幼稚園に通うらしい
理哉が中学生になった。
理理と理律、遥翔が高校生になった。
理人は高校を卒業して、本格的にポーション作りをしている。
毎日工房にこもって作業している。
羨ましい。
私は幼稚園に入園した。
なぜみんな同じ格好をしているのかしら?
『アレド、リアル5歳児ってこんななの?』
『そうみたいですね』
『それなら、私、異常よね』
『否定できませんね』
なんなの?
ホントにこれが現実なの?
こんなクソガキしかいないの?
人のものを貸せと無理矢理取ろうとする。
髪の毛を掴んで引っ張ろうとする。
叩こうとする。
泣く。わめく。
自分の持ち物を自慢する。
ダンジョンにはまだ入ってない子の方が多いみたい。
鑑定したら、数人だけ職業持ってるからダンジョン入りしたんだろうけど、体力も魔力も1桁しかない。
そもそも、幼稚園の先生たちのステータスもひどい。25歳前後なのにありえなくない?
体力も魔力も3桁しかない。
スキルも1つとか2つくらいだ。
なんで?
『アレド、これが普通の人のステータスじゃないわよね?』
『ダンジョンに潜らない人は、もしかしたらこんな感じなのかもしれませんよ?』
ウソでしょ?
だって5歳でダンジョンに入って職業とギフトもらうのは、魔力上げるためって言ってなかった?
それなのに3桁しかないって、魔力上げるために何もしてないんじゃないの?
私は絵本を読むふりをしながら、色んな人を鑑定していた。
さっきから、私を叩こうとしているコイツをなんとかしてくださいな、先生?
なんで、放置してんのよ?
仕事してくださいよ?
まぁ、一生当たることはないと思うけど。
ほら、私瑠理にもらった蜜魔石のピンしてるじゃない?
物理防御と魔法防御のついてるやつ。
叩けるわけないじゃない?
しかも薄い結界を身体に纏わせてるから、叩こうとしてるやつの方がダメージおってるわよね。
汚い手で触ろうとするのはやめて欲しいのよね。
こんなところに2年も通うって嫌がらせに近い。
地獄よね。
でも、唯一の救いは、輝理と煌理がいることくらいよね。
癒しよ、癒し。
相変わらず双子はそっくりで、ステータスもそっくりだった。
体力は先生たちと変わらない。
魔力上げるのに、振り切ったのかしら?
魔力は、おーもうすぐ5桁じゃないのよ。
頑張って循環させたんだね。
ちゃんと今も循環させてる。
スキルも増やしてるし、スキルレベルも上げてる。スキルポイントも増えてるね。
上出来ね。
ほら、やっぱり先生たちはサボってるだけじゃないのよ。
先生とは、呼びたくないレベルね。
「りおり、たたかれてるけど、だいじょうぶなの?」
「りおり、いたくないの?だいじょうぶなの?」
「かがり、きらり、当たってないからだいじょうぶ。だけどうざい」
「せんせーにいう?」
「せんせーとこいく?」
「そうね」
「それともはんげきする?」
「それともなかす?」
ちょっと双子?そんな性格だったかしら?
「反撃したら、死んじゃうからダメよ」
「「えー?」」
えーじゃないからね?
「せんせーのとこいこうか」
「「うん」」
私が立ち上がったら、私を叩いてたヤツが吹っ飛んでいった。
はっ!?なんで!?
しかもギャン泣きしてるし、意味わからないのだけど。
先生は、飛んで行ったヤツを助けに行きこう言った。
「りおりちゃん、何をしているのっ!」
と。
はっ!?
何を言ってるんだ?こいつは?
『アレド、そのままレコーディングしといて』
『承知しました』
「なにも?」
「じゃあどうして、はじめくんは泣いているの?」
知らないわよ。
「しらない」
こいつがハジメって名前なことすら、今知ったわ。
「そんなわけないでしょ?先生みてたわよ?りおりちゃんがはじめくんをとばすところ」
はぁっ!?
なんだコイツ。
「なら、私が、こいつにたたかれてたところもみてたんだよね?」
「あら、はじめくんはそんなことしないわよ」
「えー?かがりみたよ?」
「ねー?きらりもみたよ?」
「「なんでウソいうのー?」」
「何よ、先生は嘘なんかついてないわよ」
ホントなんなの、コイツ。
がっつり鑑定してやるわ。
うわー、なにこいつ。
ハジメの父親の愛人なんだけど?
こいつ生活費出してもらってるわよ?
自分で稼ぎなさいよ?
あれ?向こうの我関せずみたいな顔してる先生も、ハジメの父親の愛人なんだけど?
こっちも金出してもらってるわね。
ガキの相手しないで、ガキの父親の相手してるってどうなのよ?
『アレド、鑑定結果もスクショしといて』
『承知しました』
「俺の父さんは、かんなぎコーポレーションの社長だぞ」
はっ!?おまえの名字は、タチバナだろ?
意味わからないんだけど。
神凪コーポレーションの社長は理芳よね?
『アレド、レコーディングしたデータ理芳に送りつけてくれる?スクショも。あとクソガキはタチバナハジメと追記して』
『完了しました』
早いわね。
『ありがとう』
突然教室の扉が勢いよくあいて、入ってきたのは理芳だった。
早かったね。ってか早すぎでは?
さすが転移な魔導具ね。
ちょっと訳ありで、魔宝石のカケラ持たされてたのよ。
周囲の状況みてから、飛ぶ場所指定できるように改良したからね。
「理織、大丈夫か?」
「はいです。みたです?」
「いきなりなんですかっ!あなたはなんなんですか」
先生が金切り声を上げている。
「これは失礼?神凪コーポレーション社長、神凪理芳と申します。今、不当に扱われていた神凪理織、美作輝理、美作煌理の伯父です」
「えっ!?神凪コーポレーション社長?」
「ウソ言うなっ、かんなぎコーポレーションの社長は俺の父さんだぞ!!」
「りおうおじちゃまの隠し子?」
「んなわけあるかっ!」
そりゃそうよね、紬にベタ惚れだもんね。
理芳は、ため息ひとつついてから、
「お前の父親は、俺の部下だった」
んっ?だった?過去形?
「横領の罪でクビ、逮捕されたぞ」
ハジメは、キョトンしている。
これはわかってないわね。
「おじちゃま?あれわかってないみたいよ?」
「マジか、お前の父親は、会社のお金を盗んだんだ」
「そんなわけあるかっ」
ハジメは真っ赤な顔して叫んだ。
「父さんは社長だぞっ!」
だから違うって言ってるじゃないのよ。
「お前の父親はただの平社員だ。あっ元な」
「うそだ」
「うそじゃねぇよ。あっそれからそこの逃げようとしてる先生たちも逃さねぇよ?」
理芳の護衛の人たちが、先生を拘束する。
「何するのよ、離しなさいよ」
「ちょっとやめてよ、私何もしてないでしょ?」
「そうかい?それは警察に話せよ。すでに証拠は渡してあるから、まぁがんばれ?」
あーパトカーが来たね。
ハジメの父親が横領した金がこいつらに流れてるらしいって、なんかあるかもしれないからって理芳の転移の魔宝石のカケラ渡されてたんだ。
初日から使うことになるとは思ってなかったけど。
疲れるから幼稚園行かなくても良くないかな?




