麗だな」
「この動画に関わってくれたカメラマンさん、メイクさん、ヘアメイクさん、衣装さんはカンナギエージェントの専属になってくれてる」
「マジで?よく無名の立ち上げたばかりの弱小芸能事務所に来てくれたな?」
だって、ニコと輝理と煌理の3人しかいねぇんだぞ?
「メイクさんは、元々果梨さんの知り合いだったみたいで、そのメイクさんからの紹介で他の人も集まったんだよ。面接の時同席したんだけど」
「面接に同席?」
「あーほら、変なの紛れ込んだらまずいでしょ?スパイとか色々」
あーなるほど。
「で、話聞いたら全員、グラビアアイドル時代からの果梨さん推しなんだって」
「推し?」
推しってあれか?
アニメのキャラとかアイドルとかを応援する的な?
「そう、自分ならもっと輝かせられるのにってずっと思ってたんだって」
「なるほど?」
ニコはいつも輝いてるぞ?
「で、話したら一も二もなく承諾してくれたみたい。で、鑑定にも真偽にも問題なかったから、採用になったのさ」
「その結果がこの動画ってことか」
「そゆことー」
すげぇ人材にきてもらったな。
「なんていい仕事してくれるんだ!しかしなんで俺何も知らないんだ?」
「だって兄貴、経営ノータッチじゃん」
そうだった。
俺、神凪コーポレーションは品物卸すだけだったな。
「それはしかたないけどさ、ニコのことは教えてくれても良くないか?」
「兄貴でもそんな風に思うんだな?まぁでも、もうすぐ籍だけ先に入れるんだろ?式は来年だけど」
「そうだけど」
ちゃんと結婚式の準備も始めてるからな?
ニコの望み通りにな。
「ちなみに、この動画ギルドでも流れてるぞ?ダイエットの実の自販機のところで」
「マジで?」
「女性探索者のティルイーリオ顧客獲得のために」
「って、これは男の探索者も引っかかるだろう。ニコ綺麗すぎる」
目の前にいたら、ぶっ飛ばしちゃうかもな。
「変なのが出てきたら対処するよ」
大丈夫なんだろうな?
頼むぞ?
しかし、なんだろうな?
「綺麗な婚約者持つと感情がこんなに疲れるのか?」
「お互い様じゃねえ?」
「何がだ?」
お互い様ってなんだよ?
「あーわかんないならいーよ」
俺がこの言葉の意味を知るのは、まだまだ後のことだった。




