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深淵のルシオール  作者: 三木 カイタ
蘇る狂気
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第2話 最初の旅 2

 次に食料と水である。今回は砂漠越えをする必要がないので少量あれば、後は道すがら手に入れられるとの事だった。乗合馬車で移動するつもりなので、基本的には村や町を通る。だから、最低限の物があれば充分だった。

 

 旅をするからには危険は付き物である為、武器の携帯は欠かす事が出来ない。

 男性は刀を腰から下げるのが当たり前である為、蛍太郎も武器屋で武器を吟味する。

 武器を選んでいる時は、蛍太郎は完全に少年になっていた。

 「これかっこいい!」を繰り返し「伝説の剣とかないかなぁ・・・・・・」などとブツブツ言いながら一時間以上店から離れず、その間にすっかり飽きてしまったルシオールは、リザリエにつれられて、近くの宿の食堂でお菓子を食べて過ごしていた。


 合流した蛍太郎は、結局刀ではなく直剣を購入しており、勝手に「魔剣ヤマザトブレード」などとセンスの欠片も感じさせない名前をつけていた。

「魔剣や聖剣、妖剣なんかは、本当にこの世界にありますよ。それも割とたくさん。運が良ければ、大きな町で売り出されている事もあります」

 リザリエの豆知識は、剣の購入後に聞いて本当に良かった。でなければ、もっと時間をかけて剣を探したに違いないと自省する蛍太郎であったが、せっかく自分で選んだ剣が、少しばかりあせて見えた事も否定できない。

 ほっとしたのと同時に落胆する心境であった。

「いや、でもこれは良い物に違いがない・・・」

 自分に言い聞かす。ルシオールは興味なさそうだし、リザリエも剣については素人であるので、善し悪しなど分からない。


 余談ではあるが、「魔法、魔法付与の武具」と、「魔法道具、魔法武具」という物は、全く違う物である。

 「魔法」と、「魔法付与の武具作成」は、同じく魔力マナを消費する。

 対して、「魔法道具」や「魔法武具」は、魔法と同等の効果を持つアイテムで、誰でも使えるが、製法がかなり希有な才能を持っていなければ作れない。

 魔剣や聖剣は、基本的には「魔法付与の武具」の事である。

 炎を発したり、凍り付かせたり、様々な能力を持っている。

 そして、「魔法武具」は、正直に言えば、効果は魔法府よの武具とは変わらない。

 しかし、その希少さから、一見無意味な効果の物であったとしても、大変な値段になる。効果が高ければ、それだけ値も上がっていく。

 白銀の騎士ジーンの持つ剣や鎧は、こうした「魔法武具」であるため、国が丸ごと買える程高価な代物である。



 蛍太郎たちは、他にもバックや地図などの必需品を揃えていったのである。

 買い物をしながら蛍太郎は、旅に出るにはそれなりの準備をしなければならない事を改めて思い知り、リザリアに心の中で感謝した。




 グラーダ王都から西の海に行くまで、まずはその方面に行く乗合馬車を手配した。乗合馬車ながら、贅沢にも貸し切りにしてもらった。

 

 ルシオールは目立つので、ギダで顔まで覆っているが、それが窮屈で嫌そうなのだ。だから、少しでもリラックスできるように、貸し切りにして、フードと布で顔を覆わなくて言い様にしてあげた訳だ。

 また、すぐに眠くなってしまうルシオールがいるので、横になって眠れるスペースも確保してあげたかった。

 当然、料金割り増しだが、リザリエの財布はかなりゆとりがある。

 道程としては、カロン国とグレンネック国を分断するオヴァロン山脈を迂回するため、グラーダ国のアザラスの街まで行く。

 そこから西の不死海に行く乗合馬車を探す必要がある。乗合馬車が無ければ、今回の様に、一台の馬車を貸し切る事になりそうだ。

 

「ふう。リザリエのおかげですんなり交渉もまとまったなぁ」

 馬車に落ち着くと蛍太郎が言った。ルシオールは蛍太郎の横で馬車の中から、キョロキョロと街を見回す。

 綿織物や綿製の服は、グラーダの輸出産業の一つである。ギダのような飾り気の無い服ではなく、実に色彩豊かな服もグラーダでは作っているのだ。

 そんな服が店先に沢山飾られている。

 ルシオールは、馬車の窓からその様子を眺めていた。

 これまでは下から見上げてばかりいたので、こうして高い位置から眺める景色が楽しいようだ。

「あれが着たいとか言うなよ、ルシィ」

 蛍太郎が言うと、ルシオールは顔をフルフルと横に振った。そして、自分のギダをじっと見る。

「あれじゃ無くてもいい。でも、これじゃない方がいい」

 ルシオールにしては珍しい不平だ。

 蛍太郎は苦笑すると、ルシオールの顔を覆っている布を頭巾ごと外してやる。服の中にしまい込んだ長い黄金の髪も服の外に出してやる。すると、無表情ながらルシオールも少し嬉しそうにした。

「馬車の中ではこうしてはずして上げられるけど、さすがに目立っちゃうからな。グレンネックに行けば、金髪の子も多いから、それまでは少し我慢だよ」

 蛍太郎がルシオールの頭をなでると「あい」と素直な返事が帰ってくる。そして、蛍太郎の腕に頭を持たせかける。この頃こうした甘えたような仕草が見られるようになってきた。

「・・・・・・っ」

それを見たリザリエは複雑な心境となる。微笑ましく思う気持ちが主であるのだが、この可愛らしい少女が自分にも甘えてきて欲しいという欲求がある。

 同時に、自分もルシオールのように甘えてみたい心境にもなる。要するに少し寂しいのだ。

「リザリエ?」

 蛍太郎に声を掛けられハッとする。物欲しそうな顔をしてなかったかと思い赤面する。

「は、はい?なんでしょうか?」

「いや、この後どのくらい掛かるのかと思って」

 そこで旅程をリザリエが説明する。


「そうですね。まず中継地点の街アラザスまでは馬車で五日程です。ですから、道中、町々に泊まります。宿はその都度探しますが、馭者の方が詳しいので、良い宿を紹介してくれる事になっています」

 リザリエは、良い環境でルシオールに過ごして貰いたく、その為には、出費を惜しまない。

 いざとなれば、少し働けば、また資金は出来る。それぐらい魔導師は儲かるのである。


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