当てつけで告白されたのにこれでもかと煽り散らかす私はなんて優しいのだろう。使い捨てにされるのならこっちも同じ扱いをするまで
ナチュリは頭をくらりとさせ、目の前の男を見ていた。
ここは学園。
魔法が前につく、異世界の学園。
魔法は色々あるものの、この世には欠かせない魔力全員が持つので、魔法学園と呼ぶだけのことだと思う。
でも、そんなことは簡単に吹き飛ぶ事実を知っている。
ナチュリは人間観察をするのがくせだ。
それは、さまざまな相関図を完成させられるくらいの基礎データがある。
この目前で、ナチュリに声をかけて告白してきた男の子について。
最悪の一言に尽きる、ふてぇやろうというやつなのだ。
「前々から好きだったんだ。付き合って欲しい」
ナチュリはこの男の言葉の真ん中に入る文字を知っている。
前々から(おれの好きな子が、お前のことを好きなヤツが好き。そいつはナチュリを好きらしいから、腹いせにあいつが好きなやつを取るために、告白しただけ)好きだったんだ。
(当てつけのためだけに)付き合ってくれ。
簡潔に言えば。
前々から、おれの好きな子の片思い相手がお前を好きだったんだ。
というのが、当てはまる。
最低だ。
なにをもってしても、なにを捨てても最低しか残らない。
ナチュリは最大の侮蔑を込めた「お断りします」を繰り出す。
「なっ、なんでだ?」
「自分の胸によおおおおく、聞いてみれば?」
そうすれば、心当たりがたーんとあるだろう。
なぜ、この男の子の復讐に使われなければならないのだろう。
この人はほんの一瞬であろうとも、ナチュリが最大の部外者であり、無関係な相関図に位置していることを、ちらりとでも考えてくれたことすらあるまい。
そもそも、告白もしてないのに仕返しもあるか。
言ってないのは、存在してないのと同じだ。
先ずは、相手に言語として伝えてから再考していけ。
あと、本当に何の関係もないナチュリに謝って欲しいところだ。
この件で了承したら、踏みつけられ続けるのは自分だけだったろう。
ナチュリは人を見るので、相手がこちらを見ているとさすがにわかる。
だから、誰に見られているのかくらいは把握している。
そして!
こいつの好きな女の子が好きな相手は、ナチュリに恋をしている子じゃない。
お前だ。
と、言いたいがやられたことを考えたら悪意で溢れかえっているので、教えない。
精々、男の醜い嫉妬とやらをして嫌われろ。
盛大になっ。
案外、目が曇って女の子が向ける感情に対して、第三者目線、客観的に見られてないとみえる。
復讐を考える前に冷水で滝行してこい。
ナチュリは男の子が肩を掴もうとしたので、冷水の氷入りを頭上からドシャアと被せる。
「つめてええええ!!なに、しやがるうう!?」
「あれれ?好きとか言ってるくせに乱暴に肩を掴んでこようとしたから、正当防衛しただけだけど??」
「誰だってかけられたら怒るだろうが!」
「それなのに肩を掴まれそうになった私はそのことに怒らないと、なんで思い込んでるの?なんで?ねえねえ」
「……!!」
口を閉じて、反論の語彙力をなくす男。
「正解教えてあげようか。私が好きで告白したんじゃないもんね?だから、全く気遣いなんていらないもんね。だって使い捨てる気しかないもんねっ?」
追い込むと男子は冷水で顔を白くしたり赤くしたりしたが、青くした。
「な、なんでっ、し、し」
知っているかと聞きたいらしい。
犯人とは、みんな同じセリフを吐くようだ。
「私と違って、君はどうやら単一の範囲でしかものを見てないだけだよ。私は逆に広くて浅い部分ばっかり見てるからね」
魔法をもう一度使って、タオルを取り出して相手に投げつける。
「う!」
顔に当たり呻く恋する男に、与えるものはない。
「二度と話しかけないで。二度とね」
颯爽とキリよく帰った次の日、視線が一つ増えていて頭を抱えた。
(私を好きになってどうするの!?あの告白で、私からの脈はぷっつんされてるのなんでわかんないかなぁ?)
万が一にも好きになることはない。
もう一つ言わせてもらえれば、あいつは恋をし過ぎだ。
たった1日で。
冷めた目を浮かべて相手を見てから見るな、と目力で伝えたものの恋に燃える炎で目が曇っている。
そして、前々からよく目が合う例の男の子に共に帰って欲しいと言われて頷く。
「ほ、本当?」
ただ頷いただけなのに、とっても喜ばれてさすがにキュンとした。
「あ、あの、よろしく」
なにをよろしくするんだろう。
下校するだけなのに。
結納申し込まれたっけ?
存在しないエピソードを、うっかり作り出してしまうところだった。