精霊王
時間は夏休みまで遡る。
「ママ?シュウに精霊のこと…」
ティルから毎日、まだ?まだ?ってプレッシャーがすごい。
「あーそうよね、精霊王と契約させたいんだったわよね」
「ティルが早く呼びたいって」
「とりあえず裏庭を見せたら?」
「いーの?」
「いーわよ、ティルのテリトリーだもの。精霊王がティルの配偶者なら秋くんが行かないのはおかしいもの」
確かに、そうよね。
「でもおどろくよね?」
「それは、しかたないわねぇー、慣れてもらうしかないわねー」
確かに…
「午後いってくる。その前にティルに、連れていくけど契約は明後日以降っていわないと」
「ずっと待ってるんだったかしら?」
「いっかげつくらい」
あらあらまぁまぁって連理は笑ってる。
「ティルとはなしてくるー」
「はい、いってらっしゃい」
『理織、契約!?』
『ティル、契約は明後日以降よ』
『なんだ、そうなの?』
『ただ今日1回連れてくる。精霊の存在とかまだ知らないのよ。ここで見た方が早いでしょ?』
『そっか、まだ来たことないよね。すっごい驚きそうね』
『やっぱりそう思う?』
『そりゃそうよ。裏庭に別の空間あって、その中に精霊がたくさんいたり、世界樹育ってたり、果樹の樹あったり、聖水の泉あったり、ミスリル鉱山あったり盛りだくさんよ』
『しかも精霊王と契約して、だもんねぇ』
大丈夫かな?シュウってば…。
「リオリ…なにここ?えっ?どうゆうこと!?」
あーやっぱり驚くわよね。
「りおと契約してる精霊の作った空間だよ」
「はっ!?精霊?えっ!?契約!?」
「とりあえず中入って!」
私はシュウの背中を押して、裏庭空間へ押し込む。
「ティルー、いる?」
「理織、いらっしゃい。あら、この子が?」
「そうよ、シュウだよ。シュウ、私と契約してる世界樹の精霊のティルだよ」
「えっ!?せいれい?せかいじゅ!?」
「こんにちわ、はじめまして。理織と契約している精霊女王のティルです」
「精霊女王…?」
シュウが私とティルの顔を行ったり来たり見ている。
「おどろいたよね、ごめんね。ティルもいきなり精霊女王とか言わないでよ」
「どうせ話すんだしいーでしょ?」
いやまぁそうかもだけど。
シュウの口があんぐりと開いたままになっちゃってるじゃないのよ。
大丈夫かしら?
「シュウ?大丈夫?おーい?シュウくーん?」
「リオリ?説明してくれる?」
あっ、だよね。
この世界にダンジョンができた時に別の世界からティルたちが巻き込まれてきたこと。
世界樹がたまたまここで育ったこと。(私がタネ作ったことはまだ内緒よ)
世界樹の聖霊力で、精霊が集まってきて本来の姿になりつつあること。
ここにいる精霊のほとんどが、神凪の人たちと契約していること。
魔力の樹の実は、ここで育てられてること。
などを簡単に説明した。
「えーっと、わかった?」
「世界樹の聖霊力がこの空間にあって、精霊は過ごしやすい場所なんだな?で、こんなに精霊がいると?」
「そうだね、ここ以外で精霊を見たことはないかな」
「俺はなんでここに連れてこられたんだ?」
まだ、そこは何にも説明してなかったね。
「それは私が説明するねー、さっきも言ったけど私ねこの間、精霊女王候補から精霊女王に進化したの」
はっ?っと、シュウが私を見るので、頷いた。
「それでね、精霊女王になるとね、精霊王を呼び出すことができるようになるの」
「精霊王?」
「そう、精霊王!」
精霊女王も精霊王も、パワーワードよねぇ。
「それで?なんのために呼ぶんだ?」
「精霊女王はね、精霊王の王妃みたいなものなのよ」
ティルが精霊王の話をするときは嬉しそうだ。
待たさせてごめんね。
「つまり、旦那さんを呼ぶってことか?」
「そんな感じね」
「わかった」
わかったの?
