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深淵のルシオール  作者: 三木 カイタ
第一巻 黄金の髪の魔王
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第10話 王妃 7

 主席魔導顧問官キエルアが確信したのは、ルシオールが王妃の病を一時的にではあるらしいが退けた時である。

 キエルアには野望があった。彼は祖国グレンネックでは、決して主席魔導顧問にはなり得なかった。実力的には高かったが、競争相手も多かったのだ。

 だから砂漠の小国グラーダへ来たのだ。グラーダは彼にとっては理想的な環境だった。

 魔導師が少なく、重用される事。国王に子がない事。その国王が柔弱で、臣下を強力にひきつける力に欠く事。これらは彼の野望を達成させるには理想的な条件だった。さらに王妃の病とまで、お膳立てが出来ていたのだ。


 彼の野望とは、国王を裏から操り、その実権を握る事。そして、適度に領土を拡大させる事。

 その後に国王を失脚させる事。

 最終的には、自らが国王となる事。

 他の臣下たちから信頼され、国王への不信の種も蒔いてあった。戦の準備も整い、周辺諸国、諸部族への手も回していた。あとは戦争を起こし、行動するばかりとなっていた。


 歯車が噛み合わなくなったのは、あの男がこの国に来てからだった。

 遍歴の騎士ジーン。生ける伝説、ジーン・ペンダートン。

 各国で様々な問題を解決し、「竜殺し」や「神殺し」の異名を持つ。大国であるグレンネック、アインザーク、そして、グラーダの北にあるカロンにでさえ、ジーンは影響力を持っている。

 彼の登場で、国王の権威が回復した。強力すぎる武力を国王が得たのだ。

 ジーンが相手では、武闘派の主席魔導師ですら歯がたたない事はすぐに分かった。「伝説の竜騎士」とは、こういう男であっただろうかと思い起させる程の人物だった。


 さらに「深淵の魔王」ルシオールが登場し、決定的な方針変更を余儀なくされた。

 ルシオールの力はジーンの比ではなかった。

 この世界に実在する、神々や創世竜の力を超える存在など、この世界の誰一人として想像だにしなかった事であろう。

 天にそびえる巨大な腕と、空を覆い隠すほどの巨大な目玉を見た時、彼は自分の計画が破たんした事を確信した。


 しかし、実際にルシオールに対面した事により、他の可能性を模索しだした。そこで、リザリエを遣わしたのだ。

 監視としてでもあるが、第一の目的はルシオールの懐柔であった。

 リザリエは、監視と、蛍太郎たちが不自由なく過ごせるように側仕えをするようにとだけ申し渡してあった。

 リザリエの性格を見越した上での指示だったが、これが的を射た。

 今やルシオールと過ごす時間は、あの何の取り柄も無い男、蛍太郎よりも長く密度が濃くなった。

 ルシオールを飼いならし、他国への軍事的な圧力とし、制圧していくのだ。それを実行できるのはルシオールの手綱を握れる自分だけだ。

 

 そう、もはや用無しとなったあの男、蛍太郎さえ消えてしまえば・・・・・・。

 王妃が健康を取り戻した以上、計画を早めなければならなかった。






 依頼主からの注文は、ナイフで一瞬のうちに絶命させる事だった。自分が死んだ事に気がつかないぐらい素早く息の根を止める事だ。

 理由は聞いていないが、彼にとっては最も得意とする暗殺方法だった。

 標的はただの男だった。平凡で、何ら特徴的なところなど見いだせない男で、暗殺される理由など想像できなかったが、そんな事はどうでもいい。

 ただ、標的は裕福なようで、特に仕事をするでもなく気ままな時間で動いていた。

 数日観察していたが、標的は剣の練習には毎日行っていた。剣の腕は、平凡以下の素人だった。

 その他の時間は、高官や学者の部屋で過ごす事が多く、また、迎賓館などには衛兵の目もあるので暗殺には適さない。だから、練兵場の出入り口として毎日使う、この薄暗い通路を選んだ。


 数日、練習場付近でも観察をしていたが、今日は普段よりも運動量が多かったので、標的の未熟な腕からするとかなり疲労しているだろう。

 依頼主からも暗殺実行命令が昨日出た。これは好機だった。

 標的はただ一人で暗い廊下を歩いて、目の前を通過していった。自分には全く気付いていない。標的を見ると、左の腕を押さえている。練習で負傷でもしたのだろう。

 僅かに触れただけで肉を切り裂けるナイフで、彼の首を一掻きすれば仕事は終わる。

 楽勝だ。だが、決して手は抜かない。油断もしない。

 気配を完全に消し、殺気すら漂わせずに、猫のように音を立てず標的の背後に立った。標的は、全く気付いていない。手を横から伸ばす。あと一秒もしないうちに標的の命の炎は消えるのだ。


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