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深淵のルシオール  作者: 三木 カイタ
第一巻 黄金の髪の魔王
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第9話 グラーダ国 7

 キエルアは、茶を一気に飲み干すと、蛍太郎にも薦め、蛍太郎が飲み干すと、それぞれの湯飲みに新たに茶を注いだ。

「さて、それでは好奇心からの話を聞きたいと存じますが、よろしいですかな?無論話したくない事があればお答えいただかなくとも結構です」

 キエルアは笑って見せた。

「はい。僕が答えられる事なら」


 その後、蛍太郎はキエルアに、蛍太郎のいた世界についての話をした。

 話しながらも、文明の程度の差についてはあまり深く話をしなかった。

 キエルアは戦乱のこの世界らしく、武器についての質問が多かった。

 蛍太郎はそうした質問に関しては、この世界の魔導師の様に、地球には科学者や技術者がいて、彼ら以外には仕組みはよく分からないのだと答えるに留めた。

 銃の仕組みなどを簡単にでも伝えた事がきっかけで、この世界でも銃が作られるようになれば、そうした武器で人々が殺される責任は蛍太郎が負うところになるであろう事は、高校生の蛍太郎でも想像がついた。

 そして、自分はその苦しみに耐えられないであろう事も。

 そうした事は避けるように話すため、僅かな時間だったがクタクタになってしまった。



「すみませんが、そろそろ戻らないと・・・・・・。ルシオールが心配ですから」

 そう告げると、老魔導師の元を辞する事にした。

「これは申し訳ない。珍しい世界の話に、つい長く引きとめてしまったようですな。よろしければ、また今度お話いただけますかな」

「はあ」

 蛍太郎の返答は曖昧だった。

 相手は低姿勢ではあるが、こちらの立場上、拒む事も出来ないだろう。

「いや、そう構えずともよろしいでしょう。では、お返しに私もケータロー殿にいろいろ教えて差し上げましょう。異世界から来られたのなら、知りたい事が多かろうと思いますでな。あと、魔法も見たいとお思いでしょう?」

 蛍太郎は、まだ人が魔法を使うところを見た事がなかった。

 何が出来るのか、どんな光景なのか、実に興味があった。

 映画やアニメの様にひかり輝くものなのだろうか?傷を治したり、空を飛んだり、変身したりも出来るのだろうか?

「ですが、正直な話、私どもはケータロー殿の事も、ルシオール様同様に恐れております」

 キエルアの言葉は、またしても意外だった。只の高校生である蛍太郎の、何を恐れるというのだろう。

「ケータロー殿の言語を、ルシオール様の力でエレス語に翻訳しているのですから、ケータロー殿は、ルシオール様の加護を受けておられると言う事になります。であれば、我々が何らかの魔法をかけた事がきっかけで、何が起こるのか全く想像がつきませんので。ですが、ケータロー殿に掛ける魔法以外でしたら、大丈夫かと思いましてな。ちょっとしたギャンブルですが、ま、ルシオール様にもよろしくお願いした上で・・・・・・ですな」

 

 この魔導師の言葉は、魔法の世界で過ごしてきた人たちには分からないような情報を蛍太郎に与えた。

 つまり、魔法による尋問や催眠、洗脳があるとすれば、そうした事からもルシオールの存在が蛍太郎を守っているのだ。実際に、蛍太郎がルシオールから魔法への防御を施されているかは不明だが、ルシオールの存在そのものが害意への防波堤となっていた。

 逆に言えば、キエルアがギャンブルに勝ち続けていけば、蛍太郎に対しての魔法による侵食も可能であると証明してしまう事になるだろう。もしそうなったら、何をされるかわかったものではない。蛍太郎の警戒心が瞬時に相手の思惑を図る。

「それは楽しみです。ですが、おっしゃる通り危険を伴うでしょうから、ルシオールのいるところで、リザリエさんにお見せいただく事にします」

 蛍太郎は、表面上は笑顔で告げる。しかし、キエルアは拍子抜けするぐらいあっさりと頷いた。

「それがいい。それが適任じゃろう」



 蛍太郎が露台を去り、小さな迎賓館の小部屋に入るのを眺めた後も、キエルアはその場に座り込んでいた。

 一人、壁を見つめていたが、やがて「フフフ」と小さく笑った。

「それでよし」

 口の中で呟くと、机に置いてあった、蛍太郎が書いた御札まがいの物が記されてある紙を握りつぶした。そして、その内容をよく見る事もないまま、蝋燭の火で燃やしてしまった。


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