「それでね、精霊王を呼んだら、誰かと契約してもらわないとダメなのよ」
「もしかして、それが俺…?」
話の流れでわかるわよねぇ。
「そうなの!他の神凪の人ってすでに契約済みだし、まだ誰とも契約してない魔力の多い人じゃないとダメなのよ。毎日魔力分けてもらわないといけないから」
「ほんとは、ティルは1ヶ月くらい前から精霊王を呼び出せる状態だったんだけど、シュウの魔力を増やしてる最中だったから、保留になってたのよ」
「俺の魔力量で足りるのか?」
「わからないから、とりあえず100億超えてからにしようかなって、契約は明後日以降よって言ってたの。ただその前に精霊の存在をシュウに教えておかなくちゃと思って連れてきたの」
「えーと、ティルさん?」
「ティルでいいわよ」
「んじゃ、ティル。精霊王は呼び出したらすぐに契約しないとダメなのか?」
「何日かは大丈夫だけど、なぜ?」
「さっきの話だと、毎日魔力いるんだろ?ずっと同じ魔力量なのか?増えたりしないのか?100億で足りるのか?実際のとこはどうなのか確認したいなと、足りないなら魔力の実食べるの継続したほうがいーだろ?」
シュウが色々考えてるわ。
「契約すること自体はいーの?」
私はシュウに確認してみる。
「それはいいよ、リオリもティルと契約してんだろ?なら俺も問題ない」
ちょっと、私主体に考えなくてもいーのよ。
「へぇー仲良いんだ?」
「ちょっと、ティル!?」
余計なこと言わないの!
「で、ティル?精霊王呼んでくれないか?」
「いいの?」
ティルが私に確認するように顔を見る。
「シュウがこう言ってるから」
「ありがと!!」
私とシュウを抱きしめた。
私もシュウもびっくりしたわよ。
急にギュッてされたから。
ティルは私たちから少し離れて何かを唱え出した。
精霊語?とかなのかしら?
まったく聞き取れない。
どのくらいそうしていたのか、ティルの正面の空間が一瞬強く光ったあとには、ティルより背の高い地面に届きそうなほどの長い銀髪の美丈夫がそこに立っていた。
「精霊女王よ、呼ぶのが遅いのではないか」
「ごめんなさいね、契約できる人を探してたのよ」
「では、見つかったのだな?」
「えぇ、あの子よ」
銀髪さんは、くるりと振り向いて、シュウを見る。
「童が我と契約するものか?」
「ティルにお願いされたからな」
「ティル?」
「私のことよ、理織がつけてくれたのよ」
「こんにちは、ティルと契約してる理織です」
「ふむ、なるほど。なかなかの魔力量だな。そっちの童は少し足りぬな?」
「その確認がしたかったんだ。契約したら毎日魔力渡すって聞いたが、実際契約したら精霊王はどのくらいの魔力が必要なんだ?」
「ふむ、しばらくは慣らしで10億くらいあればよかろうが、そのうち最低でも1000億は必要になろうな」
「マジで?」
シュウは私に顔を向ける。
「魔力の実、延長決定だね」
「ねぇ?しばらくは10億だと今日もう契約できる?」
「あーできるわね、シュウどうかしら?」
「いいけど、契約って何するんだ?」
「我に名前をつけよ」
「名前?どんな?希望は?」
「うむ、ティルと似た音がよいな」
ティルに似た感じの音の名前?と、シュウがブツブツ言いながら考えてる。
「うーん?ウィル?フィル?アイル?シェイル?シェリル?カイル?ナイル?チェイル?ライル?ギィル?ミィル?…なんか気にいったのあったか?」
「うむ、ギィルがよいか?エッジがきいておる。ティルはどれがよい?」
「ギィル、カッコいいと思うよ?」
「そうか、なら我の名は、ギィル。童契約するぞ」
「童じゃなくて、秋だ」
「うむ、了解した。秋よ、契約だ」
「わかった」
魔法陣が光った。
契約が完了したみたいね。
「ティルとギィル…私もギィルって呼んでいいのかしら?」
「よいぞ?理織だったか?」
「そうよ、じゃあギィルってよぶわね。2人はこの空間で生活することになるのかしら?」
「そうね、広げる必要はあるけど、私は基本ここにいるわ」
「ギィルは?」
「我は、ティルと一緒におるぞ?よろしくな秋よ」
「あーよろしく」
握手なんかしちゃってるわね。
「ティル、じゃあ今まで通りここはティルのテリトリーってことでいいのよね?」
