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深淵のルシオール  作者: 三木 カイタ
蘇る狂気
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第2話 最初の旅 3

「アザラスからは、別の馬車を手配して、西の漁村ロブリー村に向かいます。馬車で三日程度だと思います」

 リザリエの説明に蛍太郎が頷く。

 城で見せてもらった地図を何となく思い浮かべるが、かなりおおざっぱな形と、いくつかの国しか思い浮かべられない。

 エレスの世界地図は一つの大陸だけで描かれていて、他に大陸があるのか、緯度とか経度とかも記されていなかったので、球体の惑星の上で、どの位置にある大陸なのかも分からない。

 ただ、グラーダが暑い国で、南北に行くと寒くなるとのことなので、グラーダは赤道直下の国なのかも知れない。

 惑星の温度は、様々な要因があるが、第一に太陽との距離が大きく影響しているのだから、このエレスの標準的な気温など、蛍太郎には判断できない。だが、この蛍太郎の想像は正しく、グラーダ国は赤道直下である。

 

 大陸の形は、無理をすればグリフィンの姿に見えなくも無い。

 蛍太郎が覚えている国はグラーダとその北にあるカロン。南の無国地帯。北西のペスカ、アスパニエサーと呼ばれている未開の獣人国。

 大陸の北側から大きく南にえぐれ込んでいる湾型のアール海を挟んだ東西の大国、西のグレンネックに東のアインザークぐらいのものである。

 後は、日本人としては無視できない、東の島国「アズマ」。どうしても蛍太郎には「あずま」では無いかと思ってしまうし、話を聞けば聞く程日本によく似ている。ただ、有史以来、ずっと鎖国しているので(それも日本の江戸時代を彷彿とさせた)、謎に包まれた国なのだそうだ。



 いずれにせよ、地理的にもリザリエに頼りっきりになってしまう事は確実だった。

「ああ。もっとちゃんと勉強しておけば良かった・・・」

 蛍太郎が頭を抱えると、リザリエがクスクスと笑った。

「あら、今からでも勉強は出来ますわよ。私に教えられる事でしたら」

 馬車はゆっくり王都から郊外に向けて進んでいく。

「時間ならたっぷりありますし」

 蛍太郎も高校生。勉強は本分なれど、好まないというのは日本の学生の多くがそうである。

 だが、この世界の事に興味があるのも、また、これからの事を考えると知っておかなければいけない事が多すぎると言うのも骨身にしみて分かっている。いや、この数日でようやく実感したところだ。

「お願いします」

 蛍太郎は、年はそう変わらないが聡明な美人教師に素直に頭を垂れた。



 舗装されていない地面を行く馬車は、快適とはほど遠い。

 窓にはガラスなど無く、布が掛けられている。それをまくって、今は外からの風が入ってきているが、その風も熱砂の風である。とは言え、蛍太郎にしてみれば、日本の夏とは違い、湿度が低いので、直射日光が避けられるだけでも、よほど我慢が出来る暑さではある。


 しばらく進むと、偉いもので、この環境の中でもルシオールはコクリコクリと首を揺らしながら・・・・・・いや、時にはガックンガックンと激しくヘッドバンギングさせつつも、静かに寝息を立てている。

「これでも、城下に近いからまだ道は整っている方ですよ」

 馬車の縁にしがみついている蛍太郎を見て、苦笑気味にリザリエが説明する。

 エレスの人々にとって、このくらいの揺れは気に掛けるほどでは無いらしい。アスファルト舗装された道を、サスペンションがしっかり効く道を走る、快適な車社会で育った蛍太郎は感嘆の念を禁じ得なかった。

「あ、でも、もし馬車が走ったりしたらそれは悲惨ですよ」

「ああ。そういった絶叫系は俺パスだわ・・・・・・」

 そうぼやきながら、ルシオールを抱え上げると自分の膝の上にのせて腕を回してやる。ルシオールは「ん」とため息のように言っただけで目を覚まさないが、多少は快適になったようで表情が穏やかになった・・・・・・ように見えなくも無い。

 二人のあまりにも自然な姿に、リザリエはまた複雑な心境になる。いつかそこに自分の姿も入れる事を願ってしまう。


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