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深淵のルシオール  作者: 三木 カイタ
蘇る狂気
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第5話 再会 6

 その扉は、明らかに異常だった。

 黒い鋼鉄製の重厚な扉には、金の装飾が施されて、他の部屋の扉より豪華である。

 しかし、その扉には、いくつもの鋼鉄製の鍵が掛けられていて、鎖による封鎖までされていた。

 ここが目的の部屋だという事は分かったが、蛍太郎は鍵など持っていない。

「・・・・・・ルシオール。いるのか?」

 蛍太郎は、口の中で呟いて、扉に歩み寄る。


 ガチャ。ガチャ。ガチャ。

 ジャラ、ジャラ、ジャラ。


 鍵が勝手に外れて落ちる。

 鎖も外れて床に落ちて、崩れて消える。

 これは地獄の第八階層で、初めてルシオールに出逢った時と同じだ。封印は封印では無い。

 蛍太郎を受け入れるように鍵が外れ、封印が解かれた。


 蛍太郎は扉を開ける。

 部屋の中は真っ暗だった。廊下からの明かりも中には届かない。

 だが、その中に、黄金の輝きを見た。

「ルシオーール!!!」

 蛍太郎は思わず叫んだ。色んな考えが吹き飛んでしまった。悩みが吹き飛んでしまった。

 蛍太郎にとっては数日ぶりだが、あの黄金の輝きが、たまらなく懐かしかった。愛おしかった。

 次の瞬間、部屋が輝きに満たされる。


 黄金の髪を持つ少女が、目を閉じて椅子に座っていた。

 そして、自らが輝きを発しながら、ゆっくりと目を開ける。

 どんな宝石よりも美しい輝く青い瞳。

 その瞳で、蛍太郎を見つめると、たちまち、その宝石が溶けてしまったように揺れる。

 ポロポロと大粒の真珠のような涙が白磁の頬を伝う。

「ケ、ケータロー・・・・・・」

「ルシオール!!!」

 蛍太郎も涙をこぼしながらルシオールに駆け寄り、きつく抱きしめた。

 こっちの世界では四十六年経っているのに、やっぱりルシオールは少しも変わっていなかった。

 蛍太郎にとっては数日前に別れた時のままである。

 違うのは服だけだが、やはり黒いドレスを着ている。

 抱きつかれたルシオールも、小さく短い腕で、精一杯蛍太郎の体を抱きしめる。


「ごめん!ごめんよ、ルシオール!!酷い事を言ってしまって、傷付けてしまって!!俺が間違っていた!」

 ルシオールの頭を抱きしめて蛍太郎が叫ぶ。

「ケータロー!ケータロー!!会いたかった!会いたかった~~~~!!」

 ルシオールも大声で泣き叫ぶ。




 二人はしばらく抱き合って、泣き合った。

 そして、互いに目が赤くなった頃、体を離す。


「ルシオール。・・・・・・本当にごめん。俺を許してくれるかい?」

 蛍太郎が言うと、ルシオールが首を傾げる。

「ケータローは私の事、嫌いじゃ無くなったのか?」

 恐る恐るといった感じで聞いてくる。

 蛍太郎は真剣な表情で頷く。

「もちろんだ。ルシオールの事は大好きだし、大切に思っている。ルシオールはいつも俺の事を助けてくれた。なのに俺は、キエルアの言葉に騙されて疑ってしまった。そして、酷い事を言ってしまった」

 蛍太郎は唇を噛みしめる。

 この少女は、恐らく四十六年間、ずっとあの言葉に傷ついてきたのだ。蛍太郎の犯した罪はとても大きい。

「本当に許される事じゃない・・・・・・」 

 うつむく蛍太郎の頬を、ルシオールが両手で挟んで上を向かせる。


「ケータローは、もう私を一人にしないでくれるか?」

 蛍太郎は苦笑する。四十六年経っても変わらない少女に永遠を誓う事なんか出来ない。

「俺が生きている限りは、ルシオールから離れない。ずっと大切にする」

 蛍太郎が言うと、ルシオールは少し考える。

「私はケータローとずっと一緒が良い。ケータローがいないと淋しい。ずっと淋しかった」

 ルシオールは悲しそうな顔をする。本当に表情が豊かになったと思う。

「もう淋しい思いはさせないよ。一緒にいても良いかい?」

 蛍太郎が手を伸ばすと、ルシオールが笑顔で蛍太郎の腕の中に飛び込んできた。

 小さい体を蛍太郎が抱き上げると、ルシオールは幸せそうに微笑んだ。 


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