「あー理織、ギィルの方が私より上位なのよね。だからこれからはギィルのテリトリーになるわね」
「そうなの?私たちに何か影響ある?出入りできなくなるとか?世界樹の葉もらえないとか?聖水もらえないとか?」
「それはないわ。その辺は変わらないわよ。ただ今まで理織の魔力で広げたり強化してきたけど、今度から秋にメインでやってもらわないとダメになるかな?」
「それは、ギィルのテリトリーだからってこと?」
「そうゆうこと」
「シュウ大丈夫かな?そんな頻繁じゃないと思うけど」
「わかった、たまに広げたりすることがあるんだな?」
「そうなのよー、世界樹大きくなるし、他にもたくさん樹はあるし、湖や畑や鉱脈とか色々あるのよ。詳しくは理織に聞いてね。私はギィルにこの空間案内するわ」
「わかった、けどこの空間ってなんか呼び方ないのか?ないと不便じゃねぇ?」
シュウの言葉にギィルが、ふむ、と少しだけ何かを考えて、
「理織よ、ティルの名前の由来はなんだ?」
「ティールブルーって天色と翠緑色のあいだっぽい色の名前よ?」
「世界樹の精霊だからか?」
「そう、ティルの見た目の色から決めたの」
「うむ、ならティールブルーでよかろう?」
「わかった、ティールブルーな」
あれ?ちょっと待って?なんかすっごくイヤな予感がするんだけど?
あーーー、やっぱり!?空間自体が光った。
(ティールブルーの存在が確定しました)
確定しちゃった。
あれ?私にも聞こえてる。
『アレドも、聞こえてる?』
『聞こえてます』
「リオリ?なんか聞こえる。ティールブルーが確定したって…?」
(ダンジョンティールブルーに組み替えられました)
やっぱりかーーー。
どうすんのよ!?
「ダンジョンティールブルーっていってたわよ?理織!?」
「我にも聞こえたぞ?」
ダンジョンティールブルー
神凪理織と海棠秋の魔力でできている空間。
名前が確定したことで、空間そのものが確定した。
どこの世界にでもあって、どこの世界にもない空間。
ダンジョンマスターの秋、ダンジョンサブマスターの理織と繋がっている間は拡張し続けて、スタンピードすることもない。
魔物も召喚出来るが、契約してしまえばティールブルーの住人となる。
ただし、特例として理織、秋以外の神凪関係者との契約でもティールブルーの住人と認める。
契約がなされなければ、いずれ魔物に変異する。
「えーっと?この空間がダンジョンティールブルーになりました。ダンジョンマスターはシュウで、ダンジョンサブマスターがりおみたい。なぜこうなった?」
「えっ!?ダンジョン!?ダンジョンマスター!?俺が!?」
「鑑定にそう出てる。ステータス見れる?」
「うわっ、職業にダンジョンマスター(ティールブルー)って増えてる」
私のステータスにも増えてるのよ。
ただリオランドの方は、なぜか表示されない。
よかったけど、よくないよね?
『アレド、リオランドのダンジョンマスターで、ティールブルーのダンジョンサブマスターってなんなのよ』
『笑うしかありませんね。でもこれで秋様も不死ですね』
あっ…そうよね…?
「リオリ?ティールブルーを鑑定できる?」
「シュウとりおがティールブルーと繋がってる限り、拡張し続けるみたい。あとスタンピードは起きないみたいよ?で、ここにいる精霊と精霊以外にも他にいるのかな?は、りおとシュウ以外でも神凪関係者と契約してれば、ティールブルーの住人って認識みたい。契約してないといずれ魔物に変異する可能性があるみたい」
ステータスのダンジョンサブマスターをタップしてみる。
リオランドと仕様は同じみたい。
「シュウ、ステータスのダンジョンマスタータップしてみて?」
「あっ、なんかでた。うわっここにいる精霊とか全部わかんのか。えっ?契約してない精霊こんなにいんのか?どーすんだ?」
「そこは神凪の人に相談する。ダンジョンになったことも、ダンジョンマスターやらサブマスターになったことも伝えないとダメでしょ?」
「あーだよな」
「ティルとギィルも一緒にきてくれる?」
「わかったわ」
「よかろう」
わかってた、わかってたけど、速攻で緊急招集かけられたわ。
連理も理も理人も理理も理哉もフリーズしてからの対応が早かったわ。
ほんとなんでこうなった!?