ドリルと絵本
ステータスが読めないフリをして、読めるようになりたいと言ったのを、連理は覚えていたらしく、ひらがなの一覧表と書いて覚えるドリルと、童話の絵本をもらった。
本当は読めるんだけどね。
なんで読めるのかしら?
もしかして、これが称号のバフみたいなもの?
それとも転生特典?
どっちでもいいけど、読めるのはありがたい。
でも書くのは、難しいんですけど…
理織の手が小さすぎる。
ドリルの真似して書いてみるけれど、何やら書きにくいカタチしてるんだよね。
えっ?どっちにまるく?
えっ?くるって書く文字多くない?
読めても書けないのは、ちょっといただけないわよね。
頑張るわ、小さい手でだけれども。
あーよれよれしてる…
これ慣れるの?ちゃんと書けるようになるの?
謎だわ。
手が疲れたから絵本読むことにしようかな。
絵本は、MORI no OKU kara KUMAsanと言う歌?をモチーフにしたものらしい。
連理がそう言っていた。
《ある日、花の咲いた森の道で女の子がくまさんに出会う》
かわいらしい絵が描いてありますよ。
けど、クマに出会う?
どれだけ森の奥に行ったのかしら?
ずいぶんと明るい森なのね。
花が咲いてるなんて。
《くまさんに、女の子は逃げなさいと言われて逃げる》
まぁクマに遭遇したら、逃げるわよね。
でもこのクマ喋ってるじゃないの。
クマ獣人?
だったら逃げなくても大丈夫なのでは?
喋るけどクマの魔物?
それなら、討伐しないとだめじゃないかしら?
《逃げなさいと言われたので逃げたら、くまさんが追いかけてきた》
はっ?なんで、追いかけてくるの?
そもそも逃げろと言った意味は何よ?
弱いものを甚振る感じなの?
なにこの絵本。
怖くない?
元の歌も怖くない?
地球どうなってるの?
《女の子の落とし物を届けるためにクマさんは追いかけてきた》
なんだ、落とし物を届けにきただけなのか。
いやでも、クマ追いかけてきたら戦えないなら、恐怖しかなくない?
やっぱり怖いんですけど?
《お礼に女の子は歌を歌う》
はっ?歌う?なぜ?
お礼に歌う意味がわからないのですけど…
なんだろう、この絵本かわいらしい感じにまとまって終わったけど、怖くない?
絵はかわいいけど、怖くない?
『アレドどう思う?』
『幼児用の絵本なので、そこまで考えなくてもよいのではないですか?確かに意味不明ではありますが…』
なんで、連理はこの絵本選んだのかしら?
本当の幼女達は喜ぶの?この絵本で?
『なんかもっと普通の絵本にしてほしい…』
『あっ、わかってらっしゃると思いますが、この世界、地球には、獣人もエルフもドワーフもいませんからね?』
『いないの?』
『いません、人族のみですね』
『魔物は?』
『魔物は、ダンジョン内のみのようです。今のところスタンピードなどは起きていないようですね』
そうなんだ?
私の住んでた魔の森みたいのは、ないのね。
『じゃあ、なおさらこの絵本の意味がわからないんだけど』
『創作物なんですから、意味不明でもいいんですよ』
そうなのかなぁ?
今度はもっと違う絵本にしてほしい、いやむしろ私に選ばせてほしいんですけどーーー